生理用下着にPFASが含まれる可能性は?消費者調査と製品を巡る動向
投稿日:2024年9月6日
米国では近年、大手メーカーが販売していた生理用下着にPFAS(有機フッ素化合物)が含まれていた件が問題になりました。このニュースを耳にして、生理用下着にPFASが含まれる可能性や対策などについて気になる方も多いでしょう。
この記事では、米国で話題になったニュースの詳細や原因について紹介しつつ、生理用下着にPFASが含まれる可能性や対策について解説します。
INDEX
PFAS(有機フッ素化合物)とは?
PFASとは、有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称した化学物質です。近年、米国やEU、日本などの国でPFASを使用した製品の製造・輸入・使用に関する規制が強化傾向にあります。
ここでは、PFASの特徴や世界的に規制が進められている理由について解説します。
PFASの特徴
PFASと呼ばれる化学物質は1万種類以上もあるとされており、炭素鎖の長さによって大きく物性が異なります。中には、撥水・撥油性、熱・化学的安定性などの物性を示すものがあり、過去には撥水剤や半導体用反射防止剤などの製造過程で使用されてきました。
PFASは、難分解性、高蓄積性、長距離移動性という特徴を持っており、世界中に広く残留しているのも特徴です。
世界的にPFAS規制が進んでいる理由
PFASが人の健康に及ぼす影響について、世界中で研究が進められています。
2024年6月に食品安全委員会が公開した「有機フッ素化合物(PFAS)評価書(案)」では、肝臓へダメージがあることを示す血清ALT値の増加や、高脂血症の原因にもなる血清総コレステロール値の増加などへの関与が否定できないと結論付けられました。
PFASは、人の健康へ悪影響を及ぼす可能性があり、世界中に残留していることから、米国やEU、日本などの国で製造や輸入に対する規制が強化されています。
米国でPFAS含有の生理用下着が話題に
2020年に米国のある企業A社が販売する生理用下着から、高濃度のPFASが発見されたことが問題になりました。
この企業は、PFASが検出された製品をオーガニック製品として販売していたことから、消費者を誤解させたとして集団訴訟問題にまで発展しています。
このニュースは米国を含む多数のメディアで取り上げられ、製品におけるPFAS含有の事例として世間の注目を集めました。
PFAS含有の生理用下着が話題になったと考えられる理由
米国の企業が販売する生理用下着にPFASが含有されていた件について、なぜこれほどまで世間の注目を集めたのでしょうか。その理由は、PFASの特徴と生理用下着という製品の性質が大きく関係していると推測されます。
PFASは健康に悪影響を与える可能性がある
PFASが健康に与える影響については、世界中で研究が進められています。未だに明確になっていない部分が多いものの、2024年6月に食品安全委員会が公開した「有機フッ素化合物(PFAS)評価書(案)」では、以下の影響との関連は否定できないと評価されています。
- 肝臓へダメージがあることを示す血清ALT値の増加
- 高脂血症の原因にもなる血清総コレステロール値の増加
- 出生体重の低下
- ワクチン接種後の抗体応答の低下
上記の研究の他、動物実験においては発がん性などの影響も指摘されていますが、人間にも当てはまるかは現時点では判断できないと結論づけられています。
生理用下着はデリケートな部分に接触するから
PFASの曝露経路については、経口摂取や粉塵を吸入することによる曝露が主な経路とされています。さらに、一部の研究では経皮曝露(皮膚接触を通じて化学物質を体内へ取り込むこと)のリスクについても指摘されています。
消化器管や呼吸器官という言葉からも分かる通り、人間の体内は管のような構造をしています。口が入口ならば膣や肛門は出口に該当し、これらは体外から体内へと直接繋がっている重要な器官であると言えます。生理用下着はそのような部位に接していることから、曝露リスクがより高くなると考える方も一定数いるでしょう。
デリケートな箇所に密着する生理用下着にPFASが含まれていたという事実に対して、不安を感じてしまう消費者が多かったことも、この問題が注目された理由の一つです。
生理用下着を扱う他企業のPFASへの対応
米国で生理用下着から高濃度のPFASが検出された問題はあくまで一例ですが、その前からもPFASを問題視する声はあり、世界的企業も対策を講じています。
日本を代表する世界的衣料品メーカーであり、生理用下着なども取り扱うファーストリテイリンググループは、生産工程におけるPFASの使用全廃を目標に掲げ、PFASの代替品の開発を推進。2017年秋冬シーズンまでにPFASの使用を全廃しました。
PFASの有害性が消費者に認知され始めたことでメーカー側も対応を開始しており、生産工程における脱PFASの流れは今後も強まっていくことが推測されます。
PFASフリー製品とは
PFASフリー製品とは、原材料や製造工程でPFASを含まない製品のことです。生理用下着からアウターまでの衣料品や、フライパンなどの調理器具をはじめとして、最近では様々な業界でPFASフリー製品が増えてきています。
消費者のPFASに対する意識が高まっていることから、今後もPFASフリー製品は増加していくと予測されています。
PFASフリー製品の事例
たとえば、生理用下着を販売し、PFASフリーを自社の声明として発表しているメーカーの代表例として、以下の企業が挙げられます。
- Aisle
- Cora
- Rael
- Saalt
最近では日本でも数多くのPFASフリー製品を目にしますが、実際はPFASフリーの定義は曖昧です。
1万種類以上あるPFASを一切使用していないものをPFASフリーと定義する製品もあれば、国内の法律で規制されているPFASに限り使用していないものをPFASフリー製品としている場合もあります。
ちなみにPFAS MEDIAでは、以下10項目の化学物質を含まない製品をPFASフリー製品と定義づけています。
PFAS MEDIAの製品中におけるPFASフリー定義 | |
完成した製品・製造工程に、REACH規則・POPs条約・化審法で規制されている9項目+今後規制されるPFHxAの計10項目が含まれていないこと。 〈10項目〉 PFOA、PFNA、PFDA、PFUnA、PFDoA、PFTrDA、PFTeDA、PFHxS、PFOS、PFHxA |
生理用下着を購入する際はPFASに注意しましょう
米国では生理用下着から高濃度のPFASが検出されたニュースが問題となり、集団訴訟にまで発展したケースがあります。
数ある生活用品の中でも、特に生理用下着はデリケートゾーンに触れる製品であり、PFASの曝露リスクを心配する方もいるでしょう。
消費者のPFASに対する意識が高まっていることから、PFASフリー製品の開発・販売に着手する企業も増加しつつあります。
製品製造とPFAS規制を巡るニュースから情報を収集し、生理用下着をはじめとした身近な製品に含まれるPFASに引き続き注意しましょう。
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記事の監修者
ユーロフィン日本環境株式会社 第三者分析機関としての信頼性や適合性を担保するために、品質システムの整備や監視活動に従事。特に、当社では分析実施項目の大部分でISO/IEC 17025の認定を取得し、PFASについてもISO/IEC 17025認定を取得しており、それら認定の維持管理を主要業務としている。また、国内外のグループ会社と連携した相互監査や技能試験評価、品質会議など、世界中に展開しているEurofinsグループの強みを活かした取り組みも実施。 |
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【参考資料】