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有機フッ素化合物の毒性と環境への影響は?各国の規制も解説

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投稿日:2024年5月21日

若い女性の研究者

昨今、テレビや新聞、Webのニュースで有機フッ素化合物という言葉を聞いたことがある人がいるかもしれません。耳慣れない言葉のうえに、毒性や環境への影響という言葉と一緒に聞くと心配になる人もいるでしょう。そこでこの記事では、有機フッ素化合物の毒性と環境への影響について、各国の規制内容も絡めながら詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

有機フッ素化合物とは

医療研究者

最初に、有機フッ素化合物がどのような物質なのか、基本的な部分に絞って解説します。

 

フッ素と炭素を人工的に結合させたもの

有機フッ素化合物とは、フッ素と炭素を人工的に結合させたものです。これに対し、無機フッ素化合物はフッ素とナトリウムやカルシウムなどの金属・非金属が結合したものを指します。炭素が含まれないという点で、有機フッ素化合物とはまったく別の物質です。

 

PFASは有機フッ素化合物の総称

関連する言葉として、PFASについても解説しましょう。PFASとは「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物」のことで、フッ素と炭素が結合した一群の化学物質を指します。有機フッ素化合物の総称と考えて構いません。

PFASには約1万種類以上の物質が該当しており、撥水性・撥油性に優れていることから、生活用品・工業製品をはじめ様々な用途で用いられてきました。フッ素加工のフライパンにコーティング剤として用いられているPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)も、PFASの一種です。

 

 

有機フッ素化合物の人体に対する毒性

有機フッ素化合物は身近な生活用品にも広く用いられているものであり、その全てに人体への毒性が認められているわけではありません。しかし、以下の3種類の物質については人体への影響が指摘されています。

 

  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

 

これらの物質が具体的にどのように人体に影響するのか、詳しく解説します。

 

炭素鎖が長いほど蓄積されやすい傾向にある

前提として、PFASは炭素鎖が長いほど生体蓄積性が高い傾向にあり、毒性も強くなると言われています。

生体蓄積性とは、人間を含めた生物の体内にとどまる性質のことです。また、炭素鎖とは多くの炭素原子が鎖状または環状に結合した化合物における、炭素原子間の結びつきを指します。ちなみに、PFOAとPFOSの炭素鎖数は8、PFHxSの炭素鎖数は6です。

仮に、PFOAやPFOSを経口摂取すると、主に血液や肝臓、腎臓に蓄積します。新たに摂取しなければ減っていきますが、それでも半減期はPFOAで2.3~8.5年、PFOSで3.1~7.4年と長い点に留意しなくてはいけません。

 

発がん性が認められている

PFOA・PFOSについては、発がん性が認められています。WHO(世界保健機関)のがん専門機関、IARC(International Agency for Research on Cancer、国際がん研究機関)の発がん性分類によれば、PFOAは「グループ1(ヒトに対して発がん性がある。)」、PFOSは「グループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある。)」に分類済みです。

ただし、これはあくまで「人に対する発がん性があるか」という証拠の強さを示すもので、物質の発がん性の強さや暴露量に基づくリスクを示しているわけではありません。暴露の種類や程度など、他の要因によってもリスクの大きさが左右されます。

また、CDC(米疾病対策センター)は、体内のPFOA、PFOSの濃度が高くなることにより引き起こされるがんの具体例として、精巣がん、乳がん、腎臓がんなどを挙げています。

 

免疫力を低下させる

PFOA、PFOSには免疫力を低下させる作用も確認されています。免疫力の低下により、感染症、肌の炎症、食中毒、歯周病、がんなど様々な疾患が引き起こされるので注意が必要です。

人間について、幼少期における血清中のPFOAおよびPFOS濃度が高いほど、ジフテリアや破傷風の予防接種をしても、抗体の発生が抑制されることが報告されています。この結果からも、血清中のPFOAおよびPFOS濃度と免疫力には何らかの関係があるかもしれません。

現段階では不明な部分も多いですが、今後の動向に注視しましょう。

 

ホルモンをかく乱させる

PFOAやPFOSは、ホルモンの働きにも影響を与えるとされています。イギリスで女児を対象に行われた調査では、母体血液中のPFOA、PFOS、PFHxS濃度が高いと、テストステロン(男性ホルモンの一種)濃度も高くなるという結果が得られました。また、デンマークで男児を対象に行われた調査では、母体血液中のPFOA濃度が高いと、LH(黄体形成ホルモン)値やFSH(卵胞刺激ホルモン)値が高く、精子濃度、精子数が少ないという結果になっています。

ホルモンかく乱作用により、甲状腺疾患や生殖機能の異常、肥満、心疾患などのリスクが高まる可能性がある点にも注意が必要です。

 

 

有機フッ素化合物の環境に対する毒性

科学の発展

有機フッ素化合物は環境にも影響をもたらします。ここでは、土地や水、動物への影響について報告されている例を紹介しましょう。

 

動植物に対する影響

動植物の健康に対するPFASの影響はまだ十分に研究されていませんが、人間と同じようなリスクを受けることが懸念されています。

それを示唆するものとして、PFOAによる影響を調査した結果からは、以下のように免疫やホルモンの異常を示す事例も報告されています。

 

  • ラットやマウスにおいて、ホルモンのかく乱による性成熟や思春期の時期の変化
  • イルカ及びウミガメにおいて、炎症と免疫性の指標の増加
  • 魚類において、甲状腺ホルモン生合成に関する遺伝子の発現抑制、ビテロゲニン遺伝子の発現の誘起、雄の精巣の卵母細胞の増殖、雌の卵巣変性
  • 陸生植物において、根の成長や壊死など

 

環境に対する影響

日本を含めた世界各国では、PFOA、PFOSの製造や使用を行っていた工場施設の周辺で、土壌や水の汚染が起きているという報道がなされています。

PFASは自然界で分解されにくく蓄積されやすいという性質を持つため、環境中に長期間残留します。また、PFASは水溶性のため、環境中で水系を通して広い範囲に拡散しやすい性質も有しており、北極圏に生息するホッキョクグマからの検出例もあるほどです。

日本国内においてはPFOS、PFOAの摂取が原因とみられる個人の健康被害が発生した事例は現時点では確認されていませんが、自治体の公式サイトに掲載されているPFAS検出結果をチェックするなど、できるだけ最新のPFAS情報を確認するようにしましょう。

 

 

有機フッ素化合物に対する各国の規制

国旗

人体および環境への影響を鑑み、有機フッ素化合物の規制に動く国は増えています。PFOA、PFOSなどの有機フッ素化合物について、主要国がどのような規制をしているかについて解説しましょう。

 

アメリカ

2020年のアメリカ大統領選では、ジョー・バイデン候補がPFAS対策の強化を公約に掲げて当選しました。その後、2021年10月には戦略ロードマップ(PFAS Strategic Roadmap)を公表し、2023年9月にようやく最終的な規則の提示に至っています。

まとまったものが、2023年10月11日付官報(88 FR 70516、有害物質規制法(TSCA) 8条 (a) (7) Reporting and Recordkeeping Requirements for Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl Substances)として公示されました。

水道水中のPFOAとPFOSの基準値をいずれも1 Lあたり4 ngとするなど、他の先進国と比べかなり厳しい規制を敷いているのが特徴です。

 

EU

EUでは、アメリカよりさらに厳しい規制が敷かれる可能性があります。PFASの「残留性が高く、環境や人体に蓄積する」という性質を危険性があるものとし、2025年を目処にPFAS全体を対象とする規制案の採択を目指しています。

規制案では、一定以上の濃度のPFASを含有する混合物・成型品について、EU域内での製造、上市、使用を全面的に禁止する内容が盛り込まれています。フライパンのコーティング剤に含まれるPTFEなど、人体への影響が特段指摘されていない物質に対しても厳しい規制が加わるため、経済・社会への影響が大きいとして懸念を示す国もあるのが実情です。

なお、水道水1 LあたりのPFOA、PFOSの目標値は、WHOと同じ100 ng/Lとなっています。

 

日本

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)に基づき、PFOA、PFOSについてはすでに製造・輸入が禁止されています。PFHxSについても、2024年6月1日から製造・輸入が禁止される予定です。

また、水道水中の残留については、PFOAとPFOSの合算値として1 Lあたり50 ng/Lとする規制が設けられており、環境省が各地方自治体と連携してモニタリングを行っています。

 

 

有機フッ素化合物の全てに毒性があるわけではない

有機フッ素化合物といっても、その全てに毒性や人体への影響が指摘されているわけではありません。フッ素ポリマーなど特段安全性に懸念がないとされている物質も含まれています。ただし、自然界で分解されにくく、蓄積されやすいという性質は共通しているので、今後日本を含めた世界中で規制が強化される可能性は高いでしょう。

 

 

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記事の監修者

eurofins

ユーロフィン日本環境株式会社
品質保証グループ

第三者分析機関としての信頼性や適合性を担保するために、品質システムの整備や監視活動に従事。特に、当社では分析実施項目の大部分でISO/IEC 17025の認定を取得し、PFASについてもISO/IEC 17025認定を取得しており、それら認定の維持管理を主要業務としている。また、国内外のグループ会社と連携した相互監査や技能試験評価、品質会議など、世界中に展開しているEurofinsグループの強みを活かした取り組みも実施。

 

 

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