PFASはコスメにも使用されている?世界では使用禁止となる事例も
投稿日:2024年8月8日
PFAS(有機フッ素化合物)は、環境や人体に対して影響を及ぼすことが研究で明らかになっており、一部の化学物質を中心に国際的な規制が進んでいます。コスメ製品全般にも複数のPFAS含有が確認されており、ニュージーランドやアメリカの一部の州では規制が始まりつつあります。この記事では、コスメに含有されているPFASの種類や、PFAS規制の動向について解説します。
INDEX
PFAS(有機フッ素化合物)とは
PFAS(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)とは、炭素とフッ素が結合した有機フッ素化合物の総称です。
1万種類以上の化学物質が該当し、PFASの中でも特に使用機会が多かった化学物質がPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)です。
現在、PFOS・PFOAともに意図的な含有・製造がPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)によって禁止されており、日本国内でも化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)によって、一部の用途を除き製造・輸入が禁止されています。
以前は水や油を弾く耐油性や耐熱性の高さから、様々な製品で使用されてきました。以下がその一例です。
- 食品の包装材
- 防水スプレー
- フッ素加工のフライパン
- カーペットなどの繊維
- 泡消火薬剤
現在、これらに使用されていたPFOS・PFOAは代替品や代替物質に置き換わっています。未だに規制されていないPFASについても、環境や人体に影響を及ぼす可能性が懸念され、対象物質を規制するための議論が各国で行われています。
PFOS・PFOAが規制されている理由
PFOS・PFOAの世界的な規制が進んでいる理由は、環境と人体に影響を及ぼす可能性が指摘されているからです。PFASの特性として、分解されずに環境中に長期間残留し続け、長距離を移動する性質があります。
将来にわたって排出を続けることで環境中にPFOS・PFOAが蓄積され続けることが懸念され、POPs条約で廃絶物質として規制されています。
人体への影響の観点からは、発がん性が認められています。WHO(世界保健機関)のがん専門機関であるIARC(国際がん研究機関)の発がん性分類で、PFOAはアスベストなどと同じ分類である「グループ1(ヒトに対して発がん性がある。)」、PFOSはトリクロロエチレンなどと同じ分類である「グループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある。)」に分類されています。
ただし、どの程度人体に蓄積すれば有害と判断できるかについては、まだ明らかになっていません。今後の研究に注視する必要があります。
PFAS規制の世界的な動向
PFAS規制の世界的な動向は以下の通りです。
POPs条約によってPFOSが制限物質、PFOA・PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)が廃絶物質に特定されたことを皮切りに、世界的に規制が進んでいる欧米では、一部のPFASの製造・使用・輸出入が制限され始めています。
飲料水においては、2024年4月に米国のEPA(米国環境保護庁)が厳しい基準値を設定しましたが、今後はコスメを含む製品分野においても、各国でPFASの規制対象物質や、製造・使用の制限が増えていくと予想されています。
PFOS・PFOAはコスメへの意図的な含有はない
日本国内では化審法によってPFOS及びPFOAの製造・輸入・使用が禁止されているため、PFOS・PFOAがコスメへ意図的に含有されることはありません。しかし、まだ規制されていないPFASに関しては、商品によっては使用されているケースがあります。
日本国内においては、厚生労働省が告知している「化粧品の全成分表示の表示方法等について(平成13年03月06日医薬監麻発第220号医薬審発第163号)」により、化粧品の全成分の表示が義務化されています。しかしその対象は、意図的に使用している添加剤のみにとどまっています。製造過程で使用されるPFASの種類や商品ごとの含有量は、表示義務の対象外のため注意が必要です。
コスメの一部にPFASが使用されている事例
PFASがコスメへ使用される用途は様々です。耐水性・浸透性・伸ばしやすさ・なめらかさの上昇など、使用される理由は多岐に渡ります。例えば、CTPA(英国化粧品工業会)により実施された2020年の調査によると、調査対象となった企業のコスメ製品に9種類のPFASが使用されていると判明しました。また、日本国内においては、以下のPFASがコスメに使用されています。
ファンデーションや日焼け止めに含有されるケースも
化粧品へのPFASの使用は一般的です。ファンデーションや日焼け止め、口紅、コンディショナーなど多くの商品に添加されています。
論文*で発表されている化粧品765品目を定性調査した結果では、765製品中11種類の PFAS が見つかったとされています。その中でも、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン) とPFD(パーフルオロデカリン)がそれぞれ製品の 25.9% と 22.2% に含まれていました。
*Per- and polyfluoroalkyls used as cosmetic ingredients - Qualitative study of 765 cosmetic products - ScienceDirect
PFASとコスメを巡る世界的な動向
PFASの規制は世界各国で活発に議論されています。近年では、飲料水におけるPFASの濃度の目標値制定に始まり、食品包装紙にも議論が波及し始めました。コスメのPFAS使用に関しても、議論が始まりつつあります。その動向について解説します。
アメリカでは州による規制が始まっている
アメリカでは、州ごとにPFASの規制が進んでいます。その中でも、カリフォルニア州では、化粧品への特定のPFAS規制の使用を禁止とする法律が2023年に制定。2025年より施行される予定です。
ニュージーランドでも化粧品に対するPFASの使用が規制
ニュージーランドでもPFAS規制の範囲が拡大しつつあります。2024年1月に、ニュージーランド環境保護庁より化粧品におけるPFASの使用を段階的に禁止すると発表されました。
国として化粧品におけるPFAS使用を禁止したのは世界初となります。
PFASを巡る今後の規制動向に注目
PFASの化粧品におけるPFAS規制は、国内では開始していません。しかし、これまでのPFASの規制は海外から始まり、その後、日本に波及しました。コスメに関するPFASの規制も同じ道を歩む可能性があります。海外と国内、両方の情勢を追いかけるようにしましょう。
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記事の監修者
ユーロフィン日本環境株式会社 PFAS分析を行うユーロフィングループのネットワークを活かして、国内外の様々なPFASにまつわる情報を配信しています。 |
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【参考資料】
- 国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について|農林水産省
- Per and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) in Cosmetics | FDA
- Califolnia LEGISLATIVE INFORMATION
- 世界のPFAS動向タイムライン|ユーロフィン日本環境株式会社
- POPs条約(METI/経済産業省)
- 資料2 1 PFAS の概況と今後の対応(PFASに対する総合戦略検討専門家会議)|環境省