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デジタルPCRの技術紹介と受託解析サービス|これって何?バイオコラム 第15回

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こんにちは。もも太です。
がんの組織を用いた診断と同様の診断を、低侵襲の血液で代用する「リキッドバイオプシー」の有用性は、このコラムでもたびたび紹介してきました。その中で、第12回目で紹介したセルフリーDNA(cfDNA)測定は、血中濃度があまりにも微量であるがゆえに、従来の分析技術では精度にむらが生じ、測定結果を信頼性の高い診断に対する担保とすることができませんでした。しかし、現在では非常に高感度で特異性が高い分析テクノロジーの進歩によって、これを臨床検査に用いる可能性が模索されています。当社では、2種類の異なるデジタルPCRテクノロジー(Digital PCR Technology)に基づく測定装置を導入し各種受託解析サービスに活用していますが、次なるステップ、臨床診断への応用を検討しています。今回は高感度かつ高信頼性から見た、この技術の変遷とデジタルPCR測定によるメリットをまとめました。

 

PCR(polymerase chain reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)はKary Banks Mullis博士によって発見された、特定のDNA断片を選択的に増幅するという画期的なコア技術です。原理については、ここで触れると長文になってしまいますので書籍やネット検索などで理解を深めていただきたいのですが、この大発見は、彼女とのドライブ中のふとした閃きが引き金だったというエピソード付きです。以来、この技術は、急速に分子生物学研究や遺伝子解析に利用されましたが、増幅終了時のPCR産物の量は測定できるものの、核酸がどれだけ増幅したかを定量できないため、臨床への利用は容易ではなく、さらに技術の改良が必要とされました。

そこで、増幅率に基づき鋳型となるDNAの定量を行う技術として、PCRによる増幅を経時的に測定する、リアルタイムPCRあるいは定量PCR(以下qPCRといいます)と呼ばれる手法が登場しました。目的とする遺伝子がどれだけ発現しているかを相対的に調べるアガロースゲル電気泳動法に始まり、今や蛍光プローブを利用して、PCR が進むごとに幾何級数的に増加する蛍光を測定する方法などへの技術進展がなされ、DNA量をより簡便に正確に計測することが可能となりました。ところが、希少な対立遺伝子検出などにおいては、その測定感度がまだ充分でなく、研究用途のみで臨床では利用されていません。

そこで登場したのが、デジタルPCRです。デジタル計測がDNAの高感度検出に利用される新しいアプローチであり、従来のqPCR に代わって、高い精度による絶対定量を行うことができます。特徴的な工程として、DNAサンプルを微細な仕切りの中に分配しPCR反応を行います。この仕切りの仕様にはメーカーごとに異なる特別な工夫があり、ナノテクノロジーを駆使したマイクロ流路のチップや、油滴を利用したドロップレット技術などが用いられています。ちなみに、ドロプレット技術では、PCR反応させる仕切りとして20,000 個もの分画が可能です。各仕切りは1分子単位の分画が可能であり、PCR反応後、各分画ごとに、目的の分子を含むか(シグナルが陽性:デジタル的に【1】)、含まないか(シグナルが陰性:デジタル的に【0】) をシグナルの有無で計測し、それぞれの分画のシグナル数を、ターゲットのコピー数として換算し、絶対定量します。

このシンプルかつ高感度で、また信頼性も高い デジタルPCR テクノロジーは、がんのバイオマーカーとなるcfDNA中の希少な特定遺伝子における変異測定を可能にする技術です。また、CNV(Copy Number Variation、コピー数多型)の検出、病原体の検出、次世代シーケンシングにおけるライブラリの絶対定量、低含量の mRNA や miRNA における定量解析など医学薬学分野の研究ばかりでなく、土中や水中の広範囲の微生物環境モニタリングや遺伝子組み換え生物の評価という環境分野での利用など、様々な研究分野の幅を広げています。我々にとって、微量で貴重ながんサンプルを無駄にしないという意味からも、臨床診断への応用に向けて有益である重要な技術と考えており、今後、より低侵襲な検査による個別化医療の実現を目指す上で、大いに活用していくことになるでしょう。

 

サービスの詳細はこちらからご確認ください。

 

 

なお、本件に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームよりお願いいたします。