PFOAフリーの鍋が注目される理由|素材の種類や安全性について学ぼう
投稿日:2024年8月8日
日本国内で市販されている鍋の中には、PFOAフリーと表記されている製品を多く見かけます。安心して使用できる調理器具の購入を検討している消費者の中には、PFOAフリー鍋が注目されている理由や、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)の概要について詳しく知りたい方が多くいると予想されます。この記事では、PFOAフリーの鍋について理解しておきたい素材の種類や、製品の安全性に関する知識を詳しく解説します。
INDEX
フッ素加工の鍋が危険と言われる理由は?
フッ素加工が施された鍋が危険だと言われるのは、調理の工程でコーティング剤が剥がれる可能性があることに理由があります。
さらに、フッ素加工に使用されるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)というフッ素樹脂は、世界的に規制の傾向が強まっているPFAS(有機フッ素化合物)の一種です。
鍋のフッ素樹脂の直接摂取による健康被害は確認されていないものの、フッ素加工の鍋が消費者から危険視されている要因の一つとなっています。
コーティングが口に入る可能性があるから
鍋のフッ素コーティング剤として使用されているPTFEは、金属のヘラで擦ったり、研磨剤入りのスポンジで擦ったりするだけで剥がれ落ちます。
擦らなくても使用期間が長くなっていく中で劣化し、剥がれ落ちてしまうこともあり、知らないうちに食品に入り込み、食事と一緒に摂取する可能性があります。
しかし、2022(平成24)年11月に更新された食品安全委員会が公開しているPTFEのファクトシートでは、直接体内に取り込んでもいかなる毒性反応も示さないことが報告されています。
ただし、315〜375 ℃に加熱した際に生じる生成物を吸引した場合には、ポリマーヒューム熱と呼ばれるインフルエンザと似た症状を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
PFOAとフッ素樹脂を混同している可能性があるから
現在、鍋のフッ素コーティング剤として使用されている主な化学物質はPTFEですが、
かつては調理器具のコーティング剤としてPFOA(ペルフルオロオクタン酸)が広く使用されていました。そのため消費者からは、フッ素加工に使用している化学物質がFOAだと勘違いされている可能性があります。
PFOAは、その有害性が問題視され、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)によって国内での製造及び使用、輸入が禁止されているPFASの一種です。
PFOAのコーティングとPTFEのコーティングを混同しないように注意しましょう。
そもそもPFOAってなに?
PFOAは通称「ピーフォア」と呼ばれる化学物質で、PFASの一種です。その物性を活かして、過去にはフッ素ポリマー加工助剤や界面活性剤などに使用されてきました。しかし現在では世界的な規制が進み、国内では2021年に化審法によって製造・使用が禁止されました。
PFOAの特徴
PFOAは、撥水性・撥油性、熱・化学的安定性の高さなどが特徴的な化学物質です。また、難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質も持ち併せていることから、現時点でも世界中に広く残留していることが確認されています。
環境省が発表した研究データによると、環境中に放出されたPFOAは長期間残存し続け、人間や動物の健康に影響を与える可能性があることが指摘されています。
PFOAが使われていた製品
PFOAはその物性を活かして、日常生活で馴染み深い製品に広く使用されてきました。かつてPFOAが使用されていた製品として代表的なものは、以下の通りです。
- フッ素コーティング剤
- 繊維
- 医療機器
- 電子基盤
- 自動車部品
- 食品包装紙
- 石材
- フローリング
- 皮革
- 防護服
ただし、現在は国内でPFOAを製造・使用することが化審法で禁止されているため、上記製品の製造用途としてPFOAが使用されることはありません。
PFOAについてはこちらの記事もご覧ください。
PFOAフリーの鍋を選ぶ理由
現在国内で販売されている鍋は、製造過程でPFOAが意図的に含有されることはありません。
ただし、PFOAフリーと記載されている商品を製造・販売しているメーカーは、まだ規制の対象になっていないPFASに対しても意図的な含有やコンタミネーション(製造工程における意図しない化学物質の混入)に注意しながら製造している可能性があります。
より安心・安全な商品を購入したいという消費者心理が働いた場合、PFOAフリーの製品が選ばれる可能性は高いでしょう。
フッ素加工されていない鍋とは?
フッ素加工された鍋は、素材のくっつきにくさや少ない油で調理できる点が便利ですが、前述した通りPFASの一種であるPTFEが使用されています。
PTFEは現時点で人体への直接的な毒性は確認されていないものの、PFASの含有を気にする消費者は一定数いると予想されます。それらのニーズに応える商品としては、PTFEを使用していない鍋があります。
フッ素加工されていない鍋の代表例としては、以下の3つが挙げられます。
- 鉄製
- セラミック
- ホーロー鍋
鉄鍋は熱伝導率が高く、高火力での調理に向いています。セラミック加工を施された鍋は、汚れがつきにくいので手入れが簡単に行える特徴があります。ホーロー鍋は、鉄やアルミの上にガラス製の釉薬が塗られており、耐久性の高さが特徴的な鍋です。
鍋を買う時はPFOAフリー商品か確認しましょう
PFOAは、撥水・撥油性、熱・化学的安定性の高さから、調理器具のコーティング剤として広く使用されてきました。しかし、人間を含む生物に対する影響が懸念されたことで、現在は国内での製造・使用・輸入が禁止されています。
そのため、現在日本で流通・販売している鍋には、PFOAは含まれていません。ただし、より安心して使用できる鍋を購入したいというニーズがあった場合は、PFOAフリーと表記された鍋を検討するのも選択肢の一つになるでしょう。
PFOAの特徴や規制の動向について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
【関連記事】PFOAとは?人体への影響や各国の動向、法規制の情報について
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記事の監修者
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【参考資料】
- ファクトシート フッ素樹脂(概要)<最終更新:平成24年11月>|食品安全委員会
- PFOS、PFOA に関するQ&A(2024年8月時点)|環境省
- 製品含有化学物質のリスク評価ペルフルオロオクタン酸(令和元年9月)|独立行政法人製品評価技術基盤機構|厚生労働省