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PFOSとはどんな物質なのか?人体への影響も含めて解説

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投稿日:2024年4月24日(2025年4月3日更新)

若い女性の研究者

残留性有機汚染物質の拡散が深刻化し、世界中で規制強化の動きが加速している物質の一つが、PFAS(有機フッ素化合物)です。

PFASの一種であるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)は、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)と並び、環境や人体への影響が考えられる化学物質と報道されています。

しかし、PFOSの有害性や人体への影響について、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、PFOSの特徴や国内での規制内容、規制に至るまでの社会背景について解説します。

 

INDEX

 

 

 

PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とは

PFAS 分析

PFOSは、PFAS(ピーファス)と呼ばれる有機フッ素化合物の一種であり、正式にはペルフルオロオクタンスルホン酸と呼ばれています。

PFASは炭素原子にフッ素原子が強力に結合した構造を持っており、自然界に存在しない人工的な化学物質も多く含まれています。

PFASは1万種類以上ありますが、その中でも撥水性・撥油性に優れる特性から様々な用途で使用されてきた化学物質がPFOSとPFOAです。

加工や仕上げ処理に使用することで工業製品の性能を向上させる性質を持つため、工業・産業分野で広く普及しました。

PFAS全体の特徴や規制動向について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?問題視される理由や具体的な規制を解説

PFAS

 

 

PFOSの主な使用用途

PFOSとは

PFOSは「C8F17SO3H」という分子式で表される化学物質で、製造条件の厳しい半導体の製造や電子機器の製造工程で使用されてきました。

代表的な用途として、具体的な用途は、半導体用反射防止剤・レジスト、金属メッキ処理剤、泡消火薬剤などが挙げられます。

 

PFOAとPFOSの違い

PFASの種類

PFOSとPFOAはいずれもPFASの一種であるものの、化学物質としての基本的な性質は異なります。大きな分類として、PFOSがスルホン酸群、PFOAがカルボン酸群に属しており、それぞれ類似する代替物質があります。

また、PFOS・PFOAを含めたPFAS全体の性質として、結合する炭素の数に応じて様々な特徴が現れることが挙げられます。炭素鎖の数が少ないものを短鎖PFAS、多いものを長鎖PFASと分類する場合もありますが、現状明確な定義はありません。

公益財団法人水道技術研究センター・土壌環境センターが発表した資料の見解によれば、「炭素数8以上のPFCAと炭素数6以上のPFSAを長鎖、炭素数7以下のPFCAと炭素数5以下のPFSAを短鎖とする」としています。

PFOS・PFOAの特徴や用途の違いについては、下記の表を参照してください。

 

項目  PFOA PFOS
化学式 C8HF15O2 C8F17SO3H
特徴 特に撥水性に優れている 特に耐熱性、耐薬品性に優れている
主な用途 繊維
医療
電子基板
自動車
食品
包装紙
石材
フローリング
皮革
防護服
水撥油剤
界面活性剤
半導体用反射防止剤
金属メッキ処理剤
水成膜泡消火剤
殺虫剤
調理用器具のコーティング剤

 

日本におけるPFOSの規制内容

日本においてPFOSは、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)により2010年4月1日から一部用途を除く製造・使用・輸出入が原則禁止されています。
また、2018年2月に行われた化審法の改正では例外用途の使用も廃止され、国内では全ての用途で製造・製品への使用が禁止されています。
2025年1月時点では、PFOAやPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)も化審法の第一種特定化学物質に指定されており、同様に製造・使用・輸出入が禁止されています。
そのため、これから製造・輸入される製品に規制対象のPFASが使用されることはありません。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)の規制対象物質とは?主な種類や使用用途を解説

科学技術の研究

 

 

PFOSが及ぼす人体への影響

PFAS

PFOSに代表される一部のPFASは、人体への影響が懸念されています。例えば、コレステロール値や発がん性との関係性にまつわる研究が進められています。ただし、現時点で人体への影響に関して詳細は明らかになっていません。

 

PFOSを体に取り込むとどうなるのか

PFOSについては、各国の研究機関による実験や調査データによって、人体の健康に影響を与える可能性が示唆されています。

WHO(世界保健機関)が管轄するIARC(国際がん研究機関)によれば、PFASのうち、PFOA(パーフルオロオクタン酸)は「グループ1(ヒトに対して発がん性がある。)」に、PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)は「グループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある。)」に分類されています。

また、動物実験では肝機能障害や仔動物の体重減少が、人においてはコレステロール値の上昇、発がん、免疫系等への影響など、人体や生物に対してなんらかの影響が起こりうることを指摘する調査結果もあります。

ただし、明確な健康リスクを示す証拠については研究データが少なく、解明されていない部分が多いのが現状です。

2025年1月時点では、日本国内においてPFOSが主たる原因と断定された健康被害の事例は確認されていません。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)の人体への影響は?

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PFOSという化学物質の問題点

PFOSを含むPFASには、残留性・高蓄積性・長距離移動性などの特性があり、一度環境中に排出されると除去が困難なことから「永遠の化学物質(フォーエバー・ケミカル)」と呼ばれています。

EFSA(欧州食品安全機関)の調査によれば、体内に摂取されたPFOSの推定半減期は約5年、スウェーデン・ヨーテボリ大学の調査では平均3.4年となっており、自然排出されるまでに長い期間がかかると推測されています。

 

【関連記事】一度体内に取り込まれたPFASはどうなる?健康への影響と排出プロセス

PFAS

 

 

PFOSの最新調査状況

PFAS 分析する男性研究者

PFOSを含むPFASの人体や環境に及ぼす影響の調査は、2000年代以降本格的に開始されました。世界においては、2015年以降に最も人体に及ぼす影響が強いと推測される飲料水の目標値が定められ、国連組織や各国の研究機関で更新され続けています。

 

PFOSを巡る世界の動向

各国が定めるPFOSとPFOAが絡む飲料水の目標値は、以下の通りに定められています。

機関 適用年 目標値・基準値 備考
WHO 2022年 PFOS・PFOA
各100 ng/L
PFOS、PFOAそれぞれの暫定ガイドライン値として提案。※PFAS全体については500 ng/Lとする方針
米国 2024年 PFOS・PFOA
各4 ng/L
PFOS、PFOAそれぞれの基準値を2024年4月に最終決定
EU(欧州連合) 2021年 全PFAS
合算500 ng/L
全PFASの目標値(※C4~13の各ペルフルオロスルホン酸及びペルフルオロカルボン酸、計20種類の物質については、100 ng/L)
イギリス 2021年 あらゆるPFASに対し
各100 ng/L
目標値はあらゆるPFASについて定めたもの(※超過時は濃度の低減化措置を要求)
ドイツ 2017年 PFAS20 種の合算
100 ng/L
2023年にPFOS、PFOA、PFNA、PFHxSの合計を20 ng/Lとする国内法が提案され、2028年に適用予定
カナダ 2023年 PFOS
600 ng/L
PFOA
200 ng/L
※健康基準の TDI等に基づく数値ではなく、BAT、モニタリングデータ、測定方法を考慮して設定

 

PFOSを巡る日本の動向

日本においては、2020年に厚生労働省が水道水中に含まれるPFOSとPFOA合算の暫定目標値として、50 ng/Lという基準を定めています。

2025年1月時点では暫定目標値や対象物質のPFASに変更はなく、2020年度の基準を元に水道事業者等の監督・指導・調査を行っています。

国内の水環境におけるPFOSとPFOAの調査は定期的に行われており、2019年には全国171地点でPFOAとPFOSの含有量を測定した結果、13都道府県の37地点において目標値の超過が確認されています。

また、環境省が公表した2022年の調査では、38都道府県の河川や地下水など1,258地点中の111地点にて超過が確認されています。

今後も定期的な調査が行われる中で、最新の研究報告や各事業者への対策共有、暫定目標値等の見直しが行われる可能性があるでしょう。

 

 

PFOSに関する諸問題の動向を正しく理解しよう

PFOSに関する諸問題は、2015年以降に調査と研究が本格化しました。人体への影響などの具体的な研究結果や対策は、これから進んでいくことが考えられます。

PFOSが含まれる可能性のある物質や製品、サービスに関わる機会がある方は、最新の情報や研究データ等の動向を注視する必要があるでしょう。

 

 

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記事の監修者

緒方さん

ユーロフィン日本環境株式会社

ラボラトリー事業部 POPsグループ

PFAS・PCBチーム 緒方 駿

<経歴>

2017年 日本分析化学専門学校 生命バイオ分析学科 卒業
卒業後、リンパ球バンク株式会社に入社し、ANK療法に必要な細胞の培養などを行う。
その後2019年から田村薬品工業株式会社にて医薬品の理化学試験、微生物試験及びバリデーション取得などに従事。
2022年よりユーロフィン日本環境株式会社でPFAS分析や分析法導入などを行う。

 

 

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