塗装・接着剥がれの原因分析
塗装・接着剥がれの原因分析
多層膜や塗装の剥がれや密着不良、接合部でのクラック発生などの「剥離」問題の解決に、材料分析技術が役立ちます。
剥がれた状態の把握や原因究明に、材料分析技術が役立ちます!
塗装や表面処理で素材の保護・装飾をした製品、性質の異なる薄膜を重ねた多層膜材料、接着剤やはんだ等で接合した製品では、膜や塗装の剥がれ、密着不良、接合部でのクラック発生などの「剥離」が問題になることがあります。対策を立てるためにも、原因を究明することは非常に重要です。
当社では豊富な経験を元に早急な原因究明を図ると伴に、問題解決に向けたご提案を行っていきます。
こんなお悩みありませんか?
- 塗装剥がれや接着不良・ボンディング不良の原因を調査したい。
- 多層膜が剥がれてしまったので、どの界面で剥離しているか調べたい。
- はんだ接合部で導通不良が発生したので、接合部を分析したい。
- 剥がれがあるかないか、物理的に損傷を与えずに接合状態を調査したい。
- 塗膜が剥離する懸念がないか、密着強度を調べたい。
分析事例
塗装・接着剥がれに関する問題の例と、その分析結果例をご紹介します。
接着剤が付かない。原因は?
使用されていたフッ素系有機物を含む洗浄剤の残渣が接着不良を起こした!
部品の端子に接着剤が付かない問題が発生した。
不着の原因を調べるため、接着剤が付く端子と付かない端子の表面を、XPS※で分析した。
接着剤が付かない金端子の表面から、多量のフッ素が検出された。 また、炭素とフッ素の状態分析の結果、フッ素系有機物であることがわかった。
使用されていたフッ素系有機物を含む洗浄剤の残渣が接着不良を起こしたことが判明。
部品の塗装が剥がれた。原因は?
保管用トレー表面のシリコーンが部品表面に付着したために塗装剥離を起こした
プラスチック部品の塗装膜が剥がれた。
剥離面をXPSで分析し、離型性のあるシリコーンが介在していることが分かり、次に、シリコーン汚染の源を調査するため、工程で使用されている部材についてさらにXPS※で分析した。
部品成形用の離型剤の分析の結果、天然油脂レシチンであり、シリコーンではなかった。結果より、部品自体の離型剤が原因ではないと考えられる。
塗装前の部品保管用トレーの分析の結果、トレー材質はポリスチレンであるが、表面からはC,O,Siが検出された。また、シリコン元素の状態分析の結果、部品表面にあったものと同一と考えられる。
保管用トレー表面のシリコーンが部品表面に付着したために塗装剥離を起こしたことが判明。
※XPS分析はEurofinsグループ会社にて行います。
印字したインクが剥がれた。原因は?
主剤と硬化剤の配合量が不適当であったためにインクが剥離した
部品の印字インクが剥離する問題が発生した。
剥離の原因を調べるため、剥がれないロットのインクと剥がれるロットのインクを、FT-IRで分析した。
インク主剤はウレタン樹脂であり、剥がれないロットには C-N結合があるが剥がれるロットにはないことが分かった。C-N結合はイソシアネート系硬化剤によると推測され、
主剤と硬化剤の配合量が不適当であったためにインクが剥離したことが判明。
多層膜が剥がれた。原因は?
チタン膜が酸化したために密着不良になった
シリコン基板に二酸化シリコン/チタン/窒化チタン/アルミの多層膜を形成した膜がその後の工程中に剥がれる問題が発生した。
剥がれた原因を調べるため、剥がれないロットと剥がれるロットを、アルミ膜表面からAESで深さ方向に分析した。
剥がれるロットでは、窒化チタン―二酸化シリコン間のチタン膜中の酸素が多い。 チタン膜成膜雰囲気中に酸素が多く存在したと推測され、
チタン膜が酸化したために密着不良になったことが判明。
塗装工程を改善した。密着強度は向上した?
工程改善により塗膜密着強度が上がっていることが確認された
板金の塗膜剥がれが発生した。
塗装工程の改善を行ったが、効果がどの程度あったのかを検証できず、改善の妥当性を判断できなかった。 そこで、引張試験によって密着強度がどの程度改善されたかを測定する。
直径10mmのロッドで試験を行った結果、従来品は100N程度で塗膜がベースから剥がれたのに対し、改善品は300Nの荷重でも剥がれなかった。
以上より、工程改善により塗膜密着強度が上がっていることが確認された。
※ ロッドは接着剤と相性が良いプラスチック製の物を使用しています。
剥離箇所の調査・特定
断線した導線の破面解析
非破壊での剥離箇所調査・特定には3D-X線解析装置や超音波探傷装置などをご利用いただけます。
その他に、破壊調査となりますが、断面研磨やFIB加工を用いて剥離箇所を直接観察することも可能です。
白色塗膜が剥離した亜鉛めっき鋼板の断面観察