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PFAS分析(PFOS/PFOA/PFHxS等) >> PFAS MEDIA >> 世界で規制されるPFASの種類は？代表的な化学物質の特徴

世界で規制されるPFASの種類は？代表的な化学物質の特徴

投稿日：2025年1月23日

女性科学者

PFAS（有機フッ素化合物）は、世界中で規制が強化されている化学物質の一つであり、日本でも一部の化学物質が化審法（化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律）の規制対象となっています。

しかし、日本では規制されていないPFASでも、他国では規制されているケースが数多くあります。海外の動向によっては、今後日本国内の規制内容が変更される可能性もあるため、規制の実態を把握することは非常に重要です。

この記事では、世界で規制されている代表的なPFASの種類と、各化学物質の特徴について詳しく解説します。

INDEX

PFAS（有機フッ素化合物）とは？

PFAS（有機フッ素化合物）は、炭素とフッ素の強固な結合を持つ化学物質です。約1万種類以上のPFASがあり、撥水・撥油剤や半導体材料など幅広い用途で使用されてきました。

有毒性が懸念される一部のPFASは、難分解性や高蓄積性、長距離移動性といったPFAS共通の特徴により、その存在が問題視されています。

環境や体内にPFASが残留し、人の健康においてコレステロール値の上昇、発がん、免疫系等へ影響を与えることが報告されています。

そのため、POPs条約（残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約）では、PFOS（ペルフルオロオクタンスルホン酸）が附属書B（制限対象）に、PFOA（ペルフルオロオクタン酸）とPFHxS（ペルフルオロヘキサンスルホン酸）が附属書A（廃絶対象）となっています。

PFASについてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

全てのPFASが危険というわけではない

PFASの中には、人への影響について問題視されているものがある一方で、現時点の研究では問題性がまだ確認されていないものもあります。

例えば、フッ素樹脂（パーフルオロ系）であるPTFE、FEP、PFAなどのPFASは規制対象になっていません。実際にテフロンは現在でも撥水剤等で製品に使用されています。

PFASの有害性については現在も研究が進んでおり、これらの化学物質もいずれは健康への影響が確認されて規制対象になる可能性はあります。

2024年時点では、1万種類以上あるPFASの全てが危険と結論付けられているわけではない点は理解しておきましょう。

日本で規制対象になっているPFAS

工場作業者

数あるPFASの中でも、日本の化審法（化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律）において規制されている化学物質は以下の3種類です。

PFOS
PFOA
PFHxS

ここでは、各化学物質の概要と規制内容について詳しく解説します。

PFOS（ペルフルオロオクタンスルホン酸）

PFOSは、撥水・撥油性や化学的安定性の高さから、過去には金属メッキや半導体製造の際に使用されていました。

日本では、2009年に化審法の第一種特定化学物質に指定され、2010年4月1日からほぼ全ての用途で製造・使用が禁止されています。

当初は一部用途（半導体用レジスト、写真フィルム等）が例外として認められていましたが、2017年の改正でこれらの例外も廃止され、全ての用途で禁止されています。

【関連記事】PFOSとはどんな物質なのか？人体への影響も含めて解説

PFOA（ペルフルオロオクタン酸）

PFOAは防水加工やフッ素樹脂コーティングに使われる化学物質で、主に衣類、調理器具、電子基板など幅広い用途で利用されていました。しかし、その難分解性と人体への有毒性、蓄積性が懸念され、日本では規制対象となっています。

2019年にPOPs条約でPFOAが規制対象に指定されたことを受けて、日本では2021年に化審法の第一種特定化学物質に指定。これにより、同年10月から製造・輸入が原則禁止となっています。

PFHxS（ペルフルオロヘキサンスルホン酸）

PFHxSは、撥水・撥油性があり、PFOSの代用品として使用されてきた化学物質です。日本では2024年の化審法改正により、PFHxS及びその異性体と塩が第一種特定化学物質に指定され、製造及び輸入の原則禁止、使用の制限などが施行されました。

【関連記事】PFHxSとは？輸入が禁止される理由と対策について 

一部の国で規制対象になっているPFAS

女性科学者2

1万種類以上あるPFASの中には、POPs条約で規制対象とされている化学物質以外にも、世界各国で独自の規制制定や規制追加の議論が行われているものがあります。

ここでは、世界各国で規制され始めているPFASの中でも、代表的な8つの化学物質について解説します。

PFHxA（ペルフルオロヘキサン酸）

PFHxA（ペルフルオロヘキサン酸）は、特にPFOAの代替品として幅広く使用されている化学物質です。PFOAと比較して健康への影響が少ない代替品として、衣料品、レインコート、工業用洗浄剤など、多岐にわたる用途で使用されてきました。

しかし、EPA（米国環境保護庁）が実施した調査によると、PFHxAの曝露を受けた場合に、肝臓などへの影響を引き起こす可能性が高いと示唆されています。

米国では、飲料水におけるPFAS含有量の目標値としてPFHxAも対象物質になっています。また欧州では、2024年にREACH規則（化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則）の附属書XVIIに追加されることが決定しました。

【関連記事】PFHxAはどのような化学物質？使用用途や規制動向 

GenX（ジェンエックス）

GenXとは、PFOAを使用せずに高性能フルオロポリマーを製造するために用いられる技術の商標名です。

GenXには、PFASの一種であるHFPO-DA（ヘキサフルオロプロピレンオキシドダイマー酸）という化合物が含まれているため、GenXもPFASの一種に含まれます。

2021年にEPAが発表した毒性評価によると、動物実験において肝臓や腎臓などへの健康影響について示唆されています。

PFNA（ペルフルオロノナン酸）

PFNAは、撥水性などの特性を活かして、幼児用寝袋、スポーツウェア、アウトドアウェアなどに使用されてきた化学物質です。

カナダ連邦政府が公開している資料「Drinking water screening value for perfluorononanoic acid (PFNA) – Technical summary」では、PFNAが以下のような健康影響との関連性があることが示唆されています。

肝臓及び腎臓機能の低下
脂質血症
免疫機能

2024年時点では、日本でPFNAは規制されていませんが、米国やデンマークなどの国では飲料水に含まれるPFNAの目標値が設定されています。

PFBS（ペルフルオロブタンスルホン酸）

PFBS（ペルフルオロブタンスルホン酸）は、PFOSを生成するための前駆体物質として利用されることの多いPOSF（パーフルオロオクタンスルホニルフルオリド）という化学物質の製造中に副産物として生成され、消費者製品に不純物として存在していた化学物質です。

国際的にPFOSが規制され始めた後に、PFBSが代替物質として使用されてきました。EPAが公開しているPFBSのファクトシートでは、PFBSの曝露が甲状腺、発達、腎臓への影響との関連が特定されたことが指摘されています。

米国では飲料水中に含まれるPFBSについて、PFNA、PFHxS、PFBS、及びHFPO-DAの混合物においてHazard Index（ハザード・インデックス）が定められています。

また、EUのREACH規則でもSVHC（高懸念物質リスト）にPFBSが含まれており、一定の濃度を超える製品の生産者または輸入者は、ECHA（欧州化学品機関）に対する届出や安全データシート（SDS）などを提出しなければいけません。

PFBA（ペルフルオロブタン酸）

PFBA（ペルフルオロブタン酸）は、主に汚れ防止布地や紙製食品包装、カーペットに使用されるPFASの一種です。

EPAが開発したデータベース「IRIS（Integrated Risk Information System）」では、PFBAが人の健康に与える影響として、甲状腺や肝臓、発達に影響が出る可能性が指摘されています。

POPs条約や日本の化審法では、PFBAは規制対象になっていませんが、デンマークとドイツでは、飲料水に含まれるPFBAについて目標値が設定されています。

その他各国で規制対象になっているPFAS

女性科学者3

ここまでに紹介したPFAS以外にも、各国で規制され始めているPFASが複数あります。

欧州では2021年にREACH規則の附属書ⅩⅦの内容の改正が公布され、炭素数が9〜14のペルフルオロカルボン酸（C9-C14 PFCAs）が規制されています。

この対象となる化学物質は以下の通りです。

C9：PFNA（ペルフルオロノナン酸）
C10：PFDA（ペルフルオロデカン酸）
C11：PFUnDA（ペルフルオロウンデカン酸）
C12：PFDoDA（ペルフルオロドデカン酸）
C13：PFTrDA（ペルフルオロトリデカン酸）
C14：PFTeDA （ペルフルオロテトラデカン酸）

上記の化学物質は、日本国内の法律では規制が進められていません。しかし、欧州や米国の規制動向によっては、今後規制対象になる可能性もあります。

各PFASの動向をチェックしておきましょう

日本ではまだ規制対象になっていない化学物質も、世界の動向に合わせて今後規制される可能性はあります。

規制が始まった際に慌てて対策するのではなく、規制内容をあらかじめ予測して早めに対策案を検討しておくことが重要です。

現在規制されているPFASだけでなく、PFASに含まれる化学物質の特徴や各国の規制動向について注視しておきましょう。

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社

ラボラトリー事業部　POPsグループ

PFAS・PCBチーム　緒方駿

<経歴>

2017年日本分析化学専門学校生命バイオ分析学科卒業
卒業後、リンパ球バンク株式会社に入社し、ANK療法に必要な細胞の培養などを行う。
その後2019年から田村薬品工業株式会社にて医薬品の理化学試験、微生物試験及びバリデーション取得などに従事。
2022年よりユーロフィン日本環境株式会社でPFAS分析や分析法導入などを行う。

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