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IARC(国際がん研究機関)はどんな組織?役割やPFASの評価方法

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投稿日:2024年12月26日

実験風景

IARC(国際がん研究機関)は、がんに関する様々な活動を行っています。特にIARCによる発がん性物質の分類は世界的に注目を集めており、がんのリスク管理には無くてはならないものとなっています。本記事では、IARC設立の歴史や役割、IARCの分類におけるPFAS評価の現状について解説します。

 

INDEX

 

 

IARC(国際がん研究機関)とは

がん細胞

IARCは、化学物質などのがん発生リスクを科学的に評価する国際機関です。IARCは評価プロセスを通じて、発がん原因の特定に取り組んでいます。さらに、発がん性物質によるがんの発症メカニズムの解明、および発がん状況の監視なども実施しています。これらの活動を通じて、IARCはがんのリスクに関する重要な科学的知見の蓄積に貢献しています。

IARCは発がんを抑制するための科学的戦略の確立にも取り組み、世界中の人々の発がんリスクの低減に向けて活動しています。

近年、IARCによるPFAS(有機フッ素化合物)などの化学物質の評価が注目を集めており、その評価結果は世界的な規制動向に大きな影響を与えています。

 

IARCの概要・歴史

IARCは1965年に設立されたWHO(世界保健機関)のがんを専門とした研究機関であり、本部はフランスのリヨンに置かれています。

がんの研究と予防に焦点を当てた活動を行い、世界的に注目されています。がん研究を通じて様々な国際貢献を果たしており、日本も参加国としてIARCの活動を支援しています。

 

IARCの主な活動

IARCはがんの予防と制御に向けて幅広い活動を展開しています。主な活動内容には、以下のようなものがあります。 

 

がん研究の推進
がんの原因や予防法に関する最新の科学的知見を得るための国際的な研究プロジェクトを実施

がん統計の収集と分析
世界のがん発生率や死亡率に関するデータを収集・分析し、データベースを通じて公開

教育・トレーニングプログラムの提供
がんの研究者や医療専門家向けに、最新の知識や技術を学ぶ機会を提供

発がん性評価
化学物質、物理的要因、生物学的要因、生活習慣などの発がん性を評価し、その結果を「IARCモノグラフ」として公表

がん予防戦略の開発
研究成果に基づき、効果的ながん予防戦略の開発と提言を実施

国際協力の促進
各国の研究機関や政府機関と協力し、がん研究と予防の取り組みを推進

 

これらの活動を通じてIARCは世界のがん対策に重要な役割を果たしており、その研究成果や提言は、WHOや各国政府の政策立案に大きな影響を与えています。

 

 

IARCによる化学物質の評価

PFAS 化学式

IARCは、IARCモノグラフを通じて、化学物質や物質群、物理的要因、生物学的要因、生活習慣など、幅広い要因の発がん性に関する最新の科学的情報を提供しています。

IARCモノグラフとは、IARCが発行する発がん性評価に関する包括的な報告書のことを指します。評価プロセスは、国際的な専門家グループが科学的研究や報告書を綿密に検討して行われます。

評価は主に発がん性の有無(ハザード)を判定するものであり、特定の暴露状況下でのリスクがどの程度あるかを評価するものではありません。

IARCモノグラフの評価結果は、各国政府や国際機関による化学物質規制や公衆衛生政策の立案に重要な科学的根拠として提供されます。

 

PFASの分類

IARCは評価対象の化学物質の発がん性を科学的証拠の強さに基づいて、以下4つのグループに分類しています。

・グループ1:ヒトに対して発がん性がある
・グループ2A:ヒトに対しておそらく発がん性がある
・グループ2B:ヒトに対して発がん性がある可能性がある
・グループ3:ヒトに対する発がん性について分類できない

この分類システムに基づき、IARCは特定のPFASについても評価を行っています。

PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、最も発がん性のリスクが高いカテゴリであるグループ1に分類されています。

グループ1は「ヒトに対して発がん性がある」と断定されているグループで、PFOAによる発がんのメカニズムも明らかになっています。

このグループ1には、日本国内で段階的により規制が強化されているアスベスト(石綿)も含まれています。アスベストは吸入により肺が損傷し、中皮腫など様々な症状を引き起こし、最悪の場合は肺がんを発症させることが知られており、社会問題となっています。

一方、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)はグループ2Bの「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」に分類されています。PFOSの発がん性についてはPFOAほど確実な証拠は得られていないものの、潜在的なリスクがあることを示しています。

 

IARCのPFASの評価

PFASは1万種類以上ある有機フッ素化合物の総称であり、その特性や健康への影響は種類によって異なります。IARCはモノグラフに基づく多角的な評価を通じて、個々のPFASのヒトに対する発がん性を評価しています。

2023年6月、IARCはPFOAをグループ1(ヒトに対して発がん性がある)に分類し、PFOSをグループ2B(ヒトに対して発がん性の可能性がある)に分類しました。この評価は、疫学研究、動物実験、およびメカニズム研究の証拠を総合的に考慮して行われました。

PFOAに関しては、腎臓がんとの関連が特に注目されています。一方、PFOSについては、動物実験での肝臓がんの証拠が評価の基礎となっています。

 

 

IARCの役割

信頼できる男性医師

IARCの主要な役割の一つは、発がん性を持つ化学物質を特定することです。

これにより、特定された化学物質の使用状況や環境汚染の調査が可能となり、効果的な化学物質対策の基盤が形成されます。

IARCの役割は多岐にわたりますが、以下にその主要な側面をご紹介します。

 

国際的な規制と基準設定

IARCの発がん性評価は、国際的な化学物質規制や基準設定に重要な影響を与えています。各国政府や国際機関は、これらの評価結果を基に化学物質の使用や排出に関する規制策を策定し、公衆衛生の向上と環境保護を推進しています。

ただし、IARCは化学物質の発がん性の有無を評価するものの、具体的な摂取量とリスクの関係までは評価しません。

そのため、各国が独自に有害化学物質の基準を設定しています。例えば、日本では河川・地下水等の水環境におけるPFOS及びPFOAの暫定目標値を50 ng/Lと定めています。

 

未知の化学物質から人々を保護

化学物質の毒性評価は複雑で、同じ化学物質群でも発がん性が異なる場合があります。

例えば、1万種類以上あるPFASの中には、現段階では発がん性が報告されていない化学物質もあります。また、まだ評価が行われていない未知の物質も多数存在しています。

IARCのような国際機関が継続的に化学物質評価の結果を公表することで、未知の化学物質に対する適切な取り扱いが可能となり、世界中の人々を潜在的な健康リスクから守ることができます。

 

 

IARCの評価から化学物質のリスクがわかる

科学的な根拠に基づき、IARCは評価を行い、その評価結果は世界中で有害化学物質の規制に活用されています。

特にPFASに関しては、発がんのリスクに加え、難分解性・高蓄積性・長距離移動性といった特殊な化学的性質を持つことから、近年研究者や規制当局の間で関心が高まっています。

IARCの評価報告は定期的に更新されているので、PFAS規制を巡る動向を知りたい方は、最新の情報をチェックしておくとよいでしょう。

 

 

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記事の監修者

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ユーロフィン日本環境株式会社
PFAS MEDIA編集部

PFAS分析を行うユーロフィングループのネットワークを活かして、国内外の様々なPFASにまつわる情報を配信しています。

 

 

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