PFOSフリー製品の特徴は?選ばれる理由と代表的な製品を紹介
投稿日:2024年8月8日
世界中で製品への使用規制が議論され続けている残留性有機汚染物質の一つが、PFAS(有機フッ素化合物)です。
近年ではPFASの一種であるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)が人体へ悪影響を及ぼす可能性が指摘されており、調理器具や化粧品などの製品の一部に「PFOSフリー」と表記された製品も販売され始めています。
しかし、実際にPFOSフリーと記載された製品の具体的な特徴については、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、PFOSフリー製品の解説や、代表的な製品の事例を紹介します。
INDEX
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とは?
PFOSは、PFASと呼ばれる有機フッ素化合物の一つです。有機フッ素化合物とは、骨格としている炭素原子にフッ素原子が結合した化学物質で、自然界に存在しない人工的な化学物質です。
PFASは1万種類以上ありますが、その中でもPFOSは撥水性、撥油性、耐熱性、化学的安定性が高い特徴を持っているとされています。高い汎用性・機能性と加工に適した性質を持ち併せていることから、PFOSは様々な製品に使用されてきました。
PFOSが人体に与える影響についても研究が進められており、ヒトの健康に関してはコレステロール値の上昇、発がん、免疫系等との関連性が報告されています。
一度環境中に放出されたPFASは自然界で分解されにくく、長い期間残存し続けるPFASの性質が問題視されています。
予防的な取り組み方法の考え方に立ち、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)によって、PFOSは2009年に、PFOAは2019年に廃絶等の対象とすることが決定されています。
国内においても化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)に基づいて、PFOSは2010年に、PFOAは2021年に製造・輸入等を原則禁止としています。
PFOSについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】PFOSとはどんな物質なのか?人体への影響も含めて解説
PFOSフリー製品が販売される理由
現在国内においては、製品中にPFOSを含まないことを証明したPFOSフリー製品が販売され始めています。日本では化審法によってPFOSの製造・輸入等を原則禁止としているにもかかわらず、あえてPFOSフリーと表記した製品が増えているのはなぜなのでしょうか。ここでは、PFOSフリー製品が販売されている理由について解説します。
過去にPFOSを使用した製品が販売されていた
PFASの中でも高い汎用性を誇る化学物質であるPFOS・PFOAは、過去に幅広い用途で製品製造に使用されてきました。PFOSにおいては、半導体反射防止剤、金属メッキ処理剤、泡消火薬剤などに使用された事例があります。
PFOS・PFOAをはじめとした一部のPFASの毒性や環境への影響については、国民の関心も徐々に高まっている傾向があります。
過去に様々な場面で使用されていた経緯があることから、日本国内の消費者が安心して購入できるように、あえてPFOSフリーの記載をしているものと推測できます。
PFAS MEDIAにおけるPFASフリーの基準
PFASフリーと記載されている商品は国内外に数多くありますが、その表記の基準については曖昧な部分も多いのが実情です。
仮にPFASフリーと記載されていたとしても、会社によっては「国内(自国)の法律で規制対象になっているPFASを含んでいない」という意味で使用している場合もあります。
PFASフリーの記載ルールについては国際的な規定がまだなく、必ずしも「1万種類以上あるPFASの全てを含んでいない」という意味ではないため注意しましょう。
PFAS MEDIAでは、製品におけるPFASフリーの基準について、以下のように定義しています。
PFAS MEDIAにおける「PFASフリー製品」の定義 | |
完成した製品、および製造工程において、REACH規則・POPs条約・化審法で規制されている9項目と、今後規制されるPFHxAの計10項目が含まれていないこと。 〈10項目〉 PFOA、PFNA、PFDA、PFUnA、PFDoA、PFTrDA、PFTeDA、PFHxS、PFOS、PFHxA |
PFOSフリー製品の代表例
PFOSを含むPFASフリー製品の具体例として、調理器具や化粧品、衣類などが挙げられます。
日本では先述の通り、表記の基準については曖昧な部分も多いのが実情です。
今後、PFAS MEDIAにおける「PFASフリー製品」の定義に則った具体的な商品を紹介していきますが、ここでは、米国のグリーンサイエンス政策研究所とノースイースタン大学の社会科学環境保健研究所が運営する「PFAS Central」を参考に、PFASフリー製品を販売する会社の代表例を見ていきましょう。
調理器具など
PFASは調理器具の性能を高めるために使用されることも多く、フライパンや使い捨て容器の撥水・撥油コーティング剤としても使用されるケースがあります。
調理器具などのPFASフリー製品を販売する会社 |
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テイクアウトパッケージ |
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ノンスティック調理器具 |
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使い捨て食器(カップ、皿、ストロー、ボウル) |
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家電製品 |
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引用:PFASフリー製品|グリーンサイエンス政策プロジェクト
化粧品など
化粧品やパーソナルケア製品などにもPFASは使用されます。
化粧品やパーソナルケアのPFASフリー製品を販売する会社 |
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小売業者 |
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メーカー |
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デンタルフロス |
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応急処置 |
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生理用品 |
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引用:PFASフリー製品|グリーンサイエンス政策プロジェクト
衣類・靴など
PFASは一般消費者にとって身近な衣類や靴などの日用品にも数多く使用されてきました。
衣類・靴などのPFASフリー製品を販売する会社 | ||
普段着 |
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作業着 |
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靴 |
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引用:PFASフリー製品|グリーンサイエンス政策プロジェクト
PFOSフリーの意味を理解して製品を選択しよう
PFOSフリーの他にも、PFOAフリーやPFASフリーと記載されている製品があります。PFOS・PFOAはどちらもPFASの一種ですが、それぞれは異なる化学物質です。
PFOSフリー、PFOAフリー、PFASフリーと記載されている製品では、それぞれ意味が異なる可能性があることに留意する必要があります。
また、どのような基準で製品にPFASフリーと記載するのかについては、まだ世界で共通のルールが決められていません。そのため、仮に購入した商品にPFASフリーと記載されていたとしても、1万種類以上あるPFASを全く含んでいない製品とは限りません。
PFOS・PFOA以外の代替物質についても日々研究が進められているので、その動向を注視しながら、現時点での製品を選ぶ際の判断材料の一つにすると良いでしょう。
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記事の監修者
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