第3世代のPCR~デジタルPCR~ddPCRはここがすごい|これって何?バイオコラム 第44回
PCR増幅をリアルタイムで測定できるリアルタイムPCRの登場は、PCRを用いた核酸定量の認識を大きく変化させました。技術の進歩とともにデジタルPCRが登場し、以前、当コラムの第15回 デジタルPCRでデジタルPCRについてご紹介いたしました。当社でもデジタルPCRを用いたリアルタイムPCR受託サービスを提供しており多くのご注文をいただいておりますが、その中でも今回は液滴を使ったドロップレットデジタルPCR(Droplet Digital PCR:ddPCR)に焦点を当ててその特長をご紹介したいと思います。
<ddPCRとは>
ddPCRは、低発現遺伝子の発現定量、微小なコピー数定量や変異解析など極めてわずかな差異を検出でき超高感度に絶対定量解析が可能な定量PCRです。ddPCRを用いた文献は2021年6月23日現在、5,900に及びます。
Bio-Rad社ウェブサイト:https://www.bio-rad.com/ddPCR/publications
ddPCRはどのような原理なのでしょうか。簡単にご紹介いたします。
1.サンプル調製
DNAサンプル、プライマー・プローブ専用試薬を混合します。
2.ドロップレットの作成
カートリッジに調製したサンプルと専用オイルを分注すると、1サンプルあたり20,000個のドロップレットが生成されます。ターゲットDNA(■)とバックグラウンドDNA(■)がランダムに各ドロップレット内に分散する状態となります。
3.PCR反応
2で作成したドロップレットのPCR増幅を行います。それぞれのドロップレットで独立してPCR増幅が行われます。
4.ドロップレットの蛍光測定
各ウェル内のドロップレットの蛍光を測定し、positiveまたはnegativeなドロップレットの数をカウントします。PCR増幅のかかったポジティブドロップレットを直接カウントすることによって、正確な絶対定量が可能となります。専用ソフトウェアを使用し各サンプルの濃度(copy/uL)を算出します。
以上から、ddPCRのメリットをまとめてみると、
① 検量線を用いず絶対定量が可能
→サンプル中のターゲットDNAコピー数を、検量線を用いずに絶対定量で検出
② 超高感度・高精度検出が可能
→ポジティブな微小区画数を直接カウントするため定量精度が高い
③ PCRの増幅効率に左右されない
→エンドポイント測定のためPCR阻害等による影響を受けづらい
④ 検出することが難しい遺伝子の微量な変化などのモニタリングが可能
→1.1倍の希釈系列を絶対定量可能であるため、わずかなコピー数の違いも識別
⑤ 2種類の色素を同時に検出可能
→野生型と変異型など2種を同時に定量することで変異比率などを算出できる
<どのような試験に向いているのか>
このように、わずかな遺伝子の変化を高感度に検出できることから、次のような試験に適しています。
- 環境DNA等の微量な発現解析
→高感度、高精度に発現解析 - 変異やSNP、ゲノム編集箇所の検出
→微量な変化を高感度に検出 - コピー数多型解析
→検量線を使わずにコピー数のわずかな変化を検出
特に、微量な核酸の絶対定量が可能であるというメリットを生かし、細胞・遺伝子治療に使用する製品の品質確認にも多く利用されています。例えば、ウイルス力価やベクターのコピー数の定量、残留DNA測定なども可能としています。
また、病理検査技術も併用することで様々な解析に応用が可能です。
- FFPE(ホルマリン固定パラフィンブロック)を使用した各種遺伝子解析column210615_06.jpg
- cfDNA(cell-free DNA)の解析
- 遺伝子発現解析やFISHとの相関
- 術前術後の腫瘍モニタリング
- シングルセル解析
- 遺伝子ドーピングのモニタリング 等
いかがだったでしょうか。
機器導入前の調査として、NGSのライブラリの定量として、cfDNA中のDNA変異測定として、コピー数の少ないウイルスの核酸モニタリングとして、など、様々な応用が可能となります。当社でも受託サービスとして実施しておりますので、是非お問い合わせください。
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