A1.当社の海外ラボ(例:米国ランカスターラボ)を通じて、受託可能です。当社がお客様と海外ラボとの仲介を行う、グローバルサービスをご活用いただくことも可能です。
抽出物・浸出物(E&L)受託試験
製薬メーカー、医療機器メーカー、包装デバイスメーカーで、次のようなことをお考えではないでしょうか。
- 国内販売製品に対するE&Lの規制強化を予測して、先行してE&L試験を実施したい
- 米国や欧州での上市予定の製品に対して、各ガイドラインに準拠したE&L試験を実施したい
- 国内販売製品に対して、ISO10993に準拠したE&L試験を実施したい
ユーロフィン分析科学研究所では、GMP省令準拠で管理された分析機器を使って、E&L試験が実施可能です。
E&L試験は、米国や欧州ではすでに申請に必須です。最近では、日本でも非経口医薬品市場の急成長に伴い注目され始めています。
治療手段が変化し、プレフィルドシリンジやゴム栓付きガラスバイアルといった容器包装、液体や凍結乾燥品といった投与形態の医薬品が増加しており、抽出物(Extractables)の影響が懸念されています。
特に、バイオ医薬品では、浸出物(Leachables)が医薬品の有効性・安全性に影響を与えるリスクがあります。
そのため、今後日本国内でもE&L試験の重要性が増していくと考えられています。
抽出物・浸出物(Extractables & Leachables)試験の概要
医薬品は、製造、包装、保管、流通、投与の過程で、製造・包装設備の構成部品及び最終包装等と接触し、予期せぬ相互作用を起こす可能性が指摘されています。
その結果、有機/無機化合物が医薬品へ溶出し、医薬品の有効性・安全性に多大な影響を与えることが懸念されています。抽出物・浸出物(E&L)試験は、これらの影響を評価・管理するために実施されます。
抽出物と浸出物の違いを下図に示します。
抽出物とは、過酷な条件下(溶媒、温度、pH等)で医薬品接触材料から抽出される化合物です。分析対象は容器です。
浸出物とは、実際の工程条件下(製造、包装、保管、流通、投与まで)で医薬品接触材料から最終製剤に移行する化合物です。分析対象は製剤です。
E&L試験の一般的なワークフローは次の通りです。
まず、工程で使用される全ての構成部品をリスト化し、中間体や最終製品との接触の有無からE&L試験の必要性を評価します。構成部品との接触は、工程中のどの位置か、接触温度や時間、剤形や投与経路等からリスク評価します。
リスク評価に基づき、抽出物試験を実施します。抽出方法・条件を製品に合わせて最適化する必要があります。抽出方法(還流、撹拌、ソックスレー抽出等)、抽出溶媒、抽出時間や温度、前処理等を各種ガイドラインの情報も加味して決定します。
各抽出物は、その特性に合わせてLC/MS、GC/MS、ICP/MS等で分析します。市販のスペクトルライブラリや独自のスペクトルライブラリに基づき、抽出物を同定します。
分析評価閾値(AET:Analytical Evaluation Threshold)を設定し、それを超える抽出物は毒性評価を実施します。毒性評価は、当社(グローバルグループ海外ラボ)、国内サードパーティ、お客様の研究所等を選択することができます。
毒性評価の結果、リスクがあると判断された抽出物について浸出物試験を実施します。最終製品を使用して、対象化合物の毒物学データ、及び製品の投与計画を基に設定された閾値に基づき、最適な試験法を開発します。
開発した試験法は、ICHガイドラインに基づきバリデーションを実施します。バリデートした試験法で、浸出物の長期試験を実施し、製品への影響をモニタリングします。長期試験の実施時点は、製品の有効期間に基づいて設定します。
また、抽出物試験では検出されなかった化合物が、製品中に新たに生成していないか確認する目的で、一般的な方法でスクリーニング試験を実施することも推奨されています。
E&L試験をユーロフィン分析科学研究所に依頼するメリット
- ユーロフィンBPTネットワークとしてE&L試験に20年以上の実績
- 1900を超える化合物を同定可能な独自のスペクトルデータベース(LC/MS)を保有
- GMP 省令準拠で管理された分析機器を保有
- 国内実施、日本語でのコミュニケーションが可能
ユーロフィンBPT(BioPharma Product Testing)ネットワークは、長年E&L試験に力を入れており、多くの実績があります。
例えば、次のような製品や構成部品について、E&L試験の実績があります。
カテゴリ |
具体例 |
製品 |
細胞培養容器、電子タバコ、カテーテル、インプラント、湿布、吸入製剤 |
包装容器 |
ブリスターパック、ホイルパウチ、ラベル、キャップ、栓 |
シリンジ類 |
プランジャー、バレル、シリンジチップキャップ、ニードル |
保管容器類 |
バイオプロセスバッグ、ボトル、バイアル、パウチ、キャニスター |
製造設備 |
フィルター、インペラー、コネクター、ガスケット、チューブ、グラファイトシール |
その他 |
接着剤、樹脂、封水剤 |
ユーロフィンBPTネットワークは海外申請資料のための試験実績、及びノウハウの蓄積といった強みがあります。当社では、これらのノウハウを活用してE&L試験を組み立て、最適な試験デザインを提案します。
抽出物の同定において、GC/MSについては市販のNISTやWileyのスペクトルライブラリが利用できます。一方、LC/MSについては独自のライブラリを準備する必要があります。ライブラリに収載された化合物数によって同定の可否が決まります。
ユーロフィンBPTネットワークでは、長年の実績によって構築された1900を超える化合物を掲載したライブラリ(Eurofins Extractable Index)を使用して、抽出物の同定を実施しています。
当社は、GMP省令に準拠した組織を構築しています。その運営下で、プロトコルの作成、試験、サンプルの保管、施設・機器・システムの管理を実施しています。
例えば、GMP省令管理下にある、Agilent 8900トリプル四重極 ICP-MSを2台保有しています。
Agilent 8900トリプル四重極 ICP-MSにはMS/MSモードが搭載されており、通常使用されるシングルマスのICP-MSと比較して、包装容器から溶出するリスクの高いSiを高感度で分析できます。
© Agilent
E&L試験は、まだまだ国内では普及していません。国外に依頼すると、言語の壁やサンプル送付による時間的・金銭的コストがかかります。一方、当社は国内企業ですので、日本語で相談でき、サンプルも国内送付と面倒な手続きがなく、時間的・金銭的にメリットがあります。
E&L試験に関連するガイドライン
E&L試験に対して、米国や欧州の規制当局は次のガイドラインを出しています。しかしながら、これらのガイドラインには、具体的なE&L試験の実施方法が示されていません。
- 21 CFR Part 211.94[FDA]
- Container Closure Systems for Packaging Human Drugs and Biologics Chemistry, Manufacturing and Controls Documentation[FDA]
- Guideline on Plastic Immediate Packaging Materials[EMEA]
E&L試験では、米国PQRI(Product Quality Research Institute)の次のガイドラインが重要です。このガイドラインでは、E&L試験の実施方法、評価基準についての考え方が示されています。
- Safety Threshold and Best Practices for Extractables and Leachables in Orally Inhaled and Nasal Drug Products
このガイドラインの考え方は、米国薬局方(USP)においてもUSP1663/1664に反映されています。
PQRIガイドラインについては、「米国PQRIのE&L試験ガイドラインの概要を解説」をご覧ください。
また、最終容器包装以外に、USP665では医薬品製造に用いられるプラスチックシステム(シングルユースシステム:SUS)についても記載されています。
USP665、USP1665ガイドラインについては、「E&L試験 米国薬局方USP 665・USP 1665の概要を解説」をご覧ください。
その他、BPOG(BioPhorum Operations Group)やBPSA(Bio-Process Systems Alliance)といった業界団体からもガイドラインが出されており、評価対象によって参照するガイドラインを変更する必要があります。
BPOGガイドラインについては、「BioPhorum(BPOG)E&L試験ガイドラインのポイントを解説」をご覧ください。
このような状況の中、2019年6月にICH Q3Eとして新トピックに採択され、今後ガイドラインの統一が図られることが予想されます。詳しくは、「ICH-Q3E E&L試験ガイドラインのポイントを解説」をご覧ください。
ユーロフィン分析科学研究所では、豊富なノウハウを基に最適なガイドラインの選択、リスクに応じた評価・管理方法の計画立案、試験法設定、試験デザイン立案と、お客様の事情に合わせたトータルソリューションを提案します。
E&L試験をお考えであれば、ぜひ当社をご活用ください。ご質問やご相談は、お気軽にお問い合わせください。
よくある質問
A3.どのガイドラインに準拠して試験を実施するのか、また、製剤の剤形、試験の閾値によって、対応可能な溶媒は異なります。一度、お問い合わせください。
A4.抽出物試験の実施も必要であると考えます。
ガイドラインの一つであるUSP1663では、「ワーストケースでの容器包装からの潜在的な溶出物プロファイルを確立する必要がある」、「定性的および定量的な溶出物-抽出物の相関関係の確立する必要がある」等の記載があるためです。
A5.容器包装の素材が同一である場合、各容量でのE&L試験は不要と考えます。
各容量のうち、分析評価閾値(AET)がより小さくなる規格で評価を実施し、結果を別規格に転用することが可能と考えます。
A6.入手したデータが対象製剤に適した評価(*)であるかを確認した上で、申請に用いることが可能と考えます。
判断が難しい場合はご相談ください。秘密保持契約を締結後、入手したデータを当社で確認させていただくことも可能です。
(*)分析評価閾値(AET)以上を検出できる評価方法になっているか、抽出条件は適切か、分析手法は適切か等