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企業にPFASの浄化義務はあるのか?米国の最新動向と日本の実態を解説

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投稿日:2024年12月26日

土壌

PFAS(有機フッ素化合物)は、一度環境中に放出されると自然に分解しづらい特性を持っています。

PFASを環境中に放出した企業には、PFASを浄化する義務が生じるのではないかと考える方もいるでしょう。実際に米国では、法律でPFASの浄化に関する規制が進められています。

この記事では、PFASの除去と浄化の違いや、米国の最新動向、日本の現状について詳しく解説します。

 

INDEX

 

PFASの浄化とは?

土壌分析

PFAS(有機フッ素化合物)は、難分解性・高蓄積性などの特徴を持った化学物質です。そのため、一度PFASに汚染された環境は、簡単に浄化することはできません。ここからは、浄化と除去の違いや、PFASの浄化について解説します。

 

浄化と除去の違い

浄化と似た言葉として「除去」があります。似た意味を持つ2つの言葉ですが、最終的な目的が違うため注意しましょう。

浄化とは、汚染物質が取り除かれた後の環境全体を元の状態に戻すことを目的とした方法です。一方で除去は、汚染物質そのものを特定して、取り出す行為に焦点を当てた方法です。

例えば、とある池からPFASが検知された場合、その水質中に含まれるPFASを取り除く方法を除去、水域全体をPFASに汚染される前の状態に戻す方法が浄化となります。

除去と浄化ではそれぞれ目的が異なるため、取るべき手段も変わります。

 

土壌汚染の浄化も重要

PFASの曝露経路として最もリスクが高いのは、飲料水や海産物を介した経口摂取です。そのため、日常生活で口にする水に含まれるPFASの除去方法については、世界各地で研究が進められています。

また、土壌に含まれたPFASが地下水などに染み出すことで、水質中にPFASが含まれることも指摘されています。

このことから、飲料水や海産物に含まれるPFASを減らすためには、水質中のPFASを除去するだけでなく、土壌中に含まれるPFASの浄化方法について考えることも重要なのです。

 

米国ではPFAS浄化へ向けた法改正が施行

土を掬う手

米国では、土壌中に含まれるPFASの浄化へ向けて、スーパーファンド法によるPFAS規制を強化しています。ここでは、スーパーファンド法の詳細や、米国のPFAS浄化へ向けた取り組みについて解説します。

 

スーパーファンド法とは

スーパーファンド法とは、1980年にアメリカで制定された包括的環境対応対策補償責任法(CERCLA)の通称です。この法律は、1970年代の環境汚染事件を契機に制定され、主に有害廃棄物による土壌汚染の浄化を目的としています。

スーパーファンド法は、汚染の原因者に浄化費用を負担させることを基本としつつも、原因者が特定できない場合や浄化を行うことが困難な場合に、EPA(米国環境保護庁)が代わりに浄化を実施できる法律です。ただし、EPAが代わりに浄化を行ったとしても、その費用は後で原因者に請求されます。

また、特定の化学製品や石油製品の製造業者から徴収した税金を信託基金として設立し、浄化費用として使う仕組みもこの法律の特徴です。スーパーファンド法により、過去の環境汚染に対する責任を明確にし、持続可能な環境保護を推進しています。

 

PFOSとPFOAがスーパーファンド法の対象物質に

EPAは、2024年7月にPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)をスーパーファンド法の有害物質に指定しました。

これにより、PFOSやPFOAの汚染が発覚した場合、汚染責任者に対して調査および浄化費用の負担が義務付けられます。

EPAはこの規制強化により、PFOSとPFOAに対する汚染の調査・浄化をより迅速に行えるようになりました。

 

 

PFASに汚染された土壌を浄化する方法は?

PFASを含む汚染土壌を浄化する方法について、日本を含む複数の国で研究が進められています。ここでは、PFAS汚染土壌を浄化する方法について詳しく解説します。

 

土壌の浄化に有効とされている研究結果

土壌に含まれるPFASを除去する方法として、米国の浄化研究事例において注目されている急速電熱鉱化(REM)プロセスが挙 げられます。急速電熱鉱化(REM)プロセスとは、電気を利用して鉱石を急速に加熱し、化学反応を促進させることで、目的の金属や化合物を効率的に抽出する方法です。

環境に適合したバイオ炭を導電性添加剤として使用し、電流パルス入力することにより、土壌温度が数秒以内に1,000 °C以上に上昇します。これにより、土壌に含まれるPFASは、その土壌固有のカルシウム化合物とともにフッ化カルシウムに変換されます。

REMプロセスは、土壌中の様々なPFAS汚染物質の修復に適用でき、99%以上の高い除去効率と90%以上の鉱化率が実証されているのが特徴です。

 

日本企業の技術開発

土壌に含まれるPFASを除去する方法は日本でも研究が進められており、一部の企業は土壌に含まれるPFAS浄化へ向けた新技術の開発を進めています。

清水建設株式会社は、汚染物質を土壌の細粒分に集積させる分級手法と、水中の泡の表面に汚染粒子を付着させて分離・回収する泡沫分離法を組み合わせた方法を開発しました。この方法によって、PFAS含有量の約99%を土壌から除去することに成功しています。

また、国際航業株式会社 では、電気発熱法による土壌中のPFAS除去についての研究を進めています。

電気発熱法とは、土壌が発熱する際に、礫層や砂層よりも粘性土層のほうが温まりやすいという性質を活用して、粘性土層のVOC(揮発性有機化合物)汚染を効果的に浄化する方法です。また、温度上昇に伴うVOCの微生物分解や化学反応の促進も期待できます。

この除去方法を活用して、水溶性の高い1,4-ジオキサンやPFASに対する実用化を目指しています。

 

 

日本のPFAS浄化へ向けた対策は?

工場で働く男性

日本の法律によるPFAS規制は、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)や水道法による規制が中心です。しかし、2024年9月時点では、日本国内で土壌汚染に関するPFASの法規制はありません。

一方で、土壌に含まれるPFASの検査方法については、2023年7月に環境省から土壌に含まれるPFASの暫定測定方法が示されています。法律による規制はありませんが、自主的に国が指定する方法で土壌中のPFASを測定することは可能です。

 

 

PFAS浄化へ向けた世界の動向を注視して早めの対策を

水質中のPFAS汚染は、土壌に含まれるPFASが染み出すことが原因とされています。

そのため、環境中のPFASを浄化するためには、まずは土壌中に含まれるPFASを浄化することが重要になります。

現在、日本では土壌に含まれるPFAS浄化に関する法規制はありません。しかし、米国ではPFOS・PFOAがスーパーファンド法の規制対象になるなど、すでに土壌のPFAS汚染を規制する動きを始めている国もあります。

また、一部の日本企業の中では、PFAS汚染土壌を浄化する技術も開発されてきています。今後は日本でもPFAS土壌汚染への対応が求められる可能性もあるため、海外の動向を注視しつつ、早めに対応できるように準備を進めておきましょう。

 

 

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ユーロフィン日本環境株式会社
PFAS MEDIA編集部

PFAS分析を行うユーロフィングループのネットワークを活かして、国内外の様々なPFASにまつわる情報を配信しています。

 

 

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