透過型電子顕微鏡(TEM)
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)
薄く加工した試料に電子線を照射し、透過あるいは回折した電子線を結像することで、試料の微細構造を観察することができることから、各種工業材料、半導体の構造、機能、不良・欠陥などの評価・解析に有効です。高倍率観察では、結晶中の原子の並び(格子縞)を見ることができます(格子像)。また、多結晶の観察や結晶の欠陥等の観察も可能です。さらに、電子線回折図形から、物質の同定や結晶状態の解析を行うことができます。
- 非常に微細な構造を観察できます。
- 元素分析を行うことが可能です。
- 元素マッピングを得ることができます。
FEI製 TECNAI F20
透過型電子顕微鏡の動作原理
原理
薄く加工した試料に電子線を照射し、透過あるいは回折した電子線を結像することで、試料の微細構造を観察することができます。
高倍率観察では、結晶中の原子の並び(格子縞)を見ることができます(格子像)。また、多結晶の観察や結晶の欠陥等の観察も可能です。さらに、電子線回折図形から、物質の同定や結晶状態の解析を行うことができます。
物質は、電子が照射されると、元素特有のX線(特性X線)を放出します。このX線のエネルギーを解析することにより、元素を同定することができます(エネルギー分散X線分光分析:EDX分析)。
電子線を細く絞って走査することにより、元素毎の分布を見ることもできます(面分析)。
また、電子線を一点に数十秒照射し、放出されたX線の強度を解析することにより、元素量の比(組成)がわかります(定量分析)。
TEM装置仕様
型格 |
項目 |
SPEC |
---|---|---|
Tecnai F20 |
観察倍率 |
5,000倍~500,000倍 |
サンプルサイズ |
φ3 mm (ただし観察範囲は最低倍率で□10 μm、厚さは0.5 μm以下) |
事例 | 透過型電子顕微鏡(TEM)
カーボンナノチューブのTEM観察
カーボンナノチューブ(CNT)は、配線材料・半導体材料等さまざまな分野への応用が期待されています。TEM観察により、カーボンナノチューブの層構造等を調査することができます。
写真は、マルチウォールナノチューブ(MWNT)です。
磁気ヘッドの元素分析
エネルギー分散X線分光による各種元素の面分析結果
TMR膜(磁気抵抗効果を示すトンネル接合膜)近傍層構成が、下から NiFe/Ta/NiCr/PtMn/CoFe/Ru/CoFe/MgO/CoFe/Ru/Ta/Ru/Ta/NiFe であることが確認できます。
ヘッド素子断面のTEM像(赤枠部分がTMR膜近傍層)
銅ビア断面TEM観察
LSIの0.5μm径銅ビアの断面TEM
厚さ10nm(ナノメートル)のCVD-TiN(化学気相成長させた窒化チタン)バリヤ膜が
ビアの側壁と底面に均一に形成されていることが確認できます。
Ta2O5を用いたMOS構造断面
[110]入射なので、Si(シリコン)基板部に見える格子縞は{111}面で、格子間隔は0.31nm。
これにより、SiO2(酸化シリコン)層、Ta2O5(酸化タンタル)層の厚さを正確に測定することができます。
磁気抵抗メモリ(MRAM)解析事例 TEM断面分析
磁気抵抗メモリ(MRAM)などの金属薄膜デバイス各層の材料・膜厚などの層構造の調査について、豊富な経験・ノウハウを有しています。
MRAMのTEM分析
MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory:磁気抵抗メモリ)は不揮発性で動作が高速であることから、次世代メモリとして研究開発が進められており、製品も出荷されています。
MRAMにおいて情報を記録する部分は、数nm厚の薄い磁性薄膜の積層構造をしています。この積層構造の解析には、TEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)-EDX (Energy Dispersive X-ray spectroscopy) 分析を用います。
当社では、高分解能TEM観察とEDX分析を組み合わせて金属薄膜デバイスの各層の材料や層厚等の層構造を調査することについて、豊富な経験・ノウハウを有しています。
高分解能TEM観察
TEMでは、原子の並びの縞模様(格子縞)が見える倍率で、対象を観察できます。これにより、各層の厚さ等を解析します。
EDX分析
観察対象に照射した電子により発生する特性X線のエネルギーにより、元素を特定します。下図は、赤線で囲った範囲における元素の分布を調査したものです。 また、特定の位置(スポット)における組成を調査することもできます。