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飲料水のPFOS・PFOA基準値とは?規制内容と国内の検出状況を調査

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投稿日:2024年7月24日(2025年4月7日更新)

※ 本記事は「PFOSの基準値とは?規制内容と国内の検出状況を調査」を更新したものになります。

PFAS 水分析

PFAS(有機フッ素化合物)は、日本を含めた世界中で規制が強化されつつある化学物質です。特に水道水や河川、地下水等に含まれるPFASは、日本で独自の暫定目標値・指針値等を定めて管理しています。

しかし、全国各地で目標値を超えるPFASの検出事例が相次ぎ、国内における対策や目標値の見直し等、現在も様々な議論が続けられています。

そこで本記事では、PFASの中でも国内の法律・法令で目標管理対象になっているPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)における規制内容や、飲料水の暫定目標値について詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは?

PFASは、フッ素と炭素が結びついた構造を持つ有機フッ素化合物のうち、「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物」を総称したものです。炭素の数の違い等で同族体が複数存在し、PFASの種類は1万以上あると言われています。

その構造の違いで物性が異なり、中でも撥水・撥油性や熱・化学的安定性をもつPFASが、これまでに様々な分野で活用されてきました。具体的な用途例は、以下の通りです。

 

PFASの用途例
撥水・撥油剤、界面活性剤、半導体用反射防止剤、金属メッキ処理剤、水成膜泡消火剤、殺虫剤、調理用器具のコーティング剤など

 

しかし、PFASには環境中で分解されにくい性質があるため、蓄積によって地球規模で広く残留していることが懸念されています。人の健康や動植物の生息・生育に影響を及ぼす可能性が指摘されており、国内外でPFASに対する規制等の対策が進められているのです。

人の健康影響についても、多くの研究機関等で国際的に調査が進められており、一部のPFASについては、肝臓や甲状腺機能、出生児、発がん性等への影響が指摘されています。

ただし、食品安全委員会が2024年に公表した健康影響の評価書によると「科学的知見や証拠が不十分」等の理由で、関連性については断定されていません。

 

 

日本の化審法で規制されているPFAS

男性技術員

化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)は、人の健康や動植物の生息・生育に影響を及ぼす恐れのある化学物質による環境汚染を防止するための法律です。

製造や輸出入、使用を原則的に禁止する規制を敷いており、PFASでは以下の3つが現在、化審法において第一種特定化学物質に指定されています。

 

  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

 

化審法でPFASが規制される背景には、日本が加盟しているPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)が関わっています。

POPs条約は、環境中での残留性や生物蓄積性、長距離移動性、人や生物への毒性が高いとされる化学物質に対し、製造及び使用の廃絶や制限等を規定した条約です。

2009年にPFOSが附属書B(制限対象)に、2019年にはPFOAが附属書A(廃絶対象)、続く2022年にはPFHxSが附属書A(廃絶対象)にそれぞれ追加され、日本でも化審法で規制される運びとなりました。

なお、化審法は主に製造や輸出入、使用について規制する法律です。飲料水におけるPFASの規制では、水道に関する枠組みでPFOSとPFOAが管理対象となっています。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)の規制対象物質とは?主な種類や使用用途を解説

科学技術の研究

 

 

飲料水と水質におけるPFOS・PFOA基準値の現状は?

PFAS 採水

日本では、飲料水として利用される水道水や、河川・海域等の公共用水域及び地下水について、PFOSとPFOAの暫定目標値・指針値等を設定し、全国的な調査を実施しています。

同じ水質管理でも、水道水と公共用水域では管理の仕組み等が異なるため、注意が必要です。

ここからは、水道水と河川・地下水それぞれにおける管理方法や最新情報について解説します。

 

水道水におけるPFOS・PFOAの暫定目標値

水道水に含まれるPFASについては、「PFOSとPFOAの合計値で50 ng/L以下の暫定目標値」を設定しています。

これは2020年に当時の所轄であった厚生労働省が、2つを水質管理目標設定項目に位置づけて設定したものです。ただし、水質管理上で注意喚起すべき項目の扱いであるため、法的効力はなく、水道事業者等に目標値以下となる管理や検査を要請するにとどまっています。

水道水の調査は全国各地で実施されており、2024年12月には、環境省と国土交通省が共同で行った水道水調査の最終結果が公表されました。

調査の対象期間は2020〜2024年(9月30日まで)で、結果は以下の通りです。

 

  • 調査対象期間に水質検査を実施したことがある事業数は、2,227事業
  • 調査対象期間内のいずれかで、暫定目標値を超過したのは14事業

 

ただし、年度別にみると2024年度(9月30日時点)では超過が0事業となっており、最新の検査では回答のあった全ての事業者等において目標値を下回っています。

さらに、これまでの調査結果等を踏まえて、PFASの水道対策に大きな動きがありました。同月に開催された水質管理に関する会議にて、「PFOSとPFOAを水質管理目標設定項目から、水道法に基づく水質基準項目へ引き上げる」改正案が議題に上がったのです。

水質基準項目へ引き上げられた場合、検査等が義務化され、法的効力をもつことになります。また「PFOSとPFOAの合計で50 ng/Lの暫定目標値」は、そのまま基準値へ採用するとの案も提示されました。

この改正案が決定したという報道もあり、2026年4月1日に施行される見込みです。

 

河川や地下水等のPFOS・PFOAの指針値

公共用水域と地下水に含まれるPFASついては、環境省が2020年に人の健康の保護に関する要監視項目として、「PFOSとPFOAの合計値で50 ng/L以下とする指針値」を定めました。

これらの水質に関する調査も全国的に行われており、2025年2月時点の最新情報によると、次のような調査結果が判明しています。

 

  • 2019~2022年度までの水質の調査地点は延べ2,735地点
  • その内、暫定指針値を超過したのは延べ250地点

 

調査では、主に都市部とその近郊で超過が確認される傾向が顕著でした。

なお、暫定指針値を超えた場合には、超過した水が飲用に利用されないように、都道府県等が環境省作成の「PFOS及びPFOAの対応の手引き」に基づいた対応を実施しています。

また、2023年にはPFOSとPFOAが、水質汚濁防止法に基づく指定物質へ追加されました。

水質汚濁防止法は、工場や事業場から公共用水域と地下へ排出、あるいは浸透する水を規制する法律です。PFOSとPFOAは、化審法で製造や輸出入等が禁止されていますが、保管等を行っている場合、事業者には「事故等による流出時の応急措置や届出」が義務づけられています。

 

 

世界のPFOS・PFOA基準値と日本の比較

日本以外の国においても、飲料水に係るPFOSとPFOAの基準値は設定されています。下記にPFAS規制を行う主要な国や国際機関の基準値を表にまとめました。

国内外の飲料水に係るPFOSとPFOAの目標値

参考: PFOS、PFOA に係る国際動向(第5回PFASに対する総合戦略検討専門家会議配付資料)|環境省

 

それぞれの国や機関においても、基準値の設定については多くの調査や議論が交わされています。

EPA(米国環境保護庁)では、飲料水について「PFOSとPFOAの合計値として70 ng/Lとする生涯健康観告値」を過去に設定していました。

その後「PFOSを0.02 ng/L、PFOAを0.004 ng/Lとする健康観告値」を暫定的に提案する等を経て、2024年に「PFOSとPFOAそれぞれに4 ng/L」とする規制値の発表に至ったのです。

また、ドイツでは現時点で「PFOSとPFOAそれぞれに100 ng/L」の暫定基準値が設けられています。しかし、2023年の法改正により、以下の基準値が今後適用される見込みです。

 

  • PFOSとPFOAを含む20種類のPFAS合計値として100 ng/L(2026年から)
  • PFOSとPFOAを含む4種類のPFAS合計値として20 ng/L(2028年から)

 

世界的に見れば、日本で設定されているPFOSとPFOAの暫定目標値や指針値は、厳格にみえます。しかし、他国に比べて規制の制定や改正が遅く、後追いの政策が目立つのも事実です。

また、他国がPFOSとPFOA以外のPFAS規制等の取り組みに積極的であるのに対し、日本におけるPFASへの対応は全体的に遅れている部分があると指摘する声もあります。

 

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PFOS・PFOAの基準値を正しく理解して情報を精査しましょう

日本では、水道水や河川、地下水等の環境において、PFOS及びPFOAの合算値で50 ng/Lという暫定目標値または指針値が設定されています。

これまでの水質調査では、多数の地点で暫定目標値・指針値を超えるPFASが検出され、都道府県等が対応を行ってきました。国内外の状況を受け、日本でもようやく水道水におけるPFASの取り扱いが改正され、法的な管理に引き上げられる見込みです。

PFASを取り巻く現状について正しく理解し、今後も規制動向に注意していきましょう。

 

 

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記事の監修者

eurofins

ユーロフィン日本環境株式会社
品質保証グループ

第三者分析機関としての信頼性や適合性を担保するために、品質システムの整備や監視活動に従事。特に、当社では分析実施項目の大部分でISO/IEC 17025の認定を取得し、PFASについてもISO/IEC 17025認定を取得しており、それら認定の維持管理を主要業務としている。また、国内外のグループ会社と連携した相互監査や技能試験評価、品質会議など、世界中に展開しているEurofinsグループの強みを活かした取り組みも実施。

 

 

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