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TRI(米国有害物質排出目録)とは?企業報告義務と情報公開の重要性

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投稿日:2024年9月30日

CHEMICAL

米国では有害化学物質のチェック及び情報公開を行うシステムとして、TRI(Toxic Release Inventory:米国有害物質排出目録)プログラムが運用されています。

このプログラムを通じて有害化学物質の使用削減に成功しており、2020年にはTRIのリストに一部のPFAS(有機フッ素化合物)が追加されたことで話題となりました。本記事では、TRIの詳細やTRIリストに記載されているPFASについて解説します。

 

INDEX

 

 

TRI(米国有害物質排出目録)とは

TRIは、環境や人体に有害な化学物質をまとめたデータベースであり、EPA(米国環境保護庁)によって運営されています。

TRIは環境汚染が深刻化する中、1986年に成立したEPCRA(緊急計画及び地域の知る権利に関する法律)の一部として導入されました。

TRIでは、企業がリストに記載されている化学物質を取り扱う際の排出量および放出削減・防止の取り組みなどの情報を収集して公開しています。

 

TRIの主な目的

TRIの主な目的は、環境や人体に重大な被害を及ぼす、もしくは及ぼす可能性があると推測される化学物質を監視し、情報公開を行うことで化学物質による被害から環境及び地域住民を守ることです。

リストに記載されている化学物質を取り扱う場合、企業は使用量や廃棄方法など必要な情報をEPAへ報告する義務があります。企業が化学物質を取り扱う際の透明性が高まることにより、一般市民や消費者が排出の実態を把握しやすくなります。

 

TRIによる企業への影響

TRIの導入によって企業は自社の有害物質の排出量を認識し、削減努力を求められるようになりました。

地域住民への情報公開が行われることで企業の責任意識が高まり、有害化学物質の排出削減や毒性の低い代替物質への切り替えを行うなど、環境保護や健康被害リスクの低減に繋がっています。

実際にアメリカでは、TRI導入後に有害化学物質排出量の大幅な削減に成功しています。

一方で、化学物質排出の報告は企業による自己申告であるため、情報の正確性には懸念が持たれています。また、報告要件は複雑であり、企業がTRIの内容を遵守することが業務上及びコスト面での負担になりやすい点など、運用上の課題も挙げられています。

 

 

PFAS(有機フッ素化合物)はTRIに記載

PFASはフッ素を含む有機化合物のグループであり、1万種類以上の化学物質が該当します。耐熱性や撥水性、耐油性などの特性を持つことから、これまでに食品包装やフライパンのフッ素コーティングなど様々な用途で使用されてきました。
化学的安定性が非常に高く、一度環境中に排出されたPFASは分解されにくい特性を有します。環境や人体に対する残留性の高さから健康への影響が懸念されています。
欧米では、予防原則(化学物質などの新技術が、環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする制度)に則して、PFASに関する規制が先行しております。
このため、研究結果などを踏まえて、下記のPFASがTRIに記載されております。

 

【TRIに記載されているPFASの一例】

  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFNA(パーフルオロノナン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

 

PFASは何種類記載されているのか

TRIには、有害化学物質として評価基準を満たした物質が記載されており、その数は年々増加しています。2022年以前には176種類のPFASが登録されていましたが、2022年の報告で新たに4種類が追加され、合計180種類のPFASがTRIに含まれています。

 

 

TRIプログラムの仕組み

歯車

TRIプログラムは、化学物質の有害性評価や規制の他にも多岐にわたる役割を担い、包括的な運用が行われています。主なポイントを以下にまとめます。

 

TRIプログラムによる報告対象事業者

TRIプログラムでは、有害な化学物質を扱う企業に報告義務が課されます。

TRIプログラムによってEPAに化学物質使用の報告を行う義務がある企業は、製造業や金属鉱業、発電事業など特定の産業セクターであり、従業員数が10人以上の企業です。

これらの企業がTRIに記載されている化学物質を一定量以上製造、加工、その他の方法で使用した場合に報告義務が生じます。

 

データの収集及び管理

TRIには約650種類の有害化学物質が記載されており、新たな物質が追加されることもあります。

企業から集められたデータはEPAによって収集され、オンラインデータベースとして管理・公開されています。

このデータは、政府や研究機関が環境保護政策の策定やリスク評価に活用しています。

 

収集データの公表は地域住民の知る権利を守るため

TRIプログラムによって公表されるデータは、地域住民の健康と環境を保護するための重要な情報源です。

有害化学物質の排出状況を公開することで、地域住民は自分たちの住む地域の環境リスクを理解しやすくなります。

過去アメリカでは、企業が排出する有害物質を公表しないことで地域住民が知らないうちに健康被害を受けた事例も確認されています。

TRIプログラムの情報公開は有害化学物質によるばく露のリスクを減らし、地域住民が積極的に地域の環境保護活動に参加するきっかけとなります。

 

 

TRIに報告が必要な情報

分析結果

TRIプログラムでは、有害化学物質を取り扱う企業がEPAへ報告義務のある情報が定められています。その内容とは、化学物質の種類と排出量、排出場所、さらに排出削減のための取り組みや技術対策です。排出場所に関しては空気中、水中、土壌中などを報告する必要があります。

 

PFASの報告も義務となっている

2020年1月1日に、PFOS、PFOA、PFNA、PFHxS等のPFASがTRIに追加されました。

これに伴い、リストに記載されている特定のPFASに関しては報告義務が生じ、一定量以上のPFASを製造、加工、使用、または排出する企業は、そのデータをEPAへ報告しなければならなくなっています。

なお、企業が報告したPFASのデータは、EPAのデータベースを通じて閲覧できます。

 

 

TRIによって米国の安全な社会の実現を目指す

EPAはTRIプログラムの適切な運用により、企業が使用するPFASをはじめとした有害化学物質の使用及び排出を把握し、環境汚染や健康への被害を抑えると共に、有害化学物質の使用量の削減に努めています。

また、情報の開示を行うことで地域住民やNGOなどの監視団体がPFASの汚染状況を監視できるようになり、健康被害の防止に役立てられています。

今後TRIに記載されるPFASの種類によっては、日本でのPFASの取り扱いや規制に影響を及ぼす可能性も考えられます。引き続きアメリカの動向に注視しつつ情報を集めることが重要です。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 高藤 晋さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ
セールス・マーケティングチーム

Manager 高藤 晋

<経歴>

2012年 University of Otago 微生物免疫学部卒
2015年 東海大学大学院 博士前期 修了
2019年 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム研究科博士後期課程修了
2019年 株式会社ベリタスに入社し、オルガノイド関連商材の展開に携わる。2024年より現所属。

オタゴ大学では、食品微生物など、東海大学ではトランスジェニック植物を使用したホルモン作用の解析、横浜市立大学では植物ホルモン化合物の定量分析などを行っていた。

 

 

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