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海外の分析メソッドをいち早く日本へ。PFAS分析の導入プロセスを紐解く

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ユーロフィン日本環境では、グローバルカンパニーならではの情報網と技術力を活かしたPFAS分析に取り組んでいます。

国内で初めてEPA(米国環境保護庁)が定める公式メソッド「EPA Method 1633」の導入に成功し、変化の激しいPFAS分析の第一線で水や土壌などの分析をアップデートし続けています。実際にどのような手順で分析法を導入しているのか、PFASグループの研究開発チームでPFAS分析の開発業務を務める野島さんにお話を伺いました。

 

プロフィール

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部  PFASグループ
研究開発チーム
Specialist 野島 智也

研究開発チームの開発要員として、PFAS分析の最前線で分析を続ける。2020年、有機分析チームの分析要員として、PFOS・PFOA分析の立ち上げに従事。それ以降、国内の分析法、EPA法、ISO法など、様々な分析メソッドを立ち上げる。

 

 

アメリカの環境保護庁が定める「EPA Method 1633」を導入

インタビュー時の様子

ーーまず、野島さんの役職や携わっている業務について教えてください。

PFASの研究開発チームの中で、PFAS分析法の開発要員を務めています。業務はPFASの分析のほか、新しい分析法の導入も進めています。

PFASに関する規制はグローバルで変化しており、情報更新のスピードも早くなっています。常に最新の情報をキャッチアップしながら、日々の業務に取り組んでいます。

 

ーーユーロフィン日本環境では、環境下におけるPFAS分析において、海外の分析法を導入していると聞きました。具体的にどのような分析法なのでしょうか。

グローバルに事業を展開するお客様へ対応するために、アメリカ環境保護庁のEPAが定める「EPA Method 1633」という分析法を導入しています。

日本の公定法(国内の研究機関で指定された公式の分析法)との大きな違いは、測定できるPFASの種類の数です。

国内で採用されている分析法は環境省の通知の方法によるものが多く、PFOS・PFOA・PFHxSの3項目を対象にしています。 一方で、「EPA Method 1633」では、PFOS・PFOA・PFHxSを含めたPFASの40項目を検出できます。

 

ーー国内の方法と比較すると項目がかなり多いですね。数十種類のPFASを分析できることには、どのような意味があるのでしょうか。

海外企業との取引や製品の輸出入等のグローバルな事業を展開しているお客様の場合、その国々の法律で定められた規制値を下回らなければいけません。その場合、国内の分析法だけでは対応しきれないため、より広範囲に調査できる分析法を導入しました。

「EPA Method 1633」は国内で初めて国際的に信頼性のあるISO17025認定も取得しており、多くのお客様から評価をいただいています。

 

ーー「EPA Method 1633」は、いつ頃導入したのでしょうか。

2023年の2月に導入が完了し、お客様へのサービスを開始しました。もともと「EPA Method 1633」は、アメリカにおけるPFAS問題の拡大を受けてアメリカ環境保護庁と国防総省が共同で開発したメソッドで、2021年8月にドラフト版が公開されました。

弊社では、2022年に第2版が発表された頃に導入を決め、約半年ほどかけてSOP(標準業務手順書)を作成しました。

 

 

社会の情勢を考慮しながら新たなPFAS分析法を導入

業務中の様子

ーーこれまでに、どのような手順で分析法の導入を進めたのか教えてください。

最初は環境省の通知に基づき、PFOS・PFOAの分析法(環水大水発第 2005281 号 環水大土発第 2005282 号 付表1に掲げる方法) を導入しました。当初の対象物質はPFOS・PFOAの2項目だけでしたが、その後規制の拡大を見越してPFHxS・PFHxAを加え、現在は4項目に対応しています。

その次に導入したのが、「EPA Method 537.1」です。「EPA Method 1633」と同じく、アメリカ環境保護庁が定めるメソッドの一つです。飲料水に含まれるPFASの18項目が検査可能な分析法ですが、お客様の要望を受けて22項目へと増やしつつ、環境水や排水に対応した「EPA Method 537.1 modified」という形で導入しました。

この導入が最も大変なプロジェクトでした。「EPA Method 537.1」の分析方法は、大まかな流れは環境省の通知法と大きく変わらなかったため、すんなりと導入できそうだと思っていました。しかし、結果的にこれまでのプロジェクトの中で最も導入に時間がかかりました。

 

ーー導入の障壁となった課題について、詳しく教えてください。

具体的には、ブランク(実際の試料ではなく試薬水等を用いて同様の操作を行う分析) のクリアに時間がかかりました。ブランクの低減方法はメソッドの英文にも記載されていたのですが、それでも不十分。原因の可能性がある箇所を調べてはデータを取得し、必要であれば変えていく。一つひとつ地道に検討を進め、器具や手順を変更し、分析環境を改善していきました。

多項目の一斉分析法を導入するのは初めてだったため、知見が今ほど蓄積されておらず、非常に苦戦しました。分析する物質が増えると、これまでの方法をそのまま移行するだけではうまくいかないケースもあると学びました。

 

ーー続いて、「EPA Method 1633」を導入する際に課題は発生しましたか。

「EPA Method 537.1 modified」の導入経験を活かして事前準備を整えられたので、ある程度は想定通りに進みました。まず、英語で書かれたメソッドを読み込んでいくのですが、その段階でやはりブランク管理に苦戦すると予測しました。試料や器具選定を慎重に進めた結果、予測の範囲内の期間でSOPを作り終えました。ブランク管理に予め手間をかけておいたことで、以前のEPA Method 537.1 modifiedの導入時よりも、早く課題を解決できました。

 

 

PFASの検査対象を増やすために、新たな分析法の導入を進めたい

インタビュー時の様子

ーー国内では、水質や土壌におけるPFASの含有量について関心が高まっています。今後世界では、分析の需要がどのような方向に進むと考えていますか。

確実な予測は難しいですが、排ガスにおけるPFAS関連の調査が今後増えてくるのではないかと思っています。まだ国際的な基準や手法は定まっていませんが、例えばアメリカでは、排ガスや大気中のPFASについて分析方法の開発が始まっています。また、日本でも「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」が策定され、この中には排ガス中のPFOS・PFOAの分析方法が記載されています。弊社でも今後を見据えて、独自法ですが排ガスの分析法を開発・導入しました。

 

ーーちなみに日本国内の場合、PFAS規制はどのような方向に進むと予想していますか。

日本国内の場合、欧米と比較すると慎重に規制を進めている印象はあります。ただ、2024年からはPFHxSの原則的な製造と使用禁止が定められました。

日本も加盟しているPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)の規制を受けて、これに対応する規制が拡大される可能性はあります。また、時間経過等の条件が揃うことで有害性のあるPFASへ変化するものも存在するため、どのように扱われることになるのか、個人的に興味がありますね。

将来的にどのような方向性でPFASの扱いが変わっていくかについては、国際的な動向にも左右されるので明言できませんが、引き続き各国の動向を注視しながら業務に取り組みたいです。

 

ーー最後に、今後、野島さんが取り組もうと考えていることについて教えてください。

現在、ユーロフィン日本環境では、水質・土壌・排ガスなどのPFAS分析依頼を受けていますが、将来的には分析の範囲をさらに拡大したいですね。

例えば、技術的留意事項では排ガスのほかにも廃棄物のPFOS・PFOAが分析対象になっているので、多種多様な廃棄物に対応できる分析法を導入しておきたいです。また、さらなる対象項目の拡大に向けて、揮発性を有するPFASの分析法も検討していければと思っています。

 

 

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