お客様の声を第一に。製品分析のプロが語る、ユーロフィンが選ばれる理由
環境や人体へ与える影響の大きさから、PFAS(有機フッ素化合物)の規制のあり方が世界各国で議論されています。環境、製品、食品など多くの領域で化学物質の分析を行っているユーロフィンでも、新たな分析法を導入しながら、増加するPFAS分析の依頼に対応しております。今回は製品領域におけるPFAS分析の動向について、ユーロフィングループの一つである「ユーロフィン・プロダクト・テスティング」で分析グループを率いる新藤さんと越澤さんにお話を伺いました。
プロフィール
ユーロフィン・プロダクト・テスティング株式会社
プロダクト・テスティング事業部 テストラボラトリー
マネージャー
新藤 勇樹
2009年 大学卒業後、日本環境株式会社(後のユーロフィン日本環境)に入社。RoHS分析等の製品中の有害化学物質分析に携わる。
2012年よりユーロフィン・プロダクト・テスティング株式会社に転籍し、同様の分析を続けつつ試験法の開発、効率化を担当。2019年より試験所の管理者業務及びISO17025の維持管理、認定範囲拡大を担う。
ユーロフィン・プロダクト・テスティング株式会社
プロダクトテスティング事業部 テストラボラトリー
シニアケミカルアナリスト
越澤 孝博
2015年 ユーロフィン・プロダクト・テスティングに入社。生活用品や工業製品中の規制物質の定量分析に従事。受託品の分析、試験法の導入・開発を担当。
数百種類の製品分析を実施。ユーロフィン・プロダクト・テスティングの役割とは
ーーユーロフィン・プロダクト・テスティングの概要について教えてください。
新藤:ユーロフィン・プロダクト・テスティングは、ユーロフィングループの企業の一つです。
日本で活動するユーロフィンは、21のグループ企業から構成されており、弊社ユーロフィン・プロダクト・テスティングでは製品中に含まれる有害物質の分析を行っています。
ーーユーロフィン・プロダクト・テスティングで新藤さんと越澤さんが担当している役割について教えてください。
新藤:私はラボラトリーマネジャーとして試験所運営の責任者を務めており、分析結果に対する最終的な承認や新しい分析法の導入の検討などを行っています。そして、ISO17025の認定を受けているのでその品質システム上で技術管理者も担っており、越澤には技術管理者代理を任せています。ISO17025とは、ISO(国際標準化機構)が定める国際的な規格で、第三者認定機関の審査によって正確な検査・分析・測定を行う能力があることを認められた企業にのみ与えられる認定です。
越澤:そうですね。分析を行うグループの組織図としては、新藤の直轄に私がいて、その下に分析を担うメンバーがいる形ですね。
新藤:越澤には、実はもう一つ重要な役割も担ってもらっています。弊社は厚生労働省の登録検査機関 (食品衛生法に基づく製品検査を代行できる機関)に認可されており、登録検査機関の体制下においては、越澤が検査の工程内検査や品質を管理する検査区分責任者を担当しています。
ーー登録検査機関には、どのような役割があるのでしょうか。
越澤:海外産の食品の容器や包装材などは、日本に輸入される際に検疫を受けます。
その際に安全性を証明するための書類を提出する必要があるのですが、その書類は当局の監査を受け、登録検査機関として認可された企業や機関しか発行できません。弊社では、その書類の発行を行い、輸入のサポートしております。
新藤: ISO17025認定及び登録検査機関としての認可、その両方を持っている試験所は、数多くないと思います。
製品分析に求められる専門知識と対応力
ーー製品分析では高い精度と信頼性が担保されているのですね。製品といっても様々な種類があると思いますが、具体的にはどのような製品を取り扱っているのですか。
新藤:製品とは、消費者が使用するもの全般を指します。そのため、対象範囲は非常に幅広くなっています。製品本体はもちろん、中に使用されている部品や原料も分析対象となります。
スマートフォンを例にとって説明すると、内部の基板などの電子部品や、スマートフォンのケースとして使用される樹脂部品、樹脂製品になる前の原料ペレットなどが分析の対象です。
越澤:製品全体の分析はもちろん、製造に使用される原材料、特定の部品のみの分析など、分析対象はお客様によって様々です。
ーー実際に分析できる製品の数は、どのくらいあるのでしょうか。
新藤:正確な数は把握できませんが、分析対象の製品は数百種類にも及びます。
ーーそれだけ種類が多いと、分析対象物質の見極めなど高度な専門知識が求められそうですね。お客様からはどのような要望を受けることが多いのでしょうか。
新藤:依頼を受ける製品で多いのは機械や電子部品などで、ヨーロッパへの輸出に関する有害物質の分析の需要が高いですね。
日本からヨーロッパに輸出する製品は、電子・電気機器の有害物質を制限する「RoHS指令」や、化学物質の製造、輸入、販売に関する「REACH規則」に適合した状態でなければいけません。
万が一適合していない場合は罰則を受けるため、多くの企業が細心の注意を払っています。そのため、これらの規制・規則への適合を確認する分析依頼が増えていると感じています。
ーー分析依頼を受ける中で大変な点はありますか。
新藤:分析を行う前には試料の採取箇所、採取方法に注意を払う必要があり、依頼を受ける製品の幅が広いため専門的な知識と経験が求められます。
また、樹脂や金属などの大きくて硬い素材や工業製品の素材等の場合、身近な工具では切断できないため、日常では滅多に見かけない大きさの工具を用いる場合もあります。大きい工具故に扱いが大変で、力仕事となる場合もあります。
越澤:私が入社したのは約10年前になるのですが、機械工具の大きさや種類の豊富さには驚かされました。
ーーそれは大変かつ地道な作業ですね。分析対象の製品を一部に絞るなど、工数を削減する取り組みを行う予定はありますか。
新藤:分析対象が増えることはあっても、意図的に減らすことはありません。弊社では、お客様から分析の依頼を受けた場合、できる 限り断らずに全てお受けするという姿勢を大切にしています。
たとえ難しい依頼であっても、お客様の要望には可能な限り全力で応えていく。その信念を貫いてきたことが、多くのお客様から継続的にご依頼いただいている理由なのかなと思います。
PFAS分析へのスピード感を持った取り組み
ーーPFASを巡る最新の動向について、感じていることを教えてください。日本でも飲料水など環境におけるPFASの影響に関心が高まっていますが、製品分析の領域で変化は感じますか。
新藤:ここ数年でPFASの分析依頼は増えてきたと感じます。特にPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)によって、世界的に原則的な使用と製造が禁止されているPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)の分析需要は増えていますね。
越澤:製品の種類にも変化があり、最近では私が入社した約10年前はそこまで多くなかった容器や包装の分析依頼が増えています。製品の製造・販売に携わる企業の担当者様は、自社製品にどの程度PFASが含まれているのかを把握したい需要があるのではと考えています。
ーー製品のPFAS分析では、具体的にどのような項目を測定できるのでしょうか。
越澤:弊社で扱っている代表的な測定方法は3つで、製品に含まれるフッ素の総量分析、LC-MSMSによるターゲット分析、さらに有機フッ素化合物のスクリーニング分析があります。
製品に含まれるフッ素の総量分析は、燃焼イオンクロマトグラフィーを使用した分析です。試料を燃焼させた時に発生するフッ化物イオンを測定します。比較的簡易な方法で、PFAS分析として考えると個別のPFASの含有量の特定はできませんが、フッ素の化学的形態、化合物としての溶媒への可溶性を問わず製品に含まれているフッ素の総量を調査できます。
ターゲット分析ではLC-MSMSによりPFASを個別に定量します。弊社で測定する項目はお客様の要望によって異なりますが、現在約40項目の測定が可能です。
有機フッ素化合物のスクリーニング分析は、製品に含まれるフッ素ではなく、有機フッ素化合物の含有を調べることができます。フッ素が入っていることがわかっている場合、それがPFAS由来なのかそうでないのかといった具合です。抽出可能な有機フッ素化合物を選択的に濃縮し、燃焼イオンクロマトグラフィーによりフッ素を測定します。
ーーお客様の要望に応えるために、複数の分析方法を導入されているのですね。
新藤: ターゲット分析では項目数に限りがあります。これは標準物質が存在しないことや、PFASとして定義される化合物が増えているからです。膨大なPFASの全体をカバーできないのが現実です。
従来弊社では燃焼イオンクロマトグラフィーでフッ素を測定していたことから、総フッ素分析をPFAS用にアレンジできないかと考え、方法開発にチャレンジすることになりました。
当初独自のアプローチで分析法を開発していましたが、その時期に、EPA(米国環境保護庁)が燃焼イオンクロマトグラフィーを用いた飲料水中のPFASスクリーニング法の規格ドラフトを公表しました。そこでその「EPA Method」を製品用にアレンジした分析法を開発し、有機フッ素化合物のスクリーニング分析を提供できるようになりました。
ーー「EPA Method」はアメリカで公表された分析法ですが、詳しい情報はどのように取得したのでしょうか。
新藤:ユーロフィングループでは他のグループ会社と情報交換を行う機会が頻繁にあるので、最新の分析法やPFAS規制の動向等の情報は共有されやすい強みがあります。ある会議の後に「EPA Method」の情報を教えてもらったことがきっかけで、分析法を参考にしようと考えました。
ーー「EPA Method」の導入に際して苦労したことや工夫したことはありますか。
越澤:製品に含まれるフッ素化合物が正しく検出されるように、抽出方法などを試行錯誤しました。あとは特定の有機フッ素化合物を濃縮する工程で、製品由来の夾雑物(きょうざつぶつ)が析出したため、対策や分析への影響についての検証に少し苦労しました。ただ、全体的には予定通りに進められたと思います。
ISO17025認定の取得で信頼性の高い分析を実現
ーー先ほど製品のPFAS分析に関しても、国際的な規格であるISO17025の認定を取得していると聞きました。その詳細を教えてください。
新藤:製品のPFAS分析のうち、PFOS、PFOA、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)の3項目ついては、ISO17025の認定を取得しています。
製品分析の領域において、PFAS分析でISO17025の認定を取得している企業はまだまだ少ないため、国際的に信頼性の高い分析を実施できることは強みの一つでもあります。今後の展望として現在測定できるPFAS全ての認定取得を目指しています。
「情報収集のネットワーク」「高品質」「扱っている製品の多様さ」が強み
ーーここまでのお話を伺っていると、製品分析における変化への対応スピードが早いという印象を受けます。情報はどのように収集しているのでしょうか。
新藤:社会情勢の変化によってお客様から求められることは変わってきますので、それに対応できるようにスピード感を持って、新しい分析法の導入を進めています。2003年にEUでRoHS指令の施行が決まった際にも、早い段階でその規則に則った分析を始めました。
越澤:社内ではPFASに関する情報を共有するプロジェクトも立ち上がっておりまして、グループ内で常に情報共有を図っています。
食品や血液に関する分析をグループ会社で取り扱っているので、製品とは遠い業界の動向も聞いています。製品分析における規格は、環境や人体などの領域で規格が定まった後に決まる場合が多いため、今後の動向を予測するのに参考にしています。
ーー今回のインタビューを振り返ってみて、ユーロフィン・プロダクト・テスティングの強みはどのような点にあるかと思いますか。
越澤:やはり扱っている製品の幅広さだと思います。
新藤:樹脂や電子部品がメインではあるものの、それにとらわれず、多くの試料の分析に対応していることですね。まずは目の前にあるお客様の要望に応えようとする姿勢は大切にしています。どのような分析依頼にも対応できる体制を作り、日々知見を蓄積している点は弊社の強みだと思います。
ーー最後に、PFASの分析を進めるうえで大切にしている姿勢を教えてください。
越澤:分析のスピードはもちろん大切にしていますが、品質ファーストの姿勢は今後も継続しようと考えています。幅広い製品分析を請け負いながらも、より正確で信頼性の高い分析を行っていく。ISO17025の認定などを取得しているのもその姿勢の一つです。
新藤:現在ISO17025の認定を取得しているPFASの分析項目は3つですが、それ以外にも40項目ものPFASの測定が可能です。これからも測定の需要が増えると予測しているため、認定を受ける対象物質の数を増やし、より信頼性の高い分析を行っていければと思います。
ユーロフィンのPFAS分析については
こちらからお問い合わせください
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