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日本の水道水の安全性は?国内のPFAS汚染状況と暫定基準値を確認しよう

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投稿日:2024年6月5日(2025年4月3日更新)

飲料水

PFAS(有機フッ素化合物)は、人間の健康に影響を与えることから社会的な関心が高まっています。

国内では水道水にPFASが含まれる事例も複数発生しているため、PFAS関連の情報や国内規制について正しい知識を持つ必要があります。

この記事では、日本の水道水におけるPFASの汚染状況や規制の動向について解説します。

日本の水道水の安全性が気になる方は、ぜひ参考にしてください。

 

INDEX

 

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは?

三角フラスコと試薬

PFAS(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)とは、炭素とフッ素の原子を含む有機フッ素化合物の総称です。

PFASは約1万種類以上あると言われており、その化学的特性から日常生活で使用する様々な製品に活用されてきました。

しかし、一部のPFASは環境や生物に影響を及ぼす可能性が懸念され、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)で廃絶・制限の対象に追加されたことで国内でも規制対象となっています。

現在、国内の化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で規制されているPFASは以下の3種類で、いずれも製造・使用・輸出入が原則禁止されています。

 

  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

 

ただし、PFHxSについては2022年に第一種特定化学物質に指定、2024年から正式に規制開始と発効から日が浅く、日本におけるPFAS規制はPFOSとPFOAが中心になっているのが現状です。

PFASについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

 

 【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

pfas

 

PFASの特性

PFASの代表的な特性は以下の3つです。

 

  • 難分解性
  • 高蓄積性
  • 長距離移動性

 

PFASは自然界ではほとんど分解されないため、長期間環境中に残存することが問題視されています。

空気・水・土壌などを通じて長距離を移動し、自然環境や生態系にも半永久的に影響を与えています。

また、動植物にも蓄積されやすく、自然排出されるまでに多くの時間が必要になることも懸念されています。

 

 【関連記事】一度体内に取り込まれたPFASはどうなる?健康への影響と排出プロセス

PFAS

 

PFASが含まれているもの

PFASには、耐熱性・化学的安定性・撥水性・撥油性などの特徴があり、これまでに多くの産業で活用されています。

特に汚れの付着を防ぐ撥水加工や撥油加工は、生活と密接に関わる分野で数多く使用されてきました。

また、半導体用反射防止剤や泡消火薬剤、界面活性剤などにも使用され、産業・工業分野でも高い汎用性を発揮しています。

 

PFASが含まれている製品事例
防水加工の服や靴、レインコート、カーペット、スマートフォン、消火剤、殺虫剤、防水スプレー、ファンデーション、口紅、界面活性剤、コンタクトレンズ、クッキングシート、食品包装紙、フライパン・鍋、自動車部品、清掃用具、潤滑油、アイロン、マイクロチップ、太陽光パネルなど

 

PFASが健康に及ぼす影響

一部のPFASは、人体に対してコレステロール値の上昇、発がん、免疫系等との関連が報告されています。

アメリカの学術機関「全米アカデミーズ」は、2022年に政府からの要請で約5,000本以上の論文を分析した結果をガイダンスにまとめて公表しました。ガイダンスの内容によると、PFASが健康に及ぼす影響について以下のように報告しています。

 

全米アカデミーズの分析結果(2022年)
カテゴリ 健康上の影響
十分な証拠がある ● 抗体反応の低下(成人と小児)
● 脂質異常症(成人と小児)
● 乳児と胎児の成長の低下
● 腎臓がんのリスク増加(成人)
限定的または示唆的な証拠がある ● 乳がんのリスクの増加(成人)
● 肝酵素の変化(成人と小児)
● 妊娠誘発性高血圧(妊娠高血圧及び子癇前症)のリスク増加
● 精巣がんのリスク増加(成人)
● 甲状腺疾患と機能障害のリスク増加(成人)
● 潰瘍性大腸炎のリスク増加(成人)

引用:Guidance on PFAS Exposure, Testing, and Clinical Follow-Up

 

一方日本では、内閣府が管轄する食品安全委員会が2024年6月に「有機フッ素化合物(PFAS)」評価書を公表しました。

この資料では、化審法の規制対象になっているPFOS・PFOA・PFHxSを中心に、関連する国内外の学術文献を2,969本収集し、関連省庁(環境省・厚生労働省・農林水産省)が実施した調査も含めた評価が行われました。

調査結果の一部を抜粋したデータが下記になります。

 

 

食品安全委員会の評価結果(2024年)
カテゴリ 健康上の影響
肝臓 (血清ALT値や血清総コレステロール値の上昇について)影響を及ぼす可能性は否定できないものの、証拠は不十分
脂質代謝
甲状腺機能
甲状腺ホルモン
影響があるとまでは言えない
生殖・発生 ●(疫学研究)出生時体重低下との関連は否定できないものの、知見が限られている。出生後の成長に及ぼす影響については不明
●(動物試験)出生児への影響について、複数の報告が同様の結果を示し、証拠の確かさは強い
※疫学研究の結果と動物試験の結果は、分けて考えるのが適当
免疫 (ワクチン接種後の抗体応答の低下について)可能性は否定できないものの、これまで報告された知見の証拠の質や十分さに課題がある
神経 評価を行うには知見が不十分
遺伝毒性 PFOS・PFOA・PFHxSは、直接的な遺伝毒性を有しない
発がん ●(PFOAと腎臓・精巣・乳がんとの関連性)報告結果に一貫性がなく、証拠は限定的
●(PFOSと肝臓・乳がんとの関連性)及び(PFHxSと腎臓・乳がんとの関連性)証拠は不十分

参照:「有機フッ素化合物(PFAS)」評価書に関するQ&A(2024年6月25日)|食品安全委員会

 

最新のPFASの評価結果については、人体や動物への影響は否定できないものの、「結果に一貫性がない」「知見や証拠不十分」などの理由で、耐容一日摂取量といった指標値の算出は難しいのが現状です。

食品安全委員会は「新たな科学的知見が集積できれば、健康への影響を再評価する可能性はある」との見解を示しているため、今後発信される情報を注視しておきましょう。

 

 

水道水のPFAS汚染と国内の対策

PFAS 水

国内の水道水は、研究機関が定期的に全国的な調査を実施し、状況把握と対策を行っています。

水道水に含まれるPFASに関しては、厚生労働省がPFOS・PFOAの合算で50 ng/L以下とする暫定目標値を設定し、厳しく管理しています。

 

日本の水道水のPFAS汚染の状況

2024年5月に環境省と国土交通省が共同で行った調査「水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査」の結果が、2024年11月29日に公表されました。

これは都道府県や水道事業者、水道用水供給事業者、専用水道の設置者らを対象に調査協力を要請し、その回答結果をまとめたものです。

資料内で公表されたのは、市町村などの水道事業と水道用水供給事業における結果で、専用水道に関しては現在集計が行われている最中です。結果の概要は以下の通りです。

 

項目 内容
十分な証拠がある 調査対象期間 2020~2024年度(9月30日時点まで)の約4年
対象期間内に水質検査を実施したことがある事業者数  2,227事業者
暫定目標値を超過した事業者数 2020年度:11事業者
2021年度:5事業者
2022年度:4事業者
2023年度:3事業者
2024年度(9月30日時点):0事業者

いずれかの年度で暫定目標値を超過した全14事業においては、最新の検査結果では全て暫定目標値を下回っている
日本の給水人口(水道で給水を受けている人口)に対し、暫定目標値以下の水質の水道水が確認されている給水人口の割合 98.2%

残りの1.8%には、今回の調査で「検査未実施・未回答の水道事業」「専用水道による給水人口」が含まれている

参照:2024年11月29日発表 水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査の結果について (水道事業及び水道用水供給事業分)|環境省

 

PFAS検出状況マップ

 

最新の調査結果をまとめた令和6年度の内容を確認すると、PFOS・PFOAの合算値が25 ng/L以上〜50 ng/L以下の事業者は複数確認されたものの、暫定目標値の50 ng/Lを超過した事業者は報告されていません。

なお、過去の調査で暫定目標値を超過した事業者に対しては、水源からの取水を停止する措置や、給水所の設置を行った上で適切に水源の切替えを行うなどの措置が取られています。

ただし、最新の調査結果では検査未実施・未回答の水道事業者が含まれているため、今後も検査実施の呼びかけを行う方針を発表しています。

 

日本の水道水にPFASが含まれる原因は?

水道水にPFASが含まれるのは、水道水の素である水源(原水)のPFAS汚染が主な原因と推測されています。

国土交通省が2024年11月29日に公表した「水道業者等によるこれまでのPFOS及びPFOA対応事例について」でも、実際の汚染事例で水源の汚染が多数報告されていました。

水道水の水源には、河川水やダム湖水、湖沼水、地下水などがあります。

半永久的な汚染が続く原因は、PFASの特性である難分解性・高蓄積性・長距離移動性と、自然環境における水循環の仕組みが大きく関連しています。

 

 

PFASが水道水に含まれるまでの主なルートは?

 

 

例えば工場の排水にPFASが含まれていた場合、排水先の河川に流れ出た水が土壌で分解されずに蓄積され、地下水に染み出るケースも考えられます。

また、地球規模で考えると、自然界にある水は環境中を常に循環しており、同じ場所に留まることはありません。

地表面にある水は太陽エネルギーによって大気中に蒸発し、やがて上空で雲となり、雨や雪となって再び大気を通って地表面に降り注ぎます。

そのため、大気中に含まれるPFASや排ガスも水循環に影響を及ぼす可能性があり、水道水がPFAS汚染の影響を受けるルートは多岐に渡ると言えるでしょう。

 

 

日本の水道水に対するPFAS規制の内容は?

水を飲む母娘

厚生労働省は2020年に、水道水においてPFOSとPFOAを水質管理目標設定項目に設定しました。

ここで設定されたPFOS・PFOAの合算で50 ng/Lという暫定目標値は、当時の科学的知見に基づき、「体重50 kgの人が水を一生涯にわたって毎日2 L以上飲用しても健康に悪影響が生じないと考えられる水準」とされたものです。

 

なお、PFHxSについては、2021年に要検討項目に設定されています。これはPFOSとPFOAの設定項目よりもさらに下の位置付けで、「毒性評価が定まらない」「浄水中の存在量が不明」などの理由により、情報収集や検討が行われている項目です。

PFASは化審法や水質汚濁防止法などで法的に規制されているものの、水道水における水質管理目標設定項目には、その法的拘束力がありません。

そのため、仮に暫定目標値を超過した場合は、水道事業者らに水源切替などの濃度低減化措置をとるように要請を行う対策にとどまっているのが現状です。

 

ただし、今後水道水に対して厳しい規制が敷かれることで、努力目標からより強制力の高い措置が行われる可能性もあるため、今後の動向に注視しましょう。

 

PFAS規制の今後の方向性

日本の水道水におけるPFAS規制の方針については、2024年8月に行われた「第5回PFASに対する総合戦略検討専門家会議」の配布資料において、「食品安全委員会の健康影響評価結果や諸外国の最新の国際動向を踏まえ、水道水の暫定目標値の取扱いの検討を進める」との内容が記載されています。

また、2024年10月に公開されたNHKの報道によると、環境省が水道水に含まれるPFASについて、今後法律で検査や改善を義務づける基準への引き上げ検討を本格化していることが明らかになっています。

 

一方で海外では、2024年に米国のEPA(米国環境保護庁)がPFOSとPFOAの目標値を4 ng/L以下とする厳しい飲料水基準を定めており、その他の国や機関も同様に規制を強化しています。

2025年1月時点での各国の飲料水基準値は以下の通りです。

 

国・機関名 飲料水に係るPFASの基準・目標値
日本 PFOSとPFOAの合算値:50 ng/L(暫定)
WHO(世界保健機関) PFOS:100 ng/L PFOA:100 ng/L
PFOSとPFOAを含む約30種類のPFASの合算値:500 ng/L
※いずれも暫定ガイドライン値案
米国 PFOS:4 ng/L PFOA:4 ng/L PFHxS:10 ng/L
※その他のPFASについても個別・混合物の基準設定がある
イギリス PFOS:100 ng/L PFOA:100ng/L
EU(欧州連合) 総PFAS:500 ng/L
PFOS・PFOA・PFHxSを含む20種類のPFAS:100 ng/L
カナダ PFOS:600 ng/L PFOA:200 ng/L
EPA Method 533/537.1 で測定可能な物質を対象とした総PFAS:30 ng/L 
※総PFASは2023年に提案された目標値
ドイツ PFOS:100 ng/L(暫定) PFOA:100 ng/L(暫定) PFHxS:100 ng/L
※その他のPFASについても個別設定がある
オーストラリア PFOSとPFHxSの合算値:70 ng/L 
PFOA:560 ng/L
デンマーク PFOS・PFOA・PFHxSを含む4種類のPFASの合算値:2 ng/L
PFOS・PFOA・PFHxSを含む12種類のPFASの合算値:100 ng/L

 

国によっては、PFOS・PFOA以外のPFASに対しても目標値が設定されており、複数のPFASを一つのグループとして管理する方法も検討されています。

海外諸国と日本の飲料水規制を比較すると、現状PFOSとPFOA合算の暫定目標値のみが設定されている日本の規制対応は遅れているとする見解もあります。

 

しかし、日本でもPFASに対する調査や議論は現在も行われているため、国内外の状況を受けて、今後規制が強化される可能性は十分にあるでしょう。

 

飲料⽔におけるPFAS規制の最新情報について、分かりやすくまとめた資料を配信しております。
(飲料⽔中のPFAS規制を進めている国や、各国の最新基準値、現在までのPFAS規制の動向など)

ぜひこちらからダウンロード下さい。

 

 

 

日本の水道水の安全基準を確認しよう

日本の水道水におけるPFASは水質管理目標設定項目として管理されており、各国の規制内容や研究機関の発表、世界の動向によって、規制内容が変更される可能性があります。

国が行っているPFASの対策について知りたい場合は、環境省をはじめとした各省庁のホームページから詳しく確認できます。

また、水道水に関するPFASの情報は、各都道府県や水道局が検査結果も含めて発信している場合があります。水道水に含まれるPFASの情報について詳しく知りたい方は、居住地域の自治体や水道局のホームページを確認してみてください。

継続的にPFAS関連のニュースを注視して、水道水の安全基準を確認しましょう。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 藤田 潤さん

ユーロフィン日本環境株式会社

ラボラトリー事業部 POPsグループ

PFAS・PCBチーム 藤田 潤

<経歴>

2021年 神奈川大学 理学部 卒業

クルマエビの卵巣成熟度を評価する新たな指標遺伝子の探索について研究を行う。
卒業後、株式会社アルプスビジネスサービスに入社し、絶縁油に含まれるPCB分析を携わる。
2022年よりユーロフィン日本環境株式会社でPCB分析を行い、2023年よりPFAS分析に従事。

<発表>

2023年9月 第30回日環協・環境セミナー全国大会「水中の揮発性PFAS分析法の検討」
資料はこちらからダウンロードいただけます。

 

 

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