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PFOSとはどんな物質なのか?人体への影響も含めて解説

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投稿日:2024年4月24日

若い女性の研究者

残留性有機汚染物質の拡散が深刻化し、世界中で規制強化の動きが加速している物質の一つが、PFAS(有機フッ素化合物)です。

PFASの一種であるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)は、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)と並び人体への影響が考えられる化学物質と報道されています。

しかし、PFOSの有害性や人体への影響について、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、PFOSの特徴や規制の内容、社会背景について詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

 

PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とは

薬品テスト・分析

PFOSとは、PFASと呼ばれる有機フッ素化合物の一つです。有機フッ素化合物とは、骨格としている炭素原子にフッ素原子が結合した化学物質です。

PFASは自然界に存在しない人工的な化学物質であり、工業製品の性能や寿命を上げる性質を持っているため、様々な場面で使用されてきました。

PFASは1万種類以上ありますが、その中でも水や油をはじくという特性から様々な製品などに使用されてきた物質がPFOSとPFOAです。

2000年代に入ると研究が進み、PFOSを含むPFASを過剰に摂取すると、人体に悪影響を及ぼすことが判明しました。日本を含めた世界中でその影響が懸念され、使用に対する規制が進められてきました。

国際的には、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約)」により、2009年にPFOS、2019年にPFOAの製造が禁止されています。日本においても法律が整備され、PFOSは2009年、PFOAは2019年に製造と輸入を禁止する法律が定められました。

 

PFOSとはどういう物質か

PFOSは自然界で分解されにくい性質から、「永遠の化学物質」と呼ばれている化学物質です。以下の3点の特徴があります。

 

  • 分解されにくい
  • 蓄積されやすい
  • 広範囲に移動しやすい

 

工場のような厳しい条件下でも耐えうる強力な性能を持っているため、工業製品を製造する場面で多く使われてきました。その結果、利便性の高い製品が次々と生み出され、産業や生活の発展に大きく寄与しました。

しかし、現代においてはその強力な性能のために、滞留すると自然界や人間の生活にも大きな影響を及ぼすと判明したため、国際社会として製造禁止の処置が下されています。

 

PFOAとPFOSの違い

PFOAとPFOSは、共にPFASと呼ばれる有機フッ素化合物の一種です。PFOAは撥水性を高める性質があり、多くの工業製品に使用されています。

滑りを良くするフッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤などが代表的です。一方で、PFOSは、高い耐熱性や耐薬品性が特徴です。

 

PFOSは何に使用されてきたか

PFOSは製造条件の厳しい半導体の製造や電子機器の製造工程で使用されてきました。具体的な用途は、半導体用反射防止剤・レジスト、金属メッキ処理剤、泡消火薬剤などが代表的です。

 

日本におけるPFOSの規制

日本では化学物質審査規制法において、PFOSの規制が定められています。

2009年に第一種特定化学物質(原則として製造と輸入の禁止)に指定。その後、飲用水に係る規制も進み、2020年には、PFOSとPFOAを合算して50 ng/Lが目標値として定められています。

しかし、PFOSとPFOAをどの程度摂取すると人体への影響が起こるかについては判明していません。今後の研究結果次第では、基準値が引き上げられる可能性もあります。規制の動向を注視しましょう。

 

 

PFOSが及ぼす人体への影響

化学ラボラトリー

PFOSを含むPFASは、人体への影響が懸念されています。例えば、コレステロール値や発がん性との関係性にまつわる研究が進められています。ただし、現時点で人体への影響に関して詳細は明らかになっておりません。

 

PFOSを体に取り込むとどうなるのか

日本国内におけるPFOSの健康被害の事例は、発表されていません。(※2024年2月現在)。

しかし、発がん性との関係については国際的にも注目されています。

WHOの付属機関である国際がん研究機関は、2023年にPFOSを発がん性の可能性がある物質と分類。現在も科学的な研究が進められています。

 

PFOSという化学物質の問題点

PFOSを含むPFASは、永遠の化学物質と呼ばれており、物質の量が半減するまでの期間が長いという特徴を持ちます。

また、PFOSを含むPFASは、炭素とフッ素原子の結合の強さが要因で優れた耐熱性や耐候性を持ちます。
英国健康保護庁(HPA)の調査によると、人間が経口摂取した場合のPFOSの半減期は、約9年と報告されています。

製品に使用されると性能を上げますが、一方で自然界に排出された場合には分解されにくくなります。また、自然界における半減期は数十年以上です。分解されにくいため自然界に残留・蓄積しやすく、年数を経るごとに環境への負荷が高まります。

 

 

PFOSの最新調査状況

PFOSを含むPFASの人体や環境への調査は、2000年代以降本格的に開始されました。世界においては、2015年以降に飲料水の目標値が定められ、更新され続けています。

 

PFOSを巡る世界の動向

世界におけるPFOSとPFOAの飲料水における暫定的な目標値・基準値は、以下の通りに定められています。

機関 適用日 目標値・基準値 備考
WHO 2022年 100ng/L PFOA、PFOSそれぞれの暫定ガイドライン値として提案。
米国 2024年 4ng/L PFOA、PFOSそれぞれの基準値を2024年4月に最終決定。
欧州(EC) 2021年 500ng/L 全PFASの目標値
英国 2021年 100ng/L  
ドイツ 2017年 100ng/L 2023年にPFOS,PFOA,PFNA,PFHxSの合計が20ng/Lとする国内法が提案され、2028 年に適用予定。
カナダ 2018年 600ng/L 2023年に総PFASを30ng/L とする目標値を提案。

参考:https://www.env.go.jp/content/000140670.pdf

 

PFOSを巡る日本の動向

日本においては、PFOSの暫定的な目標値として、2020年に50 ng/Lが定められました。
また、国内の水環境におけるPFOAとPFOSの調査が開始され、2019年には全国171地点でPFOAとPFOSの含有量を測定。13都道府県の37地点において目標値の超過が確認されています。環境省が公表した2022年の調査では、38都道府県の河川や地下水など1258地点中の111地点にて超過が確認されておりますので、今後、調査が進んでいく中で、これらに基づいた指針が示されていくことが考えられます。

 

 

PFOSに関する諸問題の動向を正しく理解しよう

PFOSに関する諸問題は、2015年以降に調査と研究が本格化しました。人体への影響などの具体的な研究結果や対策は、これから進んでいくことが考えられます。

PFOSが含まれる可能性のある物質や製品、サービスに関わる機会がある方は、最新の情報や研究データ等の動向を注視する必要があるでしょう。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 高藤 晋さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ
セールス・マーケティングチーム

Manager 高藤 晋

<経歴>

2012年 University of Otago 微生物免疫学部卒
2015年 東海大学大学院 博士前期 修了
2019年 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム研究科博士後期課程修了
2019年 株式会社ベリタスに入社し、オルガノイド関連商材の展開に携わる。2024年より現所属。

オタゴ大学では、食品微生物など、東海大学ではトランスジェニック植物を使用したホルモン作用の解析、横浜市立大学では植物ホルモン化合物の定量分析などを行っていた。

 

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