生物学的同等性試験のための溶出試験の受託
ジェネリック医薬品(後発医薬品)及び先発医薬品を研究開発・製造・販売する製薬企業で、次のようなことをお考えではないでしょうか。
- 後発医薬品の生物学的同等性試験のための溶出試験を実施したい
- 含量変更、処方変更、剤形変更に伴う、生物学的同等性試験のための溶出試験を実施したい
ユーロフィン分析科学研究所では、GMP省令準拠で管理された分析機器を使用して、生物学的同等性試験のための溶出試験[BE(Bioequivalence)溶出試験]が実施可能です。
生物学的同等性試験を行う目的は、先発医薬品に対する後発医薬品の治療学的な同等性を保証することです。
生物学的同等性試験では、通常、先発医薬品と後発医薬品のバイオアベイラビリティを比較します。ただし、それが困難な場合やバイオアベイラビリティの測定が治療効果の指標とならない医薬品では、原則として、先発医薬品と後発医薬品で、効力を裏付ける薬理作用、または主要効能に対する治療効果を比較する必要があります。
医薬品のうち、経口製剤では溶出挙動が生物学的同等性に関して重要な情報を与えるため、溶出試験を実施することが求められています。
国内における生物学的同等性試験のための溶出試験のガイドライン
国内においては、様々な生物学的同等性試験のガイドラインがあります。直近では、厚生労働省より「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正について」(薬生薬審発0319第1号令和2年3月19日)が通知され、以下4つのガイドラインが改正されました。
- 後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドラインについて
- 含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドラインについて
- 経口固形製剤の処方変更の生物学的同等性試験ガイドラインについて
- 剤形が異なる製剤の追加のための生物学的同等性試験ガイドラインについて
後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドラインの概要を簡単にまとめています。
本ガイドラインは、以下3章で構成されています。
- 第1章:緒言
- 第2章:用語
- 第3章:試験
第1章では、本ガイドラインの趣旨が記載されており、本ガイドラインは後発医薬品の生物学的同等性試験の実施方法の原則を示したものとされています。
第2章では、本ガイドラインで使用される、バイオアベイラビリティ、生物学的に同等な製剤、治療学的に同等な製剤、先発医薬品、後発医薬品の用語説明が記載されています。
第3章では、以下4種類の剤形の試験の実施方法が記載されています。
- A.経口即放性製剤
- B.経口徐放性製剤
- C.経口腸溶性製剤
- D.非経口製剤
それぞれについて、標準製剤と試験製剤、生物学的同等性試験(試験法、評価法)、薬力学的試験、臨床試験、溶出試験(試験回数、試験時間、試験条件、溶出挙動の類似性の判定)、生物学的同等性試験結果の記載事項(試料、試験結果)等が記載されています。
経口製剤においては、溶出挙動が生物学的同等性に関する情報を与えるため、溶出試験が含まれています。
製剤の種別に応じて、溶出試験条件に従い、試験を実施するよう指示されています。
溶出試験条件の概要は以下の通りです。
A.経口即放性製剤
1)酸性薬物を含む製剤
装置 |
回転数(rpm) |
試験液a) |
パドル法 |
50 |
(1)pH 1.2 |
(2)pH 5.5~6.5b) |
||
(3)pH 6.8~7.5 b) |
||
(4)水 |
||
100 |
(1)、(2)、(3)のうちいずれか一つb) |
a) pH 1.2、pH 6.8 には、それぞれ、日本薬局方の溶出試験第1液、溶出試験第2液を、また、その他のpH には薄めたMcIlvaine の緩衝液を用います。
b)標準製剤が規定された試験時間以内に平均85%以上溶出する条件で,溶出の遅い試験液を選択します。いずれの試験液においても、標準製剤が規定された試験時間以内に平均85 %溶出しない場合には、最も溶出の速い試験液を選択します。
<補足説明>
・溶出試験第1液:塩化ナトリウム2.0 gを塩酸7.0 mL及び水に溶かして1000 mLとした液。この液は無色澄明で、そのpHは約 1.2です。
・溶出試験第2液:pH 6.8のリン酸塩緩衝液1容量に水1容量を加えた液。
・McIlvaineの緩衝液:クエン酸とリン酸水素二ナトリウムで構成された緩衝液。
2)中性又は塩基性薬物を含む製剤、コーティング製剤
装置 |
回転数(rpm) |
試験液a) |
パドル法 |
50 |
(1)pH 1.2 |
(2)pH 3.0~5.0 b) |
||
(3)pH 6.8 |
||
(4)水 |
||
100 |
(1)、(2)、(3)のうちいずれか一つb) |
3)難溶性薬物を含む製剤
難溶性薬物を含む製剤とは、50 rpmで試験を行うとき、界面活性剤を含まない1)又は2)に規定するどの試験液でも、標準製剤の平均溶出率が規定された試験時間までに85%に達しないものとされています。
装置 |
回転数(rpm) |
試験液a) |
パドル法 |
50 |
(1)pH 1.2 |
(2)pH 4.0 |
||
(3)pH 6.8 |
||
(4)水 |
||
(5)pH 1.2/ポリソルベート80添加c) |
||
(6)pH 4.0/ポリソルベート80添加c) |
||
(7)pH 6.8/ポリソルベート80添加c) |
||
100 |
(5)、(6)、(7)のうちのいずれか一つd)、e) |
c)ポリソルベート80 の濃度は0.01,0.1,0.5 又は1.0%(W/V)を検討します。(5)、(6)又は(7)のうち少なくとも1つ以上の試験液で、標準製剤が規定された試験時間以内に平均85%以上溶出するのに必要なポリソルベート80 の最低濃度を検討し、この濃度を(5)、(6)又は(7)の試験液に添加します。いずれの試験液においても、標準製剤が規定された試験時間以内に平均85%溶出しない場合には、最も溶出の速い条件のポリソルベート80 の濃度を選択します。
d)標準製剤が規定された試験時間以内に平均85%以上溶出する条件で、溶出の遅い試験液を選択します。いずれの試験液においても、標準製剤が規定された試験時間以内に平均85%溶出しない場合には、最も溶出の速い試験液を選択します。
e)ポリソルベートの濃度は、50 rpmと同じ。
4)溶解性改善製剤
標準製剤について1)又は2)の試験条件にて試験を行い、パドル法,50 rpmで実施した試験のうち、3条件以上で規定された試験時間以内に平均85%以上溶出する場合は、1)又は2)の試験条件にて試験を実施します。
それ以外の場合には、以下の条件にて試験を実施するよう規定されています。
装置 |
回転数(rpm) |
試験液a) |
パドル法 |
50 |
(1)pH 1.2 |
(2)pH 4.0 |
||
(3)pH 6.8 |
||
(4)水 |
||
(5)pH 1.2/ポリソルベート80添加c) |
||
(6)pH 4.0/ポリソルベート80添加c) |
||
(7)pH 6.8/ポリソルベート80添加c) |
||
100 |
(4)を除くいずれか一つf) |
f)(4)を除く試験液のうち標準製剤が規定された試験時間以内に平均85%以上溶出する条件で、溶出の遅い試験液を選択します。いずれの試験液においても、標準製剤が規定された試験時間以内に平均85%溶出しない場合には,最も溶出の速い試験液を選択します。なお、ポリソルベート80 を添加した試験液にあっては、100 rpmにおいても50 rpmと同じ濃度とします。
B.経口徐放性製剤
装置としては、パドル法に加えて、回転バスケット法又は崩壊試験装置法のいずれか一つを選択し、選択した理由を明記する必要があります。
装置 |
回転数(rpm) |
試験液 |
パドル法 |
50 |
(1)pH 1.2 |
(2)pH 3.0~5.0g) |
||
(3)pH 6.8~7.5 g) |
||
(4)水 |
||
(3)pH 6.8~7.5/ポリソルベート80を1.0%(W/V)添加 |
||
100 |
(3)pH 6.8~7.5 |
|
200 |
(3)pH 6.8~7.5 |
|
回転バスケット法 |
100 |
(3)pH 6.8~7.5 |
200 |
(3)pH 6.8~7.5 |
|
崩壊試験 |
30 ストローク/分 |
(3)pH 6.8~7.5/ディスク無し |
30 ストローク/分 |
(3)pH 6.8~7.5/ディスク有り |
g)24 時間で標準製剤の平均溶出率が80%以上溶出する条件で、溶出の遅い試験液を選択します。いずれの試験液においても、標準製剤が24 時間までに平均80%溶出しない場合には,最も溶出の速い試験液を選択します。
C)経口腸溶性製剤
装置 |
回転数(rpm) |
試験液a) |
パドル法 |
50 |
(1)pH 1.2 |
(2)pH 6.0 |
||
(3)pH 6.8 |
||
100 |
(2)pH 6.0 |
以上の溶出試験条件で試験実施後、試験製剤の平均溶出率を、標準製剤の平均溶出率と比較し、溶出挙動の類似性を判定します。
溶出挙動の類似性の判定には、本ガイドラインの付録「図2:溶出挙動の類似性の判定」及び「図3:経口徐放性製剤の溶出挙動の同等性の判定」のフローチャートがわかりやすいです。
以上が後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドラインの概要です。
その他のガイドラインでは、以下のことが記載されています。
含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドラインでは、既承認の経口固形製剤と有効成分、効能・効果、用法・用量及び剤形は同一で、有効成分の含量が異なる製剤の生物学的同等性試験の実施方法の原則が示されています。
経口固形製剤の処方変更の生物学的同等性試験ガイドラインでは、経口固形製剤について有効成分以外の成分及び分量を承認後に一部変更(処方変更)する場合の生物学的同等性試験の実施方法の原則が示されています。
剤形が異なる製剤の追加のための生物学的同等性試験ガイドラインでは、既承認の製剤と有効成分及び効能・効果は同一で用法・用量が既承認の範囲内にある剤形が異なる製剤を追加(剤形追加)する場合の生物学的同等性試験の実施方法の原則が示されています。
より詳しくは、PMDA「生物学的同等性(BE)ガイドライン等」をご確認ください。
生物学的同等性試験のための溶出試験の当社のアプローチ
当社の生物学的同等性試験のための溶出試験の一般的なワークフローは次の通りです。
まず、お客様より提供される分析法のバリデーションを ICH-Q2ガイドラインに基づいて、実施します。
その後、各種ガイドラインに準拠し、標準製剤及び試験液の選定を実施します。
選定した標準製剤及び試験液をもとに、試験製剤の溶出試験を実施します。
実施完了後、主に以下の結果を提供します。
- 標準製剤を選択するための試験の結果
- 表:各試験条件における個々の製剤の溶出率、各ロットの平均値と標準偏差
- 図:各試験条件における各ロットの平均溶出曲線を比較した図
- 試験液を選択するための試験の結果
- 標準製剤と試験製剤の比較結果
- 表:各試験条件における個々の製剤の溶出率、試験製剤及び標準製剤の平均値と標準偏差
- 図:各試験条件における試験製剤と標準製剤の平均溶出曲線を比較した図
すでに分析法バリデーション、及び標準製剤と試験液の選定が完了しているお客様の場合は、本試験だけを当社に委託することも可能です。
生物学的同等性試験のための溶出試験をE-ASLに依頼するメリット
- GMP省令準拠で管理された、複数のメーカーの溶出試験器を保有
- Empower自動計算を利用して、溶出試験結果と溶出プロファイルをスムーズに提出可能
当社(E-ASL)は、GMP省令に準拠した組織を構築しています。その運営下で、プロトコルの作成、試験、サンプルの保管、施設・機器・システムの管理を実施しています。
その管理下にある、以下の溶出試験器が利用可能です。
複数のメーカーの溶出試験器を保有しているため、お客様が開発時に利用していた溶出試験器と同じメーカーを使用して、本試験を実施することもできます。
また、各種溶出試験器はメカニカルキャリブレーション(機械的校正)を定期的に実施し、品質保証に努めています。
当社では、クロマトグラフィーデータ管理システム「Empower 3」(Waters社製)を導入しています。本ソフトウェアの自動計算機能を利用することで、溶出試験結果と溶出プロファイルをスムーズに提出可能です。
ユーロフィン分析科学研究所では、GMP省令準拠で管理された分析機器を使用して、生物学的同等性試験のための溶出試験が実施可能です。
生物学的同等性試験のための溶出試験をお考えであれば、ぜひ当社をご活用ください。ご質問やご相談は、お気軽にお問い合わせください。