ICH-Q3E E&L試験ガイドラインのポイントを解説
医薬品は、製造、包装、保管、流通、投与の過程で、製造・包装設備の構成部品及び最終包装等と接触し、予期せぬ相互作用を起こす可能性が指摘されています。
その結果、有機/無機化合物が医薬品へ溶出し、医薬品の有効性・安全性に多大な影響を与えることが懸念されています。抽出物・浸出物(E&L)試験は、これらの影響を評価・管理するために実施されます。
E&L試験は、米国や欧州ではすでに医薬品承認申請に必須です。最近では、日本でも非経口医薬品市場の急成長に伴い注目され始めています。
個別の動きとして、米国や欧州の規制当局から、E&L試験に関連するガイドラインが出ています。一方、国際的な動きとして、E&L試験は、ICHにおいてガイドラインの統一に向けた活動が始まっています。
ICHでは、以下5ステップでガイドラインの作成が行われています。
- ステップ1:技術文書に関するコンセンサス構築
- ステップ2:a)技術文書に関するICH運営委員会のコンセンサス、b)規制当局によるガイドライン案の採択
- ステップ3:ICH調和ガイドライン案に対する協議と議論
- ステップ4:ICH調和ガイドラインの採用
- ステップ5:ICH調和ガイドラインの各国への実装
詳しくは、Formal ICH Procedureをご参照ください。
2023年7月17日時点、ICH-Q3Eのステータスはステップ1となっており、以下3文書が開示されています。(リンク先は原文です)
本技術コラムでは、今後ICH調和ガイドラインに準拠して、E&L試験を実施する可能性がある製薬メーカー、医療機器メーカー、包装デバイスメーカーの方のため、ICH-Q3Eガイドラインのポイントを解説します。
ステップ1 開示文書のポイント解説
1.Q3E Concept Paper
本文書では、抽出物・浸出物(Extractables & Leachables)ガイドラインのコンセプトについて、以下の点がまとめられています。
- 提案された調和活動のタイプ
- 認識された問題のステートメント
- 解決すべき課題
- 提案の背景
- 専門家ワーキンググループの種類とリソース
- タイミング
ICHは、不純物の多くの側面をカバーするガイドラインを作成してきました。
例えば、医薬品の原薬や製剤の不純物に関するガイドライン(Q3A、Q3B)、医薬品の残留溶媒ガイドライン(Q3C)、医薬品の元素不純物ガイドライン(Q3D)、医薬品中DNA反応性(変異原性)不純物の評価及び管理ガイドライン(M7)などです。
しかし、E&Lは、一般的なICH不純物ガイドラインの範囲から除外されていました。
現在、E&Lの評価と管理に関する国際的に調和したガイダンスは存在しません。
E&Lに関する明確性の欠如により、業界と規制当局に不確実性をもたらし、医薬品承認申請に遅延を引き起こし、さまざまな解釈にもつながる可能性が懸念されています。最終的には、患者への医薬品の提供の遅れにもつながりかねません。
これらに対処し、申請者と規制当局の双方を支援するため、医薬品の要件の透明性を向上させたE&L不純物に関するガイドラインを作成されることとなりました。
解決すべき課題として、以下の点が認識されており、ガイドラインにはこれらのことが盛り込まれると思われます。
- 整合性のあるE&Lガイダンスフレームワークの欠如
- ガイダンスの調整の欠如
- 閾値
- 安全性評価
- 制御オプション
- 既存のICHガイドラインとの整合性
- 薬局方基準
詳細は、原文(英語)をご覧ください。
原文を理解するのに役に立つように、日本語訳資料を作成しました。参考としてご利用ください。
2.Q3E Business Plan
本文書では、E&Lガイドラインの事業計画について、以下の点がまとめられています。
- 課題とコスト
- 計画
- プロジェクトが与える影響
- 事後評価
詳細は、原文(英語)をご覧ください。
原文を理解するのに役に立つように、日本語訳資料を作成しました。参考としてご利用ください。
3.Q3E Work Plan
本文書では、E&Lガイドラインの作業計画について、以下の点がまとめられています。
- 主要なマイルストーン
- 特定のタスクのタイムライン
主要なスケジュールは、以下の通りです。
- ステップ1および2a/b サインオフ及び承認:~2024年10月
- ステップ3および4 最終ガイドラインのサインオフと採択:~2026年10月
詳細は、原文(英語)をご覧ください。
原文を理解するのに役に立つように、日本語訳資料を作成しました。参考としてご利用ください。
まとめ
ICH-Q3E E&L試験ガイドラインのステップ1の概要についてまとめました。
ステップ4の最終ガイドラインの採択は、2026年10月とまだ先ですが、今後、E&L試験を実施する可能性がある方は、動向を注目しておいても良いでしょう。
ステップが進み次第、本技術コラムにて、解説をアップデートしていく予定です。
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