ベテラン臨床検査技師の『病理医ドラマ・フラジャイル』考 その⑥|これって何?バイオコラム 番外編
こんにちは、臨床検査技師のまこりんです。
『フラジャイル』第7話もとても面白かったですね。やはり人間模様が見所ですね!
今回の主人公は、病理医同様、臨床医ではない「放射線科医」でしたが、劇中では1日に処理する画像枚数は10万枚!ということでしたが、莫大すぎて想像つきませんね。私が昔勤めていた総合病院でも、放射線科医が私より先に帰宅する姿を見たことがありませんでした。
技術の進化とともに、それまで見えなかったものが見えてくるようになりました。このことで患者の命を救うことができ、かつ侵襲性が少ない患者に負担をかけない検査で正確な診断が可能となれば、これにこしたことはありません。
画像診断については、エーザイ株式会社ホームページに分かりやすい記事が掲載されていましたのでご覧ください。
大変な業務量をこなしている放射線科医ですが、劇中でも表現されていた針生検も専門分野です。厳密に言うと、実施したのは穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)といって病変部の細胞を吸引する方法でした。エコー映像を見て、高柴医師が即座に判断したのでしょうね(初めから疑っていた?)。同様の技術は検査のみならず治療にも役立てられています。IVR(インターベンショナル・ラジオロジー)といって、画像診断の技術を応用した低侵襲な治療方法です。(日本医学放射線学会ホームページ http://www.radiology.jp/edu/roadmap_02.html )
さて、今回の診断は「アメーバ赤痢」でした。その詳細については日本性感染症学会ホームページ (http://jssti.umin.jp/pdf/guideline-2011.pdf )107ページ「赤痢アメーバ症」に記載があります。森井技師は穿刺吸引で取得した検体から細胞診に通常用いられるパパ二コロウ染色標本の作製(多分作製していると思います)と併せてPAS染色標本の作製をしていました。このことでアメーバを確認することができたわけです。つまり、岸医師はすでにアメーバ赤痢に目をつけていた!?まさにスーパードクターKですね。(笑)
それにしても、今回は誤診を誘発するために「がん」であることを前提に置いたり、アメーバ赤痢につなげるためにアフリカ勤務の設定だったり、ドラマを作るのって大変なんですね。
※ 当コラムは、あくまでも個人的見解による内容となっております。予めご了承ください。
なお、本件に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームよりお願いいたします。