うつ病治療における抗うつ薬選択のためのABCB1ジェノタイピング検査とは
ユーロフィンバイオファーマサービスの「ニュースレター(2021年6月号)」が発行されました。
ユーロフィングループは、食品・環境・医薬品に関わる分析及び検査サービスをグローバルに展開しています。世界50カ国に800以上のグループラボがあり、200,000通りにも及ぶ分析項目・手法を取り扱っています。
医薬品分析は、ユーロフィンバイオファーマサービスが担当しています。日本国内においては、当社「ユーロフィン分析科学研究所(E-ASL)」が受託を行っています。
バイオファーマサービスでは、お客様に最新情報をお届けするため、年3回ニュースレターを発行しています。
2021年6月号では、以下6つの技術情報を紹介しています。
一部のサービスは、当社ラボが海外ラボとの仲介となり受託しています。
- バイオ医薬品の特性評価で注目の新技術ddPCRの2つのメリット
- 化粧品中に存在するクマリン:安全性(毒性)に関する論争の解決
- 製剤のバイオアベイラビリティを向上させるナノミリング技術と特性評価
- 神経変性疾患試験に必須なバイオマーカーアッセイに超高感度な試験法を活用
- バイオ医薬品の試験法開発におけるAQbD:ICH-Q14に向けた取り組み
- うつ病治療における抗うつ薬選択のためのABCB1ジェノタイピング検査とは
本技術コラムでは、「6.うつ病治療における抗うつ薬選択のためのABCB1ジェノタイピング検査とは」を紹介します。
うつ病への挑戦
うつ病は、WHOによると世界中で2億6,400万人以上の人々が罹患している、一般的で深刻な病気です。
患者さんにとっての最適な治療が見つかるまで数ヵ月を要することもあり、この長い期間にしばしば副作用が発現します。大うつ病症例の15~30%の患者さんは治療抵抗性うつ病に苦しんでおり、現在、治療に失敗したこれらの患者さんを助けるために利用できるツールはほとんどないため、この挑戦はより困難な問題であるといえます。
Eurofins BiomnisのABCB1ジェノタイピング(遺伝子型判定)検査の原理
治療に対する一様ではないこれらの反応の理由を特定するために多くの研究が行なわれ、その中に血液脳関門に位置する膜貫通タンパク質であるP糖タンパク質(P-gp)をコードしているABCB1遺伝子があります。
研究により、ABCB1遺伝子の2つの主要な変異がP-gpの機能に影響を与えるため、P-gpを基質とする抗うつ薬の治療効果を予測できることが示されました。抗うつ薬の約70%を認識するこのタンパク質は、変異に応じて抗うつ薬の脳への移行を制限したり促したりします。
それゆえ、Eurofins Biomnisが提供するこのジェノタイピング検査は、患者さんが変異1又は2であるかの識別を可能にし、患者がP-gpを基質とする抗うつ薬に対しどのように反応するか医師が予測するのを助けます。
医師と患者さんにおけるABCB1ジェノタイピング検査の利点
ABCB1ジェノタイピングは、2016年からSwiss Society of Anxiety Disorders and Depression(SGAD/SSAD[スイス不安障害及びうつ病学会])によって推奨されています。
この検査は、ミュンヘンのMax Planck Institute of Psychiatry(マックス・プランク精神医学研究所)の研究者によって開発され、2018年からEurofins Biomnisが独占的に提供しています。
Eurofins Biomnisは、うつ病患者の変異を特定することにより、担当医師が患者の反応プロファイルを把握し、それに応じて治療を調整することを可能にします。これにより以下のことが可能になります:
- 適正な用量で適切な薬剤の処方を可能にする個別化された最適な治療
- 治療に反応しない患者さんのための代替的アプローチ
- 効果的な治療を迅速に見つけることができる可能性が高くなる
- より高い寛解率
- 検査する分子数が限定される
- より少ない副作用
Eurofins Biomnisでは、科学者が全国の精神科クリニックや医療現場と積極的に連携して、可能な限り迅速に患者さんに効果的な治療を見つけるための探求を支援しています。
この検査を受けた患者の寛解率は、受けなかった患者と比べて21%高くなっています。そのため、Eurofins BiomnisのABCB1ジェノタイピング検査は、治療に失敗している抗うつ薬を服用しているうつ病患者及びこのタイプの患者を診療する精神科医にとって必須なツールといえます。
P-gp基質及び非P-gp基質を用いる治療を含め、この検査の詳細については、以下のパンフレットをご覧ください。
原文(英語)は、Eurofins Biomnis is helping psychiatrists to optimise the choice of antidepressants in the treatment of depressionをご覧ください。
ニュースレター(2021年6月号)のその他の記事は、下記よりご覧ください。
- バイオ医薬品の特性評価で注目の新技術ddPCRの2つのメリット
- 化粧品中に存在するクマリン:安全性(毒性)に関する論争の解決
- 製剤のバイオアベイラビリティを向上させるナノミリング技術と特性評価
- 神経変性疾患試験に必須なバイオマーカーアッセイに超高感度な試験法を活用
- バイオ医薬品の試験法開発におけるAQbD:ICH-Q14に向けた取り組み