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PFAS・PFOS・PFOAの違いとは?物質の特性や使用例について

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投稿日:2024年7月24日

PFASとは

環境や人体に対して影響を及ぼす可能性が研究で明らかになったことで、ニュース等で耳にする機会が増えたPFAS(有機フッ素化合物)。1万種類以上の化学物質が該当するため、化学物質の用語について正しく理解できていない方もいるでしょう。今回はPFASの基本的な特徴に加えて、PFASの中でも特に規制の対象として話題に挙がることが多いPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)・PFOA(ペルフルオロオクタン酸)との違いについて分かりやすく解説します。

 

INDEX

 

 

PFAS(有機フッ素化合物)はPFOS・PFOAも含めた総称

PFASとは、有機フッ素化合物の総称です。炭素とフッ素が強固に結合する構造を持ち、1万種類以上の化学物質が該当すると言われています。
PFASの中でも人体や生物に対して毒性が懸念されている化学物質については、規制の対象となっています。
現在、世界各国で規制対象となっている代表的なPFASが、PFOS・PFOA・PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)です。

PFOS・PFOAは、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)によって、既に日本国内における原則的な使用・製造・輸入が禁止されています。また、2020年には、環境省の通知により飲料水における目標値がPFOA・PFOSを合わせて50 ng/Lと定められました。

PFHxSに関しては、2023年11月に化審法で第一種特定化学物質に指定。2024年2月より原則的な製造と使用が禁止となり、6月からは輸入も禁止となりました。今後の研究結果次第では、国内で規制対象となるPFASが増える可能性もあります。

 

PFASの全てに有害性が確認されたわけではない

PFASに該当する化学物質は膨大な種類があり、その全てに有害性があると確認されたわけではありません。例えば、フライパンの性能を上げるために施されるフッ素加工のフライパンには、PFASに該当するフッ素樹脂の一つであるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が使用されています。しかし、PTFEのは発がん性などは確認されていません。

一方で、PFOS・PFOAは、人体の健康に影響を与える可能性が懸念されています。WHO(世界保健機関)の外部組織であるIARC(国際がん研究機関)によると、PFOAに関しては人に対して発がん性が確認されており、PFOSに関しては発がん性の可能性がある化学物質に認定されています。

それ以外のPFASに関しては、世界的に研究や議論が活発になっていますが、未だに結論は出ていません。今後は環境・人体への影響がある可能性を考慮して、規制対象物質の拡大や制限の強化が行われていくと予測されています。

 

PFASが含まれていると勘違いされやすいもの

PFASが使用されていると勘違いされやすい商品の一つに歯磨き粉があります。歯磨き粉に使用されているのは無機フッ素化合物で、有機フッ素化合物とは化学構造が異なります。

無機フッ素化合物は自然界に存在する化学物質であり、有害性などは確認されていません。適量の摂取であれば、虫歯などの予防に役立ちます。

 

 

PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とは

装置が並ぶ部屋

ここからは、PFASの中でも多くの条約や法律で規制対象となっているPFOS・PFOAについて解説します。

PFOSは、日本国内で最初に使用と製造が禁止されたPFASです。工業製品の性能や耐久性を向上させる用途で使用され、国内では主に半導体、金属メッキ、液晶ディスプレイ、写真フィルムなど、様々な製品の製造・加工工程で使用されてきました。

2009年10月30日に化審法によって一部の用途を除く製造・輸入が禁止され、2018年には全面的に製造・輸入が禁止されました。現在は製造工程において意図的に含有されることはなくなっています。

 

工業製品の製造・加工などで使用されてきた

PFOSは製造条件が厳しく定められている半導体や電子機器の製造工程で多く使用されてきました。具体的な用途は以下の通りです。

  • 半導体用反射防止剤
  • 半導体用レジスト
  • 金属メッキ処理剤

現在は各業界で代替品の開発が進められており、代替品にはPFOSとは別の種類のPFASが使用されているケースもあります。

 

PFOS含有の泡消火薬剤が社会課題に

PFOSは、過去に業務用の泡消火薬剤としても使用されていた歴史があります。国内におけるPFOSを含有した泡消火薬剤は、化審法でPFOSが第一種特定化学物質に指定されたことを受け、各メーカー共に2010年4月に製造を終了しています。しかし、業務用の泡消火薬剤は保管期限が長いものも多く、その一部は在庫として残っています。

環境省が2020年に実施した調査では、338.8万 LのPFOSを含有した業務用の泡消火薬剤があることが判明しました。化審法により使用は禁止されているものの、その置き換えには多額の費用がかかるため、どのように置き換えを進めるのかが社会的な課題となっています。

 

PFOSの人体への影響は研究中

WHOの外部組織であるIARCは、2023年にPFOSをグループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)と認定しました。この研究データはあくまで人体への発がん性の有無を示すものであり、PFOSの発がん性の強さや暴露量に基づくリスクを示しているわけではありません。

欧米を中心とした研究では、免疫力の低下やホルモンの働きを阻害する可能性も指摘されています。経口摂取による直接的な健康被害は確認されておらず、人体にどの程度の影響を及ぼすのかについては現段階では不明な部分も多いのが現状です。

 

 

PFOA(ペルフルオロオクタン酸)とは

雨の日の準備

PFOAは、PFOSと同じく日用品や工業製品の製造過程で多く使用されてきたPFASの一種です。高い撥水性・撥油性を持つことから、界面活性剤や滑りを良くするフッ素ポリマー加工助剤として使用されてきました。

2019年5月にPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)にてPFOAが廃絶物質(附属書A)に特定され、欧米を中心に様々な規制の対象となっています。国内でも化審法によって原則的な製造・使用・輸入の禁止が定められています。

 

日用品などの一部に使用されてきた

PFOAは、繊維、医療、電子基板、自動車、食品包装紙、石材、フローリング、皮革、防護服など、幅広い製品の製造・加工用途として使用されていました。

レインウェアや自動車・建築資材のコーティング剤、フライパンの滑りをよくするフッ素樹脂PTFEの補助剤など、生活に身近な日用品や製品などにも含まれています。

化審法の規制によってPFOAの製造と輸出入が原則的に禁止となっており、メーカー各社で代替物質による製造・加工の研究や新製品の販売が進められています。業界では、従来製品と比べてより安全性に配慮したPFOAASフリー製品等の開発・研究も進んでいます。

 

PFOAは人体への影響が懸念されている

PFOAはIARCの公表で、2023年にPFOAをグループ1(ヒトに対して発がん性がある)と認定しています。グループ1はIARCが分類する4段階の項目で最も高いリスクを示しており、発がん性に対して十分な証拠が認められる場合にのみ該当します。

PFOSよりも上位のグループに位置付けられており、喫煙やアルコール、アスベスト等と同等の発がん性リスクがあると認識されています。

現時点では、どの程度PFOAを摂取すれば人体への影響が発生するかは明らかになっておらず、発がん性以外の影響や健康リスクについては、世界中で調査が進んでいます。

 

 

PFAS(PFOS・PFOA)を巡る世界の情勢

PFASを巡る世界の規制動向については、POPs条約の特定事項に基づいて各国で規制が進んでいます。特にアメリカやEUに代表される欧米は分析研究や規制への取り組みが先進的であり、日本は欧米諸国の規制に追従するかたちで法律を整備しているのが現状です。

PFASの中でも現時点で毒性評価が進んでいるPFOS・PFOAに関しては、世界でも規制が厳格化しつつあります。例えばEPA(米国環境保護庁)では、2024年4月、飲料水中のPFASについて、PFOS・PFOAの飲料水健康勧告値を1リットルあたり4 ng/Lと大幅に厳しい基準値を設定しています。

また、世界のPFAS規制動向によっては、現状国内の化審法で規制されているPFOS・PFOA・PFHxSの3種類以外の化学物質が追加規制される可能性もあります。

PFAS規制を巡る諸外国の動きは、下記の表の通りです。

 

日付 内容
2009年5月 POPs条約)にて、PFOSを制限物質(附属書B)に特定。
2019年5月 POPs条約にて、PFOAを廃絶物質(附属書A)に特定。
2022年6月 POPs条約にて、PFHxSを廃絶物質(附属書A)に特定。
2022年8月 EPAがスーパーファンド法において、PFOA・PFOSを有害物質に指定するように提案。
2023年1月 欧州では、REACH規則においてPFASを規制する提案を、デンマーク・ドイツ・オランダ・ノルウェー・スウェーデンの5ヵ国共同でECHA(欧州化学品庁)へ提出。PFASの製造・使用・販売の禁止や、PFAS物質を構成用途とする物質・混合物・製品の販売を禁止とする内容。2025年中の施行となる見通し。
2023年2月 欧州REACH規則において長鎖PFCAs(ペルフルオロカルボン酸類)を規制。PFCAs単体としては製造等を禁止に。
2023年7月 欧州REACH規則において、特定の目的でPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を規制。
2023年11月 EPAが2020年の国防権限法に基づき、TSCA(有害物質規制法)に則したPFAS含有製品の報告と記録管理に関する規則を施行。
2024年3月 欧州にて、食品と接触する包装におけるPFASの禁止を、欧州理事会と欧州議会が暫定的合意。
2024年4月 EPAが法的拘束力のある飲料水基準値を最終決定し、PFOS・PFOAは4 ng/L

 

 

PFASの種類や区別について正しく理解しよう

PFASには1万種類以上の化学物質が該当しており、その中でも人体に対する毒性や環境への影響が危険視されているのがPFOSとPFOAです。同じ有機フッ素化合物ですが、使用用途や規制範囲は異なります。PFASの規制において先進的な欧米で新たな研究データが公表されることで、今後日本においてもPFAS規制対象物質が増える可能性があります。PFASの種類を正しく区別して、今後の規制動向や国内の法改正に対応できるようにしましょう。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 藤田 潤さん

ユーロフィン日本環境株式会社

ラボラトリー事業部 POPsグループ

PFAS・PCBチーム 藤田 潤

<経歴>

2021年 神奈川大学 理学部 卒業

クルマエビの卵巣成熟度を評価する新たな指標遺伝子の探索について研究を行う。
卒業後、株式会社アルプスビジネスサービスに入社し、絶縁油に含まれるPCB分析を携わる。
2022年よりユーロフィン日本環境株式会社でPCB分析を行い、2023年よりPFAS分析に従事。

<発表>

2023年9月 第30回日環協・環境セミナー全国大会「水中の揮発性PFAS分析法の検討」
資料はこちらからダウンロードいただけます。

 

 

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