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ECHA(欧州化学機関)の役割とは?主な活動内容やヨーロッパへの影響

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投稿日:2024年9月30日

国旗

世界各国には、化学物質を取り扱う際の規制や管理監督を行う公的機関があります。一方でEUはヨーロッパ諸国の様々な国が加盟しているため、統合機関としてECHA(欧州化学機関)が設立されています。

本記事では、ECHAがEU域内で果たす役割や活動内容、ECHAが担うPFAS規制の現状などについて解説します。

 

INDEX

 

 

ECHA(欧州化学機関)とは

ECHA(欧州化学機関)は、EU加盟国の化学物質に関する規制を実施し、化学物質の安全な使用を促進するための専門機関です。2008年に設立され、フィンランドのヘルシンキに本部が置かれています。

また、REACH規則(化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則)を所管する主要な機関であり、その役割は広範囲に及んでいます。

 

ECHAが設立された経緯

ECHAは、EU域内における化学物質管理の一元化と強化を目的に設立された機関です。設立以前、EU加盟国はそれぞれ独自の規制を持ち、各国がそれに従って化学物質を運用していました。

このような状況下ではEU域内で化学物質管理の統一が困難であり、化学物質の安全性に関する情報共有にも課題がありました。
加えて、企業は国ごとに異なる規制に適応するための負担を強いられていました。

これらの問題に対処するため、EUは包括的な規制フレームワークを策定し、これを所管する専門機関としてECHAが設立されました。

 

ECHAの主な活動

ECHAは、EU域内での化学物質の安全な使用、人間の健康と環境の保護、および持続可能な化学物質管理を目的として、以下の主要な法律と規制を管轄しています。これらの法律に従って、ECHAは化学物質の評価、登録、認可、制限などの活動を行っています。

主要な法律と規制は以下の通りです。

 

条約・規制・法律 具体的な活動内容
REACH規則 化学物質の登録、評価、認可、制限を通じて、EU市場での安全な使用を保護
CLP規則 化学物質と混合物の分類、表示、包装を規定し、危険有害性を明確に伝達
殺生物性製品規則(BPR) 殺生物性製品の市場での利用と使用を規制し、人間、動物、環境を保護
PIC規則 特定の有害化学物質の輸出入を管理し、ロッテルダム条約に基づく処置や対策を実施
水銀規則 水銀の使用と排出を規制し、水俣条約の実施を確保
残留性有機汚染物質(POPs)規則 POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)の附属書に掲載される化学物質の禁止または制限

 

中でも、EU域内と世界各国の製品取引に大きな影響を及ぼすREACH規則とCLP規則については重要度が高いため、規則の概要やECHAが担う役割について詳しく解説します。

 

 

REACH規則とは

REACH

REACH規則は、EUが2007年6月1日に施行した化学物質の管理規則です。日本語では「化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則」と訳されており、人の健康や環境の保護、EUの化学産業の競争力の強化を目的としています。

REACH規則は、EU域内で製造または輸入される年間1 t以上のすべての化学物質に適用される包括的な規制です。この規則は、化学物質の製造者、輸入者、使用者に対して、化学物質の特性やリスクに関する情報を提供し、リスクを管理する責任を課しています。

 

REACH規則におけるECHAの役割

ECHAは、REACH規則の実施機関として、化学物質の登録、評価、認可および制限に関する業務を担当しています。

企業が提出する登録情報を評価し、必要に応じて追加の情報提供を求め、化学物質のリスクを評価します。また、特定の危険な化学物質の使用を認可するかどうかを判断し、認可が必要な物質については使用者に安全のための詳細な計画を要求しています。

 

 

CLP規則とは

危険物

CLP規則とは、EU域内で化学物質および混合物の分類、表示、包装に関する要件を定めた規則です。この規則は、国際的なGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に基づいています。

CLP規則では、化学物質および混合物を物理化学的危険性、健康有害性、環境有害性の3つのカテゴリーに基づいて分類します。これらのカテゴリーは、さらに詳細なハザードクラスに細分化されています。

危険有害性のある化学物質および混合物には、標準化されたラベルを用いて表示を行います。

【ラベルに表示される情報】

  • 製品識別名
  • 危険有害性を示す絵表示
  • 注意喚起を促す用語
  • 危険有害性の情報
  • 取り扱いの注意書き
  • 供給者の情報

 

CLP制度におけるECHAの役割

ECHAは、EU域内におけるCLP規則の実施において中心的な役割を果たしています。ECHAの主な役割は下記のようなものがあります。

 

  • 企業から提出される分類・表示の届出の受理と管理
  • 分類・表示インベントリの維持・管理
  • 分類・表示に関する提案の受理、評価、および意見提出
  • 企業向けガイダンスの作成と技術的・科学的支援の提供
  • 加盟国の所管官庁や欧州委員会との協力

 

 

ECHAが進めるPFAS規制の動向則とは

PFAS

ECHAでは一部のPFAS(有機フッ素化合物)に有害性があることを確認しており、PFASの特性やリスクに関する情報を収集し、使用制限や分類を行っています。本章では、ECHAが進めるPFAS規制の動向について解説します。

 

ECHAによるPFAS対応の流れ

ECHAでは、一部のPFASの中でも有害性が認められたPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)及びPFOA(ペルフルオロオクタン酸)について、発がん性の疑いがあると分類しています。

2023年2月7日には、ドイツ、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの5ヶ国がPFAS制限提案書を提出し、ECHAはこれを公表しました。

同年3月22日からは、広く意見を募るために6ヶ月間のパブリックコメントの受付を開始しました。この規制案では、PFASの製造、使用、上市を広範囲に制限することが提案されています。

PFASは約1万種類以上の化学物質が該当すると言われていますが、この提案では特定のPFASではなく、PFASの定義に該当する全ての物質を対象としています。ただし、規制の詳細や適用範囲については、今後の審議過程によって変更される可能性があります。

 

ECHAによるPFOAの評価

PFASの中でもPOPs条約で附属書A(廃絶対象)に掲載されているPFOAは、ECHAから有害性に対して厳しい評価がなされています。

ECHAがPFOAを危険視している理由は、その持続性、生体蓄積性、毒性(PBT)の特性、および広範囲な環境拡散性にあります。PFOAは一度環境中に放出されると分解されにくく、生物の体内に蓄積されやすい性質を持ち、多様な毒性が確認されています。

長期的な暴露による健康リスクも懸念されており、EU域内にとどまらないグローバルな環境問題としても注目されています。

具体的にECHAでは、PFOAを以下のように評価しています。

 

  • 発がん性の疑いがある
  • 生殖能または胎児に悪影響を及ぼすおそれがある
  • 長期暴露による臓器障害のおそれがある
  • 飲み込むと有害
  • 吸入すると有害
  • 重篤な眼の損傷を引き起こすおそれ
  • 授乳中の子に害を及ぼすおそれがある

 

 

ヨーロッパのPFAS規制動向に注視しましょう

欧米では、予防原則(化学物質などの新技術が、環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする制度)に則して、PFASに関する規制が先行しております。

ECHAはEU加盟国内における化学物質の取り扱いに大きな影響力を持っている機関です。PFASの規制・制限はECHAにより進められており、その影響は今後ますます大きくなると予想されます。

ECHAの動向は日本のPFAS規制に影響を及ぼす可能性も高いため、今後もヨーロッパのPFAS規制の動向に注視しましょう。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 高藤 晋さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ
セールス・マーケティングチーム

Manager 高藤 晋

<経歴>

2012年 University of Otago 微生物免疫学部卒
2015年 東海大学大学院 博士前期 修了
2019年 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム研究科博士後期課程修了
2019年 株式会社ベリタスに入社し、オルガノイド関連商材の展開に携わる。2024年より現所属。

オタゴ大学では、食品微生物など、東海大学ではトランスジェニック植物を使用したホルモン作用の解析、横浜市立大学では植物ホルモン化合物の定量分析などを行っていた。

 

 

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