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事業者が注意すべきPFASの排水規制は?法律と規制内容について

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投稿日:2025年4月日

PFAS 排水

PFAS(有機フッ素化合物)の使用・排出に対する規制は世界的に広がっており、日本でも事業者がPFASへの対策を求められるケースが増えています。

製造や輸入など規制の内容は多岐に渡りますが、工場から排出される排水もその一つに含まれています。

関連する法律や規制は複数にまたがっており、適切に対応するにはそれらをしっかりと把握しなければなりません。

そこで本記事では、PFASを含む排水について、注意すべき法律や規制内容などを解説します。

 

INDEX

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは?

PFAS(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)とは、フッ素と炭素が結合した分子構造を持つ化合物です。

PFASは撥水性・撥油性・耐熱性・化学的安定性を持つことから、撥水剤や界面活性剤、コーティング剤など幅広い用途に使用されてきました。

その一方で、難分解性や高蓄積性、長距離移動性といった性質を持ち合わせており、環境や生物への有害性について現在も様々な議論が交わされています。

PFASは1万種類以上あると言われており、そのうち日本の化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で規制対象となっているのが次の3つです。

 

  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

 

PFASについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

 

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

PFAS

 

 

事業者が注意すべき日本のPFAS規制

PFAS 工業廃水

日本で主に行われているPFASへの対策は、PFASを含む製品の製造・輸出入などの規制と、環境中に存在するPFASの監視になります。

それらの対策の中でも、工場を稼働している事業者が特に注意すべき法規制は以下の2つです。

 

  • 化審法
  • 水質汚濁防止法

 

化審法

化審法は「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」を指し、化学物質による環境汚染から人の健康や動植物の生育などを守るための法律です。

化審法では、PFOS・PFOA・PFHxSの3種類が第一種特定化学物質に指定されています。

第一種特定化学物質は、難分解性や高蓄積性、長期毒性又は人間のような高次捕食動物への慢性毒性を有する化学物質です。

一部のPFASが第一種特定化学物質に指定されたことで、製造や輸出入の原則禁止、使用制限などの規制が敷かれるようになりました。

詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

 

【関連記事】化審法とはどんな法律?役割や化学物質の対象範囲、PFASの分類について

化学薬品と規制

 

水質汚濁防止法

水質汚濁防止法は、工場などから公共用水域への水排出や地下への水浸透を規制する法律です。

公共用水域と地下水の水質汚濁を防止し、国民の健康や生活環境を守る役割があります。

水質汚濁法では人の健康への影響によって有害物質や指定物質などが定められており、該当物質の規定を守らなければなりません。

日本で規制されているPFASのうち、PFOSとPFOAが指定物質に該当しており、万が一これらの化学物質による事故が発生した場合、事業者に説明や対応が求められるケースがあります。

 

 

水質汚濁防止法による規制内容

排水中に含まれるPFAS

水質汚濁防止法では、工場などから河川や湖沼、沿岸海域などの公共用水域に排出される水や地下に浸透する水などを規制しています。

この法律は高度経済成長にともなった水質汚濁問題に対処するため、工場等の排水を規制する法律として、1971(昭和46)年に施行されました。

水質汚濁を防止し、人の健康や環境を守ることが目的で、万が一被害が出た場合における事業者の損害賠償責任についても規定されています。

同法の中で有害物質や指定物質などを定めており、現在PFOSとPFOAが含まれているのは指定物質です。指定物質は「公共用水域に多量に排出されることにより人の健康若しくは生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質」と定義されています。

 

令和5年にPFOS・PFOAが指定物質に

日本でPFASの対策が本格的に開始されたのは、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)で2009年にPFOSが製造や輸出入などの規制対象になったことがきっかけです。

これを受けて、2010年に化審法にてPFOSが第一種特定化学物質に指定され、製造や輸出入などの規制が始まりました。

約10年後の2019年にはPFOAがPOPs条約で規制対象となり、日本ではPFOSと同様の対応が進められます。製造や輸出入などの規制のみではなく、環境中に存在するPFOS・PFOAの状況調査を行い、対応策についての議論が重ねられてきました。

2020年には水質汚濁に関わる環境基準において、PFOSとPFOAを要監視項目(人の健康の保護に関する項目)に位置付けられています。また、水道についても同年に、水道の水質管理で注意すべき項目としてPFOSとPFOAを水質管理目標設定項目に指定しました。

化審法での規制と環境中の状況を受けて、2023(令和5)年に、PFOSとPFOAが水質汚濁防止法の指定物質へ選定されることになりました。

なお、PFHxSについては2022年にPOPs条約で規制対象となり、2024年に化審法で第一種特定化学物質に指定されています。今後は水質汚濁防止法についてもPFOSやPFOAと同じ規制となる可能性が十分に考えられるため、国の動向に注意する必要があります。

 

応急措置や届出を求められる

水質汚濁防止法には、事故で有害な物質が公共用水域や地下に排出されたときの措置についての規定が含まれています。この規定は以前、有害物質として指定されたものなどを対象としていましたが、2011年に指定物質もその対象となりました。

PFOSとPFOAは指定物質に指定されているため、万が一の事故が起きた場合に対応措置が必要となります。この法律で定義されている事故とは、工場内の排水が漏洩して排水されてしまうことを指します。

老朽化や自然災害などによる施設の破損の他、人為的なミスによる排出も事故に含まれるため注意しましょう。義務付けられている事故時の措置は、以下の2つです。

 

  • 応急の措置を講じること
  • 事故の状況などを都道府県等に届け出ること

 

具体的な応急措置は、土嚢の積み上げなどによる公共用水域への排出や、地下への浸透防止、汚染土壌の除去などが考えられます。法的に定めた措置はないため、工場内であらかじめ事故時の措置を検討しておくことが大切です。

また水質汚濁防止法では、都道府県の条例により、排出基準値が国の基準よりも厳しく設定される場合があります。事故時の措置を検討する際には、工場の所在地がある都道府県の公式ホームページなどを確認することも大切です。

 

  

PFASを含む廃液や排水にも注意しましょう

PFAS

化審法によってPFOS・PFOA・PFHxSを含有する製品の製造や輸入などは原則禁止されています。そのため、現状では使用されていないはずですが、工場で過去に使用していた際の廃液やそれに汚染された排水についても同様に注意が必要です。

PFASは難分解性であるため、すでに製造や使用をやめていたとしても工場内に保存されていたり、廃液や排水として残存している可能性は十分にあります。

もし工場にPFASが含まれた廃液や排水などのPFAS含有廃棄物がすでにある場合は、環境省から出ている「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」を確認してください。

ここでは、廃棄対象となったPFOS・PFOAの保管や運搬、分解処理などの留意事項がまとめられています。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 関 友博さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ 
研究開発チーム

Specialist 関 友博

<経歴>

1986年 岩手大学農学部農芸化学科卒業
大学卒業後、青年海外協力隊としてケニアに赴任し、大学で食品分析を教える。

1990年 株式会社カナポリ入社(後の日本環境株式会社)
環境中有害物質の分析業務や研究所の立上げ・設計、MLAP認定・ISO17025試験所認定の取得などに従事。

2011年からは東日本大震災に伴う放射線・放射能の調査・測定・分析体制の立上げ、2012年には遺棄化学兵器処理に関わる環境管理のコンサルティング業務を統括。

ユーロフィングループの傘下に入ってからは、ユーロフィンジャパン全体の環境・食品部門の品質管理を行い、現在はPFAS分析の立上げや国内分析法・EPA Method・ISO法等の導入を指導。

 

 

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