ニトロソアミン類リスクコミュニケーションガイダンスの概要を解説
2024年6月18日、厚生労働省より「医薬品に含まれるニトロソアミン類の体系的リスク評価手法に基づくリスクコミュニケーションガイダンスについて」(医薬薬審発0618第1号、医薬安発0618第1号、医薬監麻発0618第1号)の通知がなされました。
「ニトロソアミン類の体系的リスク評価手法に基づくリスクコミュニケーションガイダンスの策定のための研究」において、医薬品へのニトロソアミン類の混入に対し、Carcinogenic Potency Categorization Approach(CPCA)に基づく発がん性リスク評価などの毒性学的観点から情報提供すべき項目の検討が行われ、本通知によって、情報提供すべき項目の類型化と関係機関との連携方法等について整理したガイダンスが示されました。
CPCAとは、2023年7月7日に、欧州医薬品庁(EMA)が医薬品から検出されたニトロソアミン類の発がん性リスクについて新しい評価方法です。この評価方法は、α炭素上の水素のヒドロキシ化が発がん性に関与する点に着目したアプローチで、α炭素上の水素原子の数や配置、また分子内の構造的特徴をスコア化し、5つのカテゴリーに分類され、許容摂取量が機械的に算出されます。(詳しくは「EMAニトロソアミン類 発がん性リスク新評価法(CPCA)を解説」を参照)
国内においては、『「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について」に関する質疑応答集(Q&A)について』が一部改正され、十分ながん原性試験データのないニトロソアミン類については、EMAより示されたCPCAを利用して限度値を設定することは差し支えない旨が追加されていました。
本ガイダンスは、製造販売業者から医療現場等へのコミュニケーションに関わるガイダンスを示すことにより、医療現場等へ迅速かつ適切な情報提供を行うことができる体制を製造販売業者が確保し、それによって保健衛生の向上を図ることを目的とされています。
本技術コラムでは、医薬品製造販売業者のため、ニトロアミン類リスクコミュニケーションガイダンスの概要をまとめています。
医薬品に含まれるニトロソアミン類の体系的リスク評価手法に基づくリスクコミュニケーションガイダンスの概要
本ガイダンスは、以下3章で構成されています。
- 基本的事項
- ニトロソアミン類の混入発生時の関係機関への報告・連携
- 医療機関等へ情報提供すべき項目
第1章では、本ガイダンスの目的、適用範囲等、制定の背景、位置付けが記載されています。
適用範囲は、全ての医薬品の製造販売業者が対象で、「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について」において自主点検の対象とされる医薬品が対象となっています。
第2章では、限度値を超えるニトロソアミン類の混入が判明した場合の関係機関への報告と連携先が記載されています。
本ガイダンスでは、以下4機関への報告・連携についてまとめてられています。
第3章では、医療機関等への情報提供すべき項目が記載例とともにまとめられています。
情報提供すべき項目は、大きく分けると、以下4つです。
1.情報提供の背景
ニトロソアミン類の一般的事項の説明に加え、不純物混入による健康リスクに関する説明が求められています。
(記載例)
2.検出されたニトロソアミン類の名称
和名と英名の記載が求められています。
(記載例)
3.想定される健康への影響
検出されたニトロソアミン類の変異原性・発がん性の有無(不明を含む)、検出されたニトロソアミン類の1 日許容摂取量、検出されたニトロソアミン類の測定結果が1 日許容摂取量を超えていたかどうかの3点の記載が求められています。
(記載例)
4.当該製剤に対する措置
製品の出荷の継続の可否(回収の有無)とその理由、過去に服用した患者のリスク、現在服用している患者の処方の中断・継続に関する推奨事項、今後の供給の見通しの記載が求められています。
(記載例)
本ガイダンス内では、上記以外の記載例もありますので、併せてご確認ください。
その他詳しい情報は、「医薬品に含まれるニトロソアミン類の体系的リスク評価手法に基づくリスクコミュニケーションガイダンスについて」をご覧ください。
本技術コラムは、2024年6月18日時点の情報に基づいて、記載しています。
まとめ
医薬品に含まれるニトロソアミン類の体系的リスク評価手法に基づくリスクコミュニケーションガイダンスの概要をまとめました。
本ガイダンスの対象となる医薬品の製造販売業者の方の参考になれば、幸いです。
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