IHC、ISH、FISH、CISH|これって何?バイオコラム 第4回
こんにちは、もも太です。世界の科学領域では英語が共用語で、長い表現になるとやたら略語を使います。
第4回目は、よく使われている略語『IHC、ISH、FISH、CISH』、それって何?です。
タイトルの略語達は、当社の病理事業領域で良く使われる染色方法の面々です。これらの染色は、プレパラート上に張り付けた3~4μm程度の薄いホルマリン固定パラフィン包埋切片(これも長いので略してFFPE といいます。FFPEは、Formalin fixed paraffin embedded tissueの略です。ちなみに食品用ラップフィルムの厚さが約11μmだということですので、その3分の1程度の薄さということになります。)や、凍結した組織片標本や、直接塗布固定した細胞の標本などが使用されます。まず、組織や細胞の中の、検出したいタンパク質や核酸(DNA)をプローブと呼ばれる補足子を使って捕えます。そして、あらかじめプローブに結合した色素や酵素を利用して発色させ、最終的に顕微鏡で観察できるようにする技術です。はてさて、これらどのような染色法なのでしょう?
- IHC : immunohistochemistryの略
- 免疫組織化学という意味で、プローブに抗体を使用します。検出したい特定のタンパク質を特異的に補足できれば、組織中であるいはもっと細かく細胞の中の局在が見ることができます。
- ISH : in-situ Hybridizationの略
- in-situは、その場所でという意味で、まさにその場で特定の核酸に相補的に反応するプローブを反応(ハイブリダイゼーション)させ、その分布状態を調べることができます。
- FISH : fluorescence in situ Hybridizationの略
- fluorescenceは蛍光で、プラスISHです。 プローブに、蛍光色素を標識したオリゴヌクレオチド(比較的短い塩基対からなる)プローブを用い、目的の核酸遺伝子とハイブリダイゼーションさせて蛍光顕微鏡で検出することができます。
- CISH : Chromogenic in situ Hybridizationの略
- 上記蛍光標識の代わりに酵素を用いて、プラスISHです。酵素反応によってクロモゲン色素(ジアミノベンチジン: DABが一般的)で染色させる方法でFISHのように蛍光顕微鏡が必要なく、光学顕微鏡下で観察できます。
略号は、議論する時など時間短縮には便利なのですが、お互いの認識がずれることが良くあるので注意が必要です。私も以前のボスには、「全単語をまず言って、『以後○○と略語を使用します』と入れなさい」と学会発表の際には必ず注意喚起されました。もし私が専門外の方に対して、「こんなプローブで捕まえたFISHなんだけど。。。」なんて言おうものなら、「どんな魚なの?」なんて思われてしまうかもしれません!
冗談はさておき、当社ではIHC、ISH、FISH、CISHの各染色に対して、豊富な経験と先端技術による受託解析サービスを行っております。近年、特定のがんでは個別化医療が進み、開発した分子標的薬の効果が見込める症例を絞り込むためにこれらの分子診断技術が用いられるようになってきました。これらの染色技術は、がんの組織病理標本を用いてバイオマーカー診断を可能にする有効な手段です。すでに、がん細胞が過剰発現するHER2と呼ばれるタンパク質を染色するIHCやFISHは、乳がんおよび胃がんの分子標的薬であるトラスツズマブ(製品名はハーセプチン)治療のコンパニオン診断に用いられています。ん?「コンパニオン診断」って何?次回もう少し掘り下げてご紹介することといたしましょう。
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