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PFAS MEDIA >> PFAS最前線で働く人に聞いてみた! >> 環境分析のケミストが語る、PFAS調査の必要性と国内外の法規制への対応

環境分析のケミストが語る、PFAS調査の必要性と国内外の法規制への対応

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環境分析のケミストが語る、PFAS調査の必要性と国内外の法規制への対応 _Tomohiro Seki Profile画像

近年、国際的にPFAS(有機フッ素化合物)の規制が厳しくなりつつあります。日本国内でも法規制が進み、各企業はその対応に追われているのが現状です。法規制への対応に伴って必須になるのが、PFASの分析調査。適切かつ信頼性の高い方法で分析を行い、法律や規制に適合していることを証明する必要があります。

年々需要が増え続けているPFASの分析について、海外の動向を踏まえて様々な分析法を導入しているユーロフィン日本環境は、どのように対応しているのでしょうか。

今回は、環境分析のスペシャリストとして第一線を歩んできた関さんに、現在のPFAS規制の現状と今後の動向についてお話を伺いました。

  

プロフィール

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部  PFASグループ
研究開発チーム
技術顧問  関友博

ユーロフィン日本環境におけるPFAS分析の組織の立上、分析法の導入を責任者として担う。これまでに食品分析ラボ、ダイオキシンラボの立ち上げをはじめ、数々の環境分析プロジェクトの責任者を務めた。

 

 

「国内」「海外」共にPFAS分析に対応できる組織を設立

インタビュー時の様子

ーー30年以上にわたり化学分析の最前線に携わってこられた関さんは、現在どのような業務を担っているのでしょうか。

2021年に立ち上げたPFASの研究開発チームにおける技術アドバイザーを担当しています。

これまでにケミストとして、化学物質の分析とそれを実施する組織の立ち上げ、その両方に携わってきました。例えば、大気や水質、土壌などの環境に存在するダイオキシンや環境ホルモンなどです。これらの化学物質に関しては、測定を行う試験所の組織編成や分析の実施体制の構築に関わってきました。中央研究所(現在の環境ラボ)の建設プロジェクトに関しては、ダイオキシン類分析の責任者として施設の設計段階から関与しました。

PFASの専門部署の立ち上げプロジェクトでは技術面の責任者を務めてきましたが、定年を機に第一線を退き、現在はこれまでの知見やノウハウを組織に還元するべく、研究・分析の効率化や後輩育成の役割を担っています。

 

ーー近年はPFAS関連の規制について、ニュースで目にする機会が増えました。PFAS調査の依頼数はやはり増えているのでしょうか。

PFASについては、自然環境や動植物、人体への影響があると分かってから社会的な注目が高まっており、分析依頼をいただく件数は増えています。お客様 の業種は産業の川上から川下まで様々で、部品メーカーから土壌汚染対策のコンサルタント、食品メーカーなど、まだ規制値が定められていない業界においても調査を実施される企業が増えつつあります。

 

ーーユーロフィン日本環境が実施している大気や水中などの環境下におけるPFAS分析サービスには、どのようなものがあるのでしょうか。

公 共用水や地下水、排水、土壌に関し、日本の公定法と米国の公定法を中心に複数の分析法を導入し運用しています。排ガスについても測定を始めました。測定項目は国内で需要の高いPFOS ・PFOA・PFHxS・PFHxA の4項目を検出する方法から、米国で実施されている40項目にも及ぶPFASを検出する方法まで幅広く対応しています。

 

ーー公共用水に関して、国内の法律では3種類の化学物質を検査するように定められていますが、それよりも多くの物質を検査する方法も導入されているのですね。

インタビュー時の様子

はい。国内の法律で定められた規格を用いた分析はもちろん、先ほどお話ししたように国際的な規格も積極的に導入しています。米国の公定法に関しては国内初となるISO17025認定も取得しています。

ISO17025とは、ISO (国際標準化機構)が定める国際的な規格であり、正確な検査・分析・測定を行う能力があることを、第三者認定機関が審査した上で認める制度です。

日本国内において取得はまだ義務化されていませんが、海外では分析機関には必須の資格となっています。中国などのように法律で取得を義務づけられているケースも少なくありません。弊社は以前からISO17025の認定取得に力を入れており、PFASに限らず、日常的に分析している項目の多くについて認定を取得しています。

また、弊社で独自に導入している分析法もあります。例えば、排ガスに含有されるPFAS。PFOS、PFOAの2項目については「PFOS含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」で定められていますが、それ以外の項目についてはまだ公的なメソッドが国内外ともに定まっていないため、社内メソッドで対応している事例もあります。

 

PFAS分析の最新メソッドの導入を継続できるグローバルネットワーク

ーーPFAS分析に関する取り組みについて、ユーロフィン日本環境がどのように取り組んできたのか、その軌跡を教えてください。

インタビュー時の様子

もともとは有機分析を行っているグループで業務の一部としてPFASの分析を実施していました。今後はPFAS分析の需要がさらに拡大する動向を予測し、専門部署の立ち上げを経営層が決断したのです。

ユーロフィンは、ヨーロッパに本社を置く化学分析のグローバル企業です。PFASの規制の厳格化が欧米で進んでいることもあり、日本でも同様の体制が必要になるだろうという考えのもと、2021年に現在の専門部署を立ち上げました。

 

ーー組織の立ち上げはどのように進めたのでしょうか。

もともとPFAS関連の分析は実施していたので、機械・人材・器具は揃っていたんですよね。ただし、米国の公定法の立ち上げに際してはSOP(標準業務手順書)を新たに作る必要がありました。

当時規制されていたのは、PFASの中でもPFOAとPFOSです。その2種類の物質に関しては、これまでの分析法でも検出できました。しかし、規制が拡大すると予測されていたPFHxSや他のPFAS関連物質は、分析方法が定められていませんでした。

弊社の欧米のお客様はグローバルに事業を展開する企業が多く、海外諸国の規制に対応するため、「PFOS・PFOAのみならず、多項目を日本においても分析したい」と要望をいただくことがありました。

そこで、要請が多かった米国の公定法である「EPA Method 537.1」 を導入するために、SOPを作成して試験法導入のための検証を進めました。従来実施していた国内の公定法の効率化にも着手し、試行錯誤をしながら、測定条件の見直しや自動化、効率化によって分析時間を短縮することに成功し、組織を盤石な体制で運営できるようになりました。

 

ーーお客様の需要を予測して、組織体制を整えたのですね。安定的な運営ができるようになってからは、何か取り組んだことはあるのでしょうか。

組織体制を整えてからは、新たな分析メソッドの導入に着手しました。ただし、日本の公的な規格だけでは検出できる項目が少なく、グローバル企業の要請に対応しきれない部分もあります。

そのため、前述したように2022年には、「EPA Method 537.1」というEPA(米国環境保護庁)が定めたメソッドに測定項目を追加して22項目を分析できる方法を導入し、続いて分析項目が40項目に及ぶ「EPA Method 1633」の導入にも成功しています。

 

ーーアメリカで最新の分析法の導入に成功した背景には、ユーロフィンがグローバル展開をしている影響が大きそうですね。

世界各国にグループの試験所があるため、グローバルな情報は取りやすいと実感しています。アメリカのグループ会社のPFAS分析の実績は、日本の100倍以上もあります。細かな分析のテクニック、注意点、効率化の方法などの貴重な知見を蓄積しているため、参考にすることも多いですね。

オーストラリアにはPFAS分析の第一人者の研究者もいますし、チーム内にもグローバルメンバーが所属しています。PFAS分析の最前線である欧米の動向を把握しやすいことは、弊社の大きな強みだと思っています。

 

 

今後のPFAS分析に向けて、「効率化」「学会での発表」を軸に組織の地力を強化したい

インタビュー時の様子

ーーPFAS分析を行う際に、チームとして重視している点を教えてください。

まず重要なのが、作業の効率化です。一般的な化学物質の分析では、各工程が複雑になればなるほど、コストが大きくなることはもちろんですが、それだけではなく作業に伴う誤差が大きくなる傾向にあります。作業が増えればミスの確率は増えますし、工程が増えればコンタミネーション(不純物の混入・汚染)が発生する可能性も上がります。分析の品質を維持したまま多くの検体を分析するためには、作業の効率化が不可欠です。

また、効率化によって分析時間を短縮できれば、新たな技術動向を追う時間も増やすことができます。効率化は、業務を進める際の重要なテーマの一つです。可能な限り、シンプルな手順と工程の効率化を実現できるように、日々の業務の中で試行錯誤しています。

また、情報収集も重視しています。化学分析の現場では、最新情勢をキャッチアップしなければ、分析手法の導入などで後れを取ります。グローバル企業として、国内外の動向や研究は常に追わなければいけません。また、前述してきた我々の取り組みも対外的にアピールしていく必要があると思っています。

そのため、学会での発表や公的機関が主催する研究会などへの参加を積極的に行うように体制を整えてきました。専門家が集まる場での情報交換は、メンバーのスキルアップのためにも、弊社の取り組みを認めていただくためにも重要であると考えています。

 

ーー今後、チームとして取り組んでいこうと考えている点について教えてください。

分析の効率化と品質強化という点で、2つのことに取り組みたいと考えています。まずは自動化の推進です。装置の導入で手順を改善できるポイントがありますので、その部分を改善したいですね。

次に、検査ラインの環境を整備したいと考えています。将来的に分析装置やスペースを増やすことを計画しており、その際にはクロスコンタミネーション(高濃度のサンプルから他のサンプルへの汚染)が起こりにくいようにラインを分けるなど、効率化と品質の維持を同時に推進できるような対策を打ちたいです。

 

ーー最後に、今後のPFASの動向、それを受けてどのような方向性に進もうとしているのか、ご意見をお聞かせください。

今後の動向については、予測できない部分もあり、意見を述べるのは非常に難しいですね。社会情勢がどのように変わるのかは、誰にもわかりません。

今の私たちにできることは、国内においても今後PFAS分析のニーズが徐々に拡大していくことを信じて、より多くの媒体やサンプル数に対応できる体制を整えることです。分析項目についても可能な限り多くの化学物質を検出できるように、欧米の動向を追いつつ、分析法や装置など多くの情報を収集しながら対応していければと思っています。

 

 

ユーロフィンのPFAS分析については

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