バイオ医薬品の特性評価で注目の新技術ddPCRの2つのメリット
ユーロフィンバイオファーマサービスの「ニュースレター(2021年6月号)」が発行されました。
ユーロフィングループは、食品・環境・医薬品に関わる分析及び検査サービスをグローバルに展開しています。世界50カ国に800以上のグループラボがあり、200,000通りにも及ぶ分析項目・手法を取り扱っています。
医薬品分析は、ユーロフィンバイオファーマサービスが担当しています。日本国内においては、当社「ユーロフィン分析科学研究所(E-ASL)」が受託を行っています。
バイオファーマサービスでは、お客様に最新情報をお届けするため、年3回ニュースレターを発行しています。
2021年6月号では、以下6つの技術情報を紹介しています。
一部のサービスは、当社ラボが海外ラボとの仲介となり受託しています。
- バイオ医薬品の特性評価で注目の新技術ddPCRの2つのメリット
- 化粧品中に存在するクマリン:安全性(毒性)に関する論争の解決
- 製剤のバイオアベイラビリティを向上させるナノミリング技術と特性評価
- 神経変性疾患試験に必須なバイオマーカーアッセイに超高感度な試験法を活用
- バイオ医薬品の試験法開発におけるAQbD:ICH-Q14に向けた取り組み
- うつ病治療における抗うつ薬選択のためのABCB1ジェノタイピング検査とは
本技術コラムでは、「1.バイオ医薬品の特性評価で注目の新技術ddPCRの2つのメリット」を紹介します。
近年、製剤開発パイプラインにおいて、核酸を取り入れたバイオ医薬品の数が着実に増えつつあります。これらの一部は、例えばスパイクタンパク質をコードしているmRNAを運ぶCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)ワクチンや、まれな遺伝性疾患のアンメットニーズに対する遺伝子治療など、目に見える形で市場に出回っています。
これらの製品の純度、有効性及び安全性の特性評価は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)と呼ばれる技術に大きく依存しています。
核酸の検出と定量のための比較的新しい技術として、デジタルドロップレットポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)があります。
この技術では、試験サンプルを含有しているPCR混合物を多数の水-油エマルジョン液滴に区分化し、各液滴の標的DNA配列のPCR増幅を行います。PCR増幅後、各液滴を評価し、サンプルの陽性液滴の割合を決定します。これらのデータは、統計学のポアソン分布を用いて分析し、元のサンプル中に含まれる標的とする鋳型DNA濃度を決定します。
ほとんどの分子生物学ラボで標準的な方法であるリアルタイム定量PCR(qPCR)と比較して、ddPCRは、特にGMP準拠の品質試験おいて、以下2点のメリットがあります。
- 検量線を必要とすることなく、サンプルの定量が可能
- PCR阻害物質に対する感受性がqPCRより低い
まず一つ目のメリットは、検量線を必要とすることなくサンプルの定量が可能なことです。
qPCR法では、通常、標準物質から標準曲線を作成し、サンプル結果を補完するために使用されます。そのため、この標準物質の質と濃度の割り当ては、報告されるサンプル結果の正確性、さらには妥当性にも大きな影響を与えます。
しかしddPCRは、各サンプルから多数のデータポイントを生み出すことを可能にする何万もの液滴を生じさせることにより、統計学に基づいてDNAの絶対濃度を決定します。これは、ウイルスベクターゲノムのコピー数の決定など、標準物質がない場合に、特に有益です。
ddPCRの二つ目のメリットは、一般的にサンプル中に存在する可能性のあるPCR阻害物質に対する感受性がqPCRより低いとみなされていることです。
この特徴は、感度が重要となる残留試験で特に大切です。ddPCRは阻害物質に対して耐性が高く、抽出することなくサンプル試験が可能であるため、試験に割り当てる原薬及び/又は製品の必要量を大幅に減らすことができます。
ウイルスベクター製品の試験の場合、このことにより、従来の生物学的製剤と比べ極めて小さいバッチサイズで製造されることが多い製品の保存性の向上がもたらされます。
上記のメリットにより、ddPCRは品質試験ラボにおいて急速に普及しています。
米国のユーロフィンBPT(ランカスター)では、分子生物学ラボにBioRad QX-200 ddPCRを導入し、検証を行ないました。
チームは、試験法開発、技術移転、及びバリデーションのプロジェクトを成功させており、それらのほとんどは遺伝子治療用製品をサポートするものです。
個々のクライアントために試験法をカスタマイズすることに加えて、ウイルスゲノムや感染価の測定など試験をサポートするために、ウイルスベクターバックボーン内のコンセンサス配列を標的とした汎用的なddPCR法の開発も行なっています。
当社の試験法のバリデーションと製品固有の必要条件を併せることで、多くのサンプルタイプのGMP試験を迅速に実施できます。
原文(英語)は、ddPCR in GMP product testing quantifies without calibration curve & determines absolute DNA concentrationをご覧ください。
ニュースレター(2021年6月号)のその他の記事は、下記よりご覧ください。
- 化粧品中に存在するクマリン:安全性(毒性)に関する論争の解決
- 製剤のバイオアベイラビリティを向上させるナノミリング技術と特性評価
- 神経変性疾患試験に必須なバイオマーカーアッセイに超高感度な試験法を活用
- バイオ医薬品の試験法開発におけるAQbD:ICH-Q14に向けた取り組み
- うつ病治療における抗うつ薬選択のためのABCB1ジェノタイピング検査とは