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ベテラン臨床検査技師の『病理医ドラマ・フラジャイル』考 その⑦|これって何?バイオコラム 番外編

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こんにちは、臨床検査技師のまこりんです。今週の『フラジャイル』(http://www.fujitv.co.jp/FG/index.html )では「病理の学校」が描かれていましたね。

日本病理学会北海道支部では毎年「病理夏の学校」を開催しています。病理医不足が叫ばれる中、一人でも多くの医師を志す方に病理に関心を持ってもらいたいです。

さて、今回の本題は「検体取違い」でした。いわゆる過誤ですね。私も視聴していて、大変ハラハラしました。毎日200件以上の組織診検体、500件以上の細胞診検体を取扱う当社にとっては、この手の過誤は対岸の火事ではありません。

「人間だから100%はあり得ない、ミスがあって当たり前」

確かにその通りでしょう。しかし、だから仕方ないと認めるのではなく、その「ミスがあって当たり前」だということを前提にして、いかにしてミスを防止できるかを考慮した仕組みを作り、フローを確立してかなければなりません。なぜなら、「病理の診断ひとつで人の人生が変わる」からです。

年間17万件ほどの大量検体を取扱う当社では、このような過誤を未然に防ぐため様々な取り組みを実施しています。過誤が発生しやすいポイントに力点を置き、システム導入を含めて改善に勤しんでいます。

今回描写されていた、検体容器からカセットに移し替える作業も過誤発生ポイントの1つです。当社では、まず診断依頼書と検体を照合し、間違いなく整合が取れていることを確認します。次に、依頼書のバーコードを読み込み、機械によって依頼書番号とバーコードをカセットに印字し、かつカセットに移した検体の個数や形状などの情報を診断依頼書に記入することでトレースできるようにしています。今後は画像で記録する仕組みを検討しており、さらなる改善を予定しています。

上記以外の工程でも、薄切(未染色標本作製:パラフィンブロックを3μm(1μメートルは0.001ミリメートル)厚にスライスし切片をスライドガラスへ貼付する)作業時には、パラフィンブロックのカセットに印字されているバーコードを読み込み、その場で専用印字機によってスライドガラスに依頼書番号や患者情報が印字される仕組みを構築しています。このことによって、今まさに薄切した検体を、目の前に排出された印字済みのスライドガラスに貼付することができ、間違ったスライドガラスに貼付されるような状況を物理的に排除しています。

この他、病理診断前チェックでは、ブロックと染色された標本を突合し、形状を確認することで取違いを防止、診断時には標本に印字されたバーコードを読み込ませることでシステム上の患者情報を呼び出し、間違いなくその標本本人の検体であることが確認できている状況で診断しています。

これら過誤防止活動には、ゴールはありません。
また人間はミスすることは当たり前だからと云って、それに甘えてはなりません。

「病理は直接患者とは接しないが、病理診断依頼書の先に患者が1人1人いることを肝に銘じて仕事にかからなければならない。」

標本作製も100%、診断も100% を目指して頑張ります。

 

※ 当コラムは、あくまでも個人的見解による内容となっております。予めご了承ください。

 

 

なお、本件に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームよりお願いいたします。