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SDWA(米国安全飲料水法)とは?法律の役割やPFASとの関連性

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投稿日:2024年11月6日

コップの水

SDWAとは「Safe Drinking Water Act」の略語で、日本語では米国安全飲料水法と訳されます。国民が安全な水を飲めるように、汚染物質の混入防止など品質を担保する規制を設ける法律です。そして、2024年にはPFAS(有機フッ素化合物)の一部がSDWAにおける規制物質として加わりました。

この記事では、アメリカ国内におけるSDWAの役割や、PFASとの関連性、PFAS規制が及ぼす日本への影響について詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

SDWA(米国安全飲料水法)とは?

水を飲む女性

アメリカ国内でSDWAが制定された主な理由として、以下の3点が挙げられます。

 

  • 公衆の健康保護
  • 水質汚染の増加
  • 統一基準の必要性

 

飲料水が汚染されていた場合、住民の健康に深刻な影響が及びます。工業化や都市化の進展により、水源が汚染されれば住民の飲料水にも影響が及ぶため、これを食い止めなくてはいけません。

しかし、飲料水に問題がないかを判断する水質基準が州・地域ごとに異なるのは好ましくないことから、統一された基準を決める必要がありました。

SDWAは1974年に制定され、その後、1986年・1996年・2018年には大幅な 改正が実施されています。まず、1986年の改正では、飲料水の安全基準が強化されました。1996年にはより強固に飲料水の安全を確保するための施策として、以下の5点が取り入れられています。

 

  • 健康リスクの低減とコストの分析に基づく新しい規制の導入
  • 州回転基金プログラムの導入
  • 小規模システムの改善
  • 消費者に対する情報提供の要件の拡充
  • 水質評価プログラムを通じた汚染防止に対する取り組みの強化

 

その後、2018年にはAWIA(America's Water Infrastructure Act:アメリカ水インフラ法)により改正が行われています。

 

 

SDWAが担う主な役割

コップに水を灌ぐ

SDWAが担う役割を一言でまとめると「飲料水の安全および公衆の安全の確保」です。その役割を担保するために、以下の施策が取り入れられています。

 

  • 国家飲料水基準の設定:アメリカ全土で統一された飲料水の安全基準を設定する
  • 水質モニタリングと報告義務:飲料水が汚染されていないか定期的な監視・報告を義務づける
  • 公衆への情報開示:飲料水の安全が保たれているか、定期的に情報を開示する
  • 水源保護プログラム:州単位で公共水道の水源評価を行うためのプログラムの策定・実行を義務づける

 

 

SDWAとEPAの関係性

EPA

EPA(米国環境保護庁)は、日本でいう環境省に相当する国の機関です。EPAはSDWAによって飲料水の健康基準を設定する権限を与えられています。

州や地方自治体に対しては、基準値を遵守できるように監視と指導を行うとともに、水質保護のための技術的支援や、飲料水システムの改善のための資金援助なども行っています。

つまり、SDWAで設けられている規制を遵守するために、具体的に必要な施策を講じるのがEPAであると考えましょう。

 

 

米国の飲料水規制システム

はじける水

EPAは飲料水について、国民の健康に影響を及ぼさないことを重要な目標として設定し、規制システムを策定しています。

規制により、全ての公共水道システムの所有者および運営者は、第一次飲料水規制基準を遵守しなくてはいけません。

 

第一次飲料水規制基準の内容

処理場や排水システムから供給される処理水については、以下の6つの分類において、それぞれ規定される物質の含有量が一定水準を下回るように求めています。

 

  • 微生物
  • 消毒副産物
  • 消毒剤
  • 無機化学物質
  • 有機化学物質
  • 放射性核種

 

第一次飲料水規制基準に加えて、人体に取り込まれることで皮膚や歯の変色が起きる物質や、水自体の味・匂い・色などに影響を及ぼす汚染物質については、強制力のない第二次飲料水規制基準が設けられています。具体的な対象物質は以下の通りです。

 

  • アルミニウム
  • 塩化物
  • 腐食性
  • フッ素
  • 発泡剤
  • マンガン
  • 匂い
  • pH
  • 硫酸塩
  • 総溶解固形物
  • 亜鉛

 

なお、これらの規制対象となる物質について、SDWAでは人体に悪影響を及ぼさないレベルでの各汚染物質の最大汚染物質レベル目標(MCLG)を設定することを求めています。

加えて、「実施可能な(feasible)」ものとして最大許容濃度目標にできるだけ近い各汚染物質の最大汚染物質レベル(MCL)の設定も求めていることに留意しましょう。

 

飲料水の規制プロセスと消費者向けレポート

飲料水規制システムにおける具体的な規制プロセスは、以下のように進んでいきます。

 

  • CCL(汚染物質候補リスト)の作成
  • CCLに基づくリスク評価・コスト分析を経た規制決定
  • 第一次飲料水規制の設定
  • 規制の実施と監視
  • 公衆への情報提供

 

これらの仕組みは、水道事業者が以下の責任を遵守するために体系立てて運用されているものです。

 

  • 水質基準の遵守
  • 定期的な検査・報告
  • 汚染防止
  • 消費者への情報提供

 

また、飲料水を使用する一般消費者も、安全な飲料水を享受する権利と自分たちがどのような水を飲んでいるのかを知る権利があります。

その一環として設けられているのが、各州の水道事業者が公表するCCR(消費者信頼感レポート)です。こちらはEPAの公式Webサイトから閲覧することが可能です。

 

 

SDWAが及ぼすPFAS規制への影響

PFASは長い間SDWAに基づく規制物質の対象外でしたが、2024年には6種類のPFASが第一次飲料水規制基準における規制物質に加えられています。ここからは、PFASが規制物質に加えられたことでどのような影響が及ぶのかについて解説します。

 

PFASの概要と健康リスク

PFASとは有機フッ素化合物のことで、炭素とフッ素が強固に結びついた物質を指します。撥水性・撥油性に優れた物質が多いため、様々な製品・産業において多用されてきました。

しかし、PFOA(パーフルオロオクタン酸)や、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)などの一部のPFASは、近年の研究によって人体・環境への有害性が明らかになっています。

人体の健康を損なうリスクが指摘されている一部のPFASは、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)によって廃絶・制限の対象となっており、各国の法律で使用・製造が厳しく規制され始めています。

 

EPAのPFAS行動計画

EPAでは、PFASを国民の健康に甚大な影響を及ぼす物質と位置づけ、早い段階から対策を行ってきました。

まず、ドナルド・トランプ大統領在任中の2019年2月に、EPAが最初にPFASについての行動計画を公表し、その後、ジョー・バイデン大統領に政権が移ってからも更新が続いています。

この行動計画は「PFAS汚染を調査し、必要な制限・改善を行うことで、公衆衛生と生態系を保護する」ために策定・実践されるものです。

 

SDWAの下でのPFAS規制の動向

2024年4月10日に、EPAは6つのPFASに関する最終的な国家飲料水基本規制(NPDWR)を発表しています。

以下の6つのPFASに分類される物質について、最大汚染物質レベル (MCL) と呼ばれる法的強制力のあるレベルを設定することで、厳しい規制を設けています。

 

物質名
最終MCL(強制可能なレベル)
PFOA(ペルフルオロオクタン酸) 4.0 ppt(1兆分の1)(ng/Lとも表記)
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸) 4.0 ppt
PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸) 10 ppt
PFNA(パーフルオロノナン酸) 10 ppt
HFPO-DA(HFPOダイマー酸およびそのアンモニウム塩、通称GenX Chemicals) 10 ppt
PFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBS(ペルフルオロブタンスルホン酸)のうち2つ以上を含む混合物 1
Hazard Index

※ Hazard Index:各物質の測定値を「健康影響に基づく値」(それ以下では健康影響のリスクがない最大レベル)で除した値の合計値。 算出に用いられる健康影響に基づく値は、GenX化合物:10 ppt、PFBS:2,000 ppt、PFNA:10 ppt、PFHxS:10 ppt。

 

なお、モニタリングによって、飲料水にこれらの物質がMCLを超えて含有していると判明した場合、5年以内(2029年まで)での削減策の実施を義務付けるなど、達成のための具体的な施策も盛り込まれています。

 

 

SDWAとPFAS規制の関連性を理解しましょう

水を飲む女性2

SDWAはアメリカ国民の健康を守るために、飲料水の安全を担保するための法律です。PFASの一部には人体・生物に対する有毒性が認められている以上、水道水に混入することは国として防がなくてはいけません。そのためにも、EPAがSDWAにPFASの具体的な規制を盛り込み、国民における飲料水からのPFAS摂取を防止する体制を築いています。今後も規制の強化や拡大は十分にあり得るため、動向には注視していきましょう。

 

 

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記事の監修者

品質保証グループ

ユーロフィン日本環境株式会社 品質保証グループ

第三者分析機関としての信頼性や適合性を担保するために、品質システムの整備や監視活動に従事。特に、当社では分析実施項目の大部分でISO/IEC 17025の認定を取得し、PFASについてもISO/IEC 17025認定を取得しており、それら認定の維持管理を主要業務としている。また、国内外のグループ会社と連携した相互監査や技能試験評価、品質会議など、世界中に展開しているEurofinsグループの強みを活かした取り組みも実施。

 

 

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