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PFASの一種であるGenXとは?化学物質の特性や規制の動向

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投稿日:2024年8月26日

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PFAS(有機フッ素化合物)は環境や人体に及ぼす影響が懸念されており、国際的に規制強化の動きが強まっている化学物質です。毒性評価が進んでいる一部のPFASの代わりに様々な代替物質が使用されてきましたが、現在ではそれらの化学物質も安全性が議論されています。その中の一つが、GenXと呼ばれるPFASの一種です。本記事ではGenXの概要や、国際的な議論の状況について解説します。

 

INDEX

 

 

GenXとはPFASの一種

GenXとは、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)を使用せずに高性能フルオロポリマーを製造するために用いられる技術に対する商標名です。

GenXは主に製品の製造工程で使用されます。使用用途の一例として挙げられるのが、フライパンの滑りを良くするために使用されるフッ素樹脂の一種PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の性能を向上させる補助剤などです。

GenXには、PFASの一種であるヘキサフルオロプロピレンオキシド ダイマー酸(HFPO-DA)という化合物が含まれているため、GenXもPFASの一種といえます。

 

GenXはPFOAの代替物質として使用

GenXはPFOAの代替物質として開発されました。PFOAは2019年にPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)により原則的な使用と禁止が定められたPFASです。難燃性や耐薬品などの優れた物性があり、撥水剤などのコーティング剤、フッ素樹脂製造の補助剤、電子基板などに幅広く使用されてきました。

しかし、2000年代の後半以降、PFASが環境や人体に及ぼす影響の議論が世界中で活発になります。世界的な化学メーカー8社は、米国EPAの主導するPFOAの削減プログラムに参加。2015年末までに段階的な廃止を達成しています。

世界各国でPFOAの廃絶が推し進められる中、PFOAの代替物質が多く開発されました。その代表例が、PFASの一種であるPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)やGenXです。

PFHxSはPOPs条約により、2023年8月より原則的な製造と使用が禁止されました。同様にPFOAの代替物質であるGenXについても、議論の対象となりつつあります。

 

 

GenXが環境や人体に及ぼす影響

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実際にGenXは環境や人体に対してどのような影響を及ぼすのでしょうか。その事例について見ていきましょう。

 

GenXの水環境における影響

環境科学と技術の領域における科学雑誌「Environmental Science & Technology Letters」の2016年11号では、ノースカロライナ州における河川に含まれるPFASの調査結果が発表されました。その中で、GenXの検出が確認されたことにも触れています。

また、2023年に発表された論文「浸水土壌と非浸水土壌における小麦と米による GenXの吸収: 温室実験」によると、GenXが含まれる水を小麦と稲が吸収すると、成長が阻害される可能性が示唆されています。

 

GenXの人体における影響

飲料水にGenXが含まれていた場合、経口摂取によって人体へ取り込まれます。その影響については、現在も世界各国で研究が行われています。

EPA(米国環境保護庁)は、経口摂取を含む動物実験で毒性評価を実施しました。その結果、肝臓、腎臓、免疫系、子の発育など、潜在的な健康への影響があると結論づけています。

 

 

日本国内でGenXの規制は定められていない

世界各国で環境や人体への影響について研究が進んでいるGenXですが、日本国内において法規制は定められていません。しかし今後の研究結果や社会へ与える影響次第では、規制の対象となる可能性もあります。

 

 

GenXに関する各国の規制動向

説明と天秤、審判

GenXの使用に対する議論は海外で活発に行われており、一部の国では統一的な基準を定めているケースもあります。ここでは、GenXの規制動向に対する国際的な状況について解説します。

 

国際条約におけるGenXの規制は定められていない

PFASが規制される際には、国際条約であるPOPs条約の附属書に掲載され、それを受けて日本を含めた各国が国内法で規制を整備していくケースが多いですが、GenXに関しては2024年7月時点では条約の規制対象になっておらず、国際的に使用は禁止されていません。

 

アメリカにおけるGenXの規制動向

アメリカは飲料水に関してGenXの規制を始めました。EPAは2024年4月、飲料水中のPFASについて基準値を公表。HFPO-DA(GenX)は単独で10 ng/L(10 ppt)超えないこと、かつGenXを含む4種のPFASについてHazard Indexが1を超えないこととされました。

 

EUが定めるREACH規則におけるGenXの規制動向

欧州における化学物質の登録や評価を行うREACH規則において、GenXは2019年3月に高懸念物質(SVHC)認可候補リストに追加されています。

 

 

GenXを取り巻く世界の動向には注視が必要

PFASの代替物質として使用されたGenXは、現在規制や研究についての議論が活発になりつつあります。国際条約や欧米諸国の動向によっては、日本においても新しい基準や規制が議論される可能性があります。今後もPFASを巡る国際的な動向に注視しましょう。

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 野島 智也さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ 
研究開発チーム

Specialist 野島 智也

<経歴>

2012年 筑波大学 理工学群 化学類 卒業
2014年 筑波大学 数理物質科学研究科 化学専攻 博士前期課程 修了
2014年にユーロフィン日本環境株式会社入社し、ダイオキシン分析に従事。

2020年からは有機分析チームの分析要員としてPFOS・PFOA分析の立ち上げに従事し、その後、R&Dグループとして国内の分析法、EPA法、ISO法等を立ち上げる。

2023年には独自法による排ガス中のPFAS一斉分析法を立ち上げる。

 

 

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