JavaScript is disabled. Please enable to continue!
Mobile search icon
PFAS MEDIA >> 世界のPFASニュース >> PFAS,魚

PFASは魚にも含まれている?曝露のリスクと健康への影響

Sidebar Image

更新日:2025年2月27日

近年ニュースで話題を集めることが多い化学物質が、PFAS(有機フッ素化合物)です。

環境や人体への影響が問題視されたことで、PFASの製造や使用の制限・禁止などの規制が国際社会で広がる中、PFASの分析や検査に着手する企業が増えています。

この記事では、試料に応じたPFAS分析法の種類や特徴、検査サービスを受ける際の流れなどを解説します。

 

INDEX

 

 

魚へのPFAS曝露は世界的に拡大している?

世界地図

まずは魚へのPFAS曝露について、PFASが検出された事例や拡大の傾向、主な曝露経路について解説します。

 

日本の魚から高濃度のPFASが検出された事例

神奈川県の相模原市では、相模川の支流である道保川に生息するカワムツの肝臓から、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)およびPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の合計値として1 kgあたり14万 ngが検出されています。

PFOS・PFOAは、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)によって国際的に廃絶・制限の対象となっているPFASの一種で、発がん性など人体の健康への様々な影響が懸念されている化学物質です。

また、神奈川県横須賀市では、同市内にあるアメリカ海軍横須賀基地内の排水施設からPFOS・PFOAが流出し、調査地点のうち濃度が最も高い場所では、海底の砂泥から1 kgあたり557.9 ngのPFOS、250.4 ngのPFOAが検出されています。

2020年に環境省が実施した化学物質環境実態調査によれば、全国の河口や港で検出されたPFOSの平均値は40 ng/kg、PFOAが21 ng/kgであったことから、かなり高い数値であることがわかります。

しかし、同じ地域で獲れたナマコやミル貝から検出されたPFOS・PFOAは特段高い数値ではなく、この結果だけを見れば、食べること自体に問題はない水準でした。

海や川の水のPFAS濃度が高いからといって、そこで獲れる海産物全体のPFAS濃度が高いとは結論付けられません。

 

  ナマコ(ng/kg) ミル貝(ng/kg)
  このわた※1 くちこ※1 身※2 身※2
  PFOA PFOS PFOA PFOS PFOA  PFOS PFOA PFOS
地点1 21.56 38.08 未分析 未分析 5.80 14.16 ※3 9.56
地点2 採取できず ※3 9.24
地点3 12.13 20.73 17.57 72.18 ※3 7.94 採取できず

※1:1個体を分析 ※2:複数個体の平均値 ※3:定量限界値未満

出典:アメリカ海軍横須賀基地PFAS問題 海産物を独自調査 | NHK

 

  貝類(ng/kg)※ 魚類(ng/kg)※
  PFOS PFOA PFOS PFOA
平均値 16 6 76 定量限界値未満
最大値 130 14 3000 45

※貝類は3個体の平均値、魚類は18個体の平均値

出典:2020年度環境省化学物質環境実態調査

 

魚にPFASが取り込まれる主な曝露経路

魚にPFASが取り込まれる主な曝露経路として、以下の要素が考えられます。

 

  • 水質汚染
  • 底質汚染
  • 食物連鎖

 

海水や淡水自体がPFASに汚染されていれば、エラ呼吸で水を取り込んだ魚が影響を受けてもおかしくはありません。

また、海や川の底の泥・砂にPFASが含まれていた場合、底生生物も汚染されます。結果として、それらの生物を食べた魚がPFASに汚染されるのは明らかでしょう。

水質汚染や底質汚染が起きるのは、工場・基地等の排水や排ガスの大気放出が雨となって降り注ぐことが要因として考えられます。

近隣にPFASを扱う工場・施設等がある場合、河口や海の一部がPFASのホットスポットになりやすい点も問題視されています。

 

 

魚のPFAS濃度に関する各国の調査報告

パソコンを見る医師

魚のPFAS濃度に関しては、日本を含めた世界各国で調査が行われています。ここでは、主要な調査結果について解説します。 

 

EPA(米国環境保護庁)の調査結果

アメリカでは、2023年2月~3月にEPA(米国環境保護庁)が実施した「2023 National Fish Forum」にて、デューク大学のナディア・バーボ氏らの研究チームが淡水魚のPFAS汚染について発表を行いました。

研究チームは、2013年~2014年に米国中の河川および2015年に五大湖において調査された淡水魚の切り身サンプルより、PFAS汚染のレベルを調べました。

調査結果によれば、検出可能レベルのPFASを含む魚は、調査した48州全てで見つかりました。そして、淡水魚1 kgあたりのPFASの中央値は11,800 ngにも達していました。


この調査は2013年~2015年の収集サンプルを用いて評価したものであるため、その後のPFAS規制により、現在では魚の体内に残るPFASは減少していると考えられます。

とはいえ、PFAS汚染が広範囲に拡大し、場所によっては高濃度に汚染されていた記録と言えるでしょう。

 

EFSA(欧州食品安全機構)の調査結果

ヨーロッパでは、EFSA(欧州食品安全機構)が多様な食品について、PFOS・PFOAを含むPFASの含有量調査を実施しました。

その結果、イワシ、ナマズ、オオカミウオ、ウナギ、スズキをはじめとして多くの魚類からPFOSが検出されました。
また、コイからはPFOAが、スズキからはPFDA(パーフルオロデカン酸)が検出されたとのことです。

 

内閣府の食品安全委員会の調査結果

日本でも食品の安全性を担保する観点から、定期的に水産物中に含有されるPFOSおよびPFOAの調査を行っています。

農林水産省「令和3~4年度水産物中のパーフルオロアルキル化合物の実態調査結果」によれば、水産物に係るPFOSおよびPFOAの含有量調査結果は以下の通りです。

(単位:µg / kg)

調査対象物質名 検出下限 定量下限 検出下限未満の点数 定量下限未満の点数 最大値 平均値(LB)※1 平均値(UB)※1 中央値
※2
PFOS 0.010 0.020 2 4 2.7 0.468 0.469 0.345
PFOA 0.020 0.040 53 76 0.11 0.005 0.043

※1 : 平均値は、定量下限未満の試料がある場合、定量下限未満の濃度をゼロとして算出したもの(LB)と、定量下限未満の濃度を定量下限値として算出したもの(UB)をそれぞれ記載。
※2 : 中央値は、調査試料の50%を超える試料で調査対象物質が定量された場合のみ記載。

出典:令和3~4年度水産物中のパーフルオロアルキル化合物の実態調査結果|農林水産省

 

 

PFASを含む魚が健康に与える影響

PFAS 水

PFASを含む魚を人間が食べた場合、健康にどのような影響が及ぶのかについて解説します。

 

PFASが人体に与える影響

PFASが人体に与える影響として代表的なものは、発がん性とホルモンかく乱作用です。

IARC(国際がん研究機関)によれば、PFOAはグループ1(ヒトに対して発がん性がある)、PFOSはグループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)に分類されています。

ホルモンかく乱作用により、男性・女性ともに不妊、性的成熟の早期化が懸念されています。女性については、生理不順や妊孕性の低下も懸念されるところです。

加えて、PFOSやPFOAにより血中コレステロール値の上昇や潰瘍性大腸炎など、様々な症状・疾病が引き起こされる可能性が指摘されています。


なお、日本では食品安全委員会により、PFOSおよびPFOAのTDI(耐容一日摂取量)が以下のように設定されています。

 

PFOS 20 ng/kg
PFOA 20 ng/kg

※いずれも「体重/日」の数値

 

例えば、体重が60 kgの人なら、TDIはPFOS、PFOAともに1,200 ngになります。

PFASの曝露が人体に与える影響については、下記の記事で詳しく解説しています。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)の人体への影響は?

悩む女性

 

各国のPFAS毒性評価のまとめ

PFASの毒性については、現時点でまだ分からない部分も大きいのが実情です。

ここでは、2024年9月時点で判明している主要国のPFAS毒性評価をまとめて紹介します。

 

米国(EPA)の毒性評価 SWDA(安全飲用水法案)に基づき、PFOSとPFOAについてMCLG(最大許容濃度の目標値)を設定。2023年時点では「おそらく発がん性がある」という見解から、MCLGは0 µg/Lと設定されている。
EU(EFSA)の毒性評価 2018年時点では、以下の4点を潜在的な重大影響として評価。
● 血清総コレステロール値の増加
● 血清ALT値の異常率の増加
● ワクチン接種後の抗体反応の減少
● 出生体重の減少
その後、2020年にはPFASの腸肝循環やコレステロール代謝による再吸収への影響についても指摘。
WHO(世界保健機関)の毒性評価 PFOS及びPFOAに関する飲料水水質ガイドラインの背景文書の草案を2022年11月に意見募集用の文書として発表。2023年11月には、集まった意見をIARC(国際がん研究機関)等の最新の証拠や、曝露源等を背景文書に反映するとしている。

 

PFASの毒性評価について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

 

【関連記事】PFASの毒性評価とは?海外と日本での最新の評価内容について解説

勧める勧めない

 

 

食品中のPFAS基準値に関する各国の動向

相談する医師たち

2024年10月時点では、日本は研究データが不十分という理由で、食品や魚に関するPFASの基準値が設定されていません。

基本的に日本は米国やEU(欧州連合)など主要国での規制や国際条約を受けて規制を整備することが多くなっており、現状の対策は後れをとっているのが実情です。

以下において、世界の主要国における食品中のPFAS基準値に関する動向をまとめました。

 

米国(EPA) 飲料水に関してはPFASの健康勧告値が設定済みだが、食品や魚に関しては未設定。ただし、一部の州では独自に勧告、ガイドラインを定めているケースがある。
欧州連合(EU) EFSAは、食品中のPFASに関するTWI(耐容週間摂取量)を設定済み(4.4 ng/kg)。EFSAのガイドラインに基づき、各国が食品中のPFASの基準値を設定することが推奨されているが、あくまで食品全般を対象としたもの。魚に特化した基準の扱いは国によって異なる。
スウェーデン 水中に高レベルのPFASが含まれる湖がある自治体に対し、獲れた魚のPFASレベルを確認することが推奨されている。

また、高レベルのPFASを含むことが知られている魚については、定期的に食べないなど、摂取を制限するよう呼び掛けている。

ドイツ UBA(ドイツ連邦環境庁)は、飲料水および食品中のPFASに関する基準値を設定。魚についても含有量のガイドラインが設定済み。

 

 

魚のPFAS曝露リスクを把握することが重要

魚はPFAS曝露を受けやすい生物であり、日本を含めた世界各国で事例が報告されています。

しかし、PFASが直接的な原因となった証拠や健康被害は確認されておらず、健康に影響を与える曝露量についても不明確な部分が多いのが現状です。

その一方で、魚には豊富な栄養が含まれており、私たちの健康に必要な食材でもあります。今すぐに魚を食べるのを止めるべきという意味ではないので、以下の基本的な注意点を守り、適量を食べる分には問題ないでしょう。

 

  • 水銀含有量の観点からも、妊娠を予定している女性、妊婦は魚の摂取に注意する
  • 汚染が明らかになっている場所で獲れた魚や、獲れた場所が不明な魚は摂取を控える
  • 不安な場合には、肝臓などの内臓は食べず、身だけを食べる
  • 他の食品も含めたバランスを考えて摂取する

 

魚に限らず、食品とPFASの関係は今後も注目していくべき事項です。情報を適切に取り入れながら、日々の食事に向き合っていきましょう。

 

 

ユーロフィンのPFAS分析については

こちらからお問い合わせください

お問い合わせ

 

 

記事の監修者

品質保証グループ

ユーロフィン日本環境株式会社 品質保証グループ

第三者分析機関としての信頼性や適合性を担保するために、品質システムの整備や監視活動に従事。特に、当社では分析実施項目の大部分でISO/IEC 17025の認定を取得し、PFASについてもISO/IEC 17025認定を取得しており、それら認定の維持管理を主要業務としている。また、国内外のグループ会社と連携した相互監査や技能試験評価、品質会議など、世界中に展開しているEurofinsグループの強みを活かした取り組みも実施。

 

 

関連記事

包装容器

PFASは食品包装にも使用されていた?世界の規制動向と議論について

数多くの日用品にも使用されてきたPFAS。一部の食品包装にも使用されている可能性が指摘されています。食品包装におけるPFASの使用状況や規制の動向について解説。

勧める勧めない

PFASの毒性評価とは?海外と日本の最新の評価内容について

PFAS(有機フッ素化合物)の毒性についてはまだ分かっていないことも多く、世界中で研究が進められています。国内外で進められているPFASの毒性評価について解説。

 

 

PFAS MEDIA TOPに戻る→


【参考資料】