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PFOAとは?人体への影響や各国の動向、法規制の情報について

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投稿日:2024年4月24日(2025年3月7日更新)

PFOA

近年、PFAS(有機フッ素化合物)に関するニュースを耳にする機会が増えています。

その中でも世界的に厳しい規制が敷かれている化学物質が、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)です。

しかし、PFOAがどのような化学物質で、なぜニュースで取り上げられる機会が多いのか、疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、PFOAの概要や規制の歴史、現在までの動向について詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

PFOA(ペルフルオロオクタン酸)とは

PFOA 男性研究者

PFOA(ペルフルオロオクタン酸)はPFASの一種で、英語名「Perfluorooctanoic acid」を略して「PFOA(ピーフォア)」と呼ばれています。

PFOAは、同じくPFASの一種であるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)と同様に8個の炭素を持つ化学物質です。

ただし、PFOAはカルボン酸基、PFOSはスルホン酸基を持つという違いがあり、性質や環境中での挙動が異なります。

PFAS全体の概要についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご参考ください。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)とは?特徴から問題点、規制の最新動向まで

PFAS とは

 

PFOAの使用用途

PFOAとは

PFOAは常温では液体として存在する物質であり、耐熱性、耐薬品性に優れていたことから主に以下の用途等で使用されてきました。

 

  • 繊維
  • 医療
  • 電子基板
  • 自動車
  • 食品包装紙
  • 石材
  • フローリング
  • 皮革
  • 防護服

 

ただし、日本では2017年に全ての事業者が製造を中止しているため、今後PFOAを用いた製品が市場に出回ることはありません。

参考までに、PFOA・PFOSの代表的な用途をまとめたのが下記になります。

 

PFOA 泡消火薬剤、繊維、電子基板、自動車、食品包装紙、石材、フローリング、皮革、防護服等
PFOS 泡消火薬剤、半導体、金属メッキ、フォトマスク(半導体、液晶ディスプレイ)、写真フィルム等

 

【関連記事】PFOSとPFOAの用途は?安全性に対する懸念も併せて解説

試験管を見る女性

 

PFOAが人体に及ぼす影響

PFOAが人体に及ぼす影響については、現代の研究では未解明の部分も大きいのが実情です。

2023年12月にWHO(世界保健機関)の専門組織であるIARC(国際がん研究機関)は、PFOAに発がん性がある可能性を認定しました。

その結果を受けて、WHOはPFOAを喫煙やアスベストと同様のリスクがある化学物質と位置付けています。

また、人体への影響については以下の報告もあるため、可能な限り体内に取り込む量を減らすことが推奨されます。

 

  • PFOAの曝露量とコレステロール値の上昇に正の相関が認められる
  • PFOAの曝露量と精巣がん、腎臓がんのリスク増加の関連性が指摘されている
  • 血液中のPFOA濃度が女性の生殖機能に影響を及ぼすことが疫学研究として報告されている
  • 出産前の母体中のPFOA濃度と児童の心的発達に関する一過性の影響に関する報告がある
  • PFOAの血中濃度が、ワクチン接種後の抗体反応の低下と関連している
  • 出産前にPFOAに曝露した女性のテストステロン濃度が変化した

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)の人体への影響は?

悩む女性

 

 

PFOAを巡る規制と社会動向

PFOA 会議

PFOAは人体への蓄積性や、自然界で分解されにくい性質が危惧され、日本を含めた世界各国で製造・使用・輸出入が規制されています。

ここでは、PFOAを巡る規制と社会動向について解説します。

 

PFOAを巡るヨーロッパとアメリカの規制動向

ヨーロッパのEU(欧州連合)においては、2004年に発効され更新を続けているPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)や、ECHA(欧州化学品庁)が定めたREACH規則(化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則)に基づき、厳しい規制が定められています。

PFOAに関しては、2017年に使用・輸出入に対して制限が加わりました。その後、2019年にPFOAがPOPs条約の附属書A(廃絶対象リスト)に追加され、加盟国での製造・使用・輸出入が原則として禁止されています。

2020年には、POPs条約に合わせてREACH規則が更に改正され、規制が強化されています。

また、PFOAを含む全てのPFASについて、製造・使用・輸出入を全面的に禁止する規制案が、2023年1月13日にドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの5つの当局から共同でECHAに提出されています。


一方アメリカでは、2020年以降はバイデン政権が主導し、PFOAを含むPFASに対する本格的な規制整備が進められています。2024年にはEPA(米国環境保護庁)が法的拘束力のある飲料水の基準値を最終決定しています。

PFOS・PFOAはそれぞれ4 ng/L未満とするほか、4項目のPFASについてハザードインデックスという指標に基づき、PFHxS・PFNA・HFPO-DA(GenX)はそれぞれ単独なら最大10 ng/L、PFBSは単独なら最大2,000 ng/Lという厳しい基準値が設定されています。

また同時に、全米の公共水道システムに対して3年以内に飲料水中のPFAS量測定と情報公開を求めており、基準を超えた場合、5年以内に削減対応が必要となります。

 

PFOAを巡る日本の規制動向

日本においては、PFOAは化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)により、2021年に第一種特定化学物質として指定され、製造・使用・輸出入が禁止されました。

加えて2024年7月10日には、「PFOAの分枝異性体又はその塩」及び「PFOA関連物質」が追加指定されています。

つまり、「PFOAの分枝異性体又はその塩」及び「PFOA関連物質」についても、製造・使用・輸出入はできません。なお、異性体とは同じ分子式を持ちながら、構造の異なる化合物を指します。

また、水道水中のPFASについては、PFOSとPFOAを合計した濃度が50 ng/Lを超過しないように暫定目標値が設定されています。これは体重50 kgの人が、1日あたり2 Lの水を生涯にわたって摂取しても健康に影響を与えないと推測される値です。

ただし、アメリカでは2024年より、PFOAとPFOSそれぞれについて法的強制力のある最大汚染レベル(MCL)が4 ng/Lに設定されており、日本の暫定目標値との差が指摘されています。

 

【関連記事】PFOAはどのように規制されている?これまでの動向と合わせて解説

審判

 

PFOAを巡る各企業の規制対策

PFOAはかつて多くの産業で使用された歴史がありますが、環境や人体に与える影響が明るみになったことで、多くの製造業者やフッ素化学メーカーは自主的にPFOAの使用を廃止しています。

各国の法律で規制強化が進む中、世界的にPFOAはほぼ使用されておらず、現在は代替物質の研究・開発が進められています。

また、フッ素化学メーカーには環境中に残留しているPFOA・PFOSについて、行政と連携を取りながら対応を続けているところもあります。

 

【関連記事】規制が厳格化するPFASへの対策とは?メーカー担当者が押さえたい注意点

バーチャル工場

 

PFOAフリー製品の開発も進む

PFASの規制強化や代替物質の開発需要を見越して、企業側はPFOAフリー製品の開発にも取り組んでいます。

日本ではPFOAを使用した商品の生産はすでに禁止されていますが、より高い安全性を確保した商品の証明としてPFASフリーの記載が行われる場合もあります。

PFAS MEDIAでは、製品におけるPFASフリーの基準について以下のように定義し、自社の分析でこの基準に合致した製品をPFASフリー製品に認定しています。

 

PFAS MEDIAにおける「PFASフリー製品」の定義
完成した製品および製造工程において、REACH規則・POPs条約・化審法で規制されている物質及び、今後規制の対象とされるLC-PFCAsが含まれていないこと。
〈物質名〉PFOS、PFOA、PFHxS、PFHxA、LC-PFCA(C9-C21)

PFOAフリーであることは消費者が商品を選ぶ際の一つの基準になり得ます。その商品に使用されている素材や機能、安全性にも注目し、納得したうえで商品を選びましょう。

 

【関連記事】PFOAフリーのフライパンってなに?人気がある理由や将来性について解説

フライパン

 

 

PFOAが水道水から検出される理由

PFOA 実験装置

日本の特定の地域において、PFOA・PFOSが水道水から検出されることが問題になっています。大きな理由として考えられるのは、工場や基地などで使用されたPFOA・PFOSが工場の排水などに溶け込み、自然界で分解されずに残留し続けた可能性です。

この問題を受けて、環境省は2022年より全国の河川でPFOA・PFOSの濃度測定の調査を開始しました。分析・調査の結果を受けて、特定の地域で水道水を摂取した住人の血中濃度の測定調査に乗り出しています。

また、岡山県の吉備中央町では、同町内の円城浄水場において、国の暫定目標値である50 ng/Lを大幅に超えるPFOA・PFOSが検出されました。

その後、原因究明委員会による調査が行われ、周辺の土地に保管されていた使用済み活性炭が入ったフレコンバッグが汚染の原因になったことが明らかになっています。

 

PFOAが含有される水道水を飲むとどうなる?

PFOAが含有される水道水を飲み続けた際の人体への影響については、現在各国で調査が進んでいます。

PFOAをはじめとしたPFASの摂取によって起こりうる疾患の一つとして挙げられるのが、肝機能障害です。血清中のPFAS濃度が高いと、肝機能が低下しうることが研究により指摘されています。

他の疾患についてもPFASとの関連性が研究されていますが、どの程度の期間、どの程度の量を飲み続けると人体に影響があるのかについては、まだ解明されていません。

今後の研究の進捗や最新の分析データにより、人体や自然に対する影響度が徐々に明らかになっていくと予想されます。

 

水道水に含まれるPFOAに有効な対策

一度体内に入ったPFOAは長期間排出されず、長い期間をかけてゆっくりと代謝されるため、最初から取り込まないのが最善の対策となります。

水道水に含まれるPFOAについては、家庭用の浄水器でも取り除くことが可能なため、浄水効果や機能性を考慮したうえで設置を検討しましょう。

PFASの除去に推奨される浄水器の選び方については、下記の記事で詳しく解説しています。

 

【関連記事】PFAS(有機フッ素化合物)対策に有効とされる浄水器の選び方とは?

飲料水

 

 

PFOAの人体への影響は大きな問題となり始めている

PFOA 研究

PFASは環境や人体への影響が明らかになったことで、大きな社会問題となり始めています。

現段階で厳しい規制が加えられているPFOA・PFOSだけでなく、今後はさらに多くのPFASに対してより包括的な規制が加わるなど、規制内容・項目が強化される可能性も否定できません。

企業が新しい商品の生産、輸出入を開始する際も、PFASが含まれていないことを第三者の立場で立証するプロセスが必要になるケースもあります。

製造行程の見直しや検査を進めつつ、将来的な規制に対応できるように準備しましょう。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 野島 智也さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ 
研究開発チーム

Specialist 野島 智也

<経歴>

2012年 筑波大学 理工学群 化学類 卒業
2014年 筑波大学 数理物質科学研究科 化学専攻 博士前期課程 修了
2014年にユーロフィン日本環境株式会社入社し、ダイオキシン分析に従事。

2020年からは有機分析チームの分析要員としてPFOS・PFOA分析の立ち上げに従事し、その後、R&Dグループとして国内の分析法、EPA法、ISO法等を立ち上げる。

2023年には独自法による排ガス中のPFAS一斉分析法を立ち上げる。

 

 

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