WHO(世界保健機関)とは?活動内容やPFASとの関連性
投稿日:2024年11月21日
国際連合の専門機関の一つであるWHO(世界保健機関)は、疫病対策や食品安全性の確保など、多岐に渡る活動を行なっています。
近年では人体への有害性や環境に与える影響から国際的に議論が行われているPFAS(有機フッ素化合物)に関する研究にも取り組んでおり、様々な対策を講じています。
本記事では、WHOが担う役割や組織の歴史、近年のPFAS規制に対する関わり方について解説します。
INDEX
WHO(世界保健機関)とは
WHO(World Health Organization)の日本語名称は、世界保健機関です。「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的に設立された国際的組織であり、192ヶ国が加盟しています。主な役割は、疫病の予防と対策、健康課題の解決、公衆衛生の向上などがあります。
WHOは疫病に関する国際的な対策を実施
WHOが担う大きな役割の一つが、疫病に関する調査・対策です。近年ではCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)が流行した際に世界的な感染状況を発表し、主な感染経路や具体的な対応方法などを記載したガイドラインを公表しました。
また、過去に天然痘が流行した際には、封じ込めと予防接種のキャンペーンを展開し、その根絶に大きく寄与しました。
WHOは食品に関する活動も実施
WHOは疫病対策だけでなく、食品の安全性確保や健康的な状態に関するガイドラインの策定にも取り組んでいます。例えば、特定の食品添加物の安全性の評価や、推奨すべき1日あたりの塩分摂取量などを定めています。
WHOの歴史と成り立ち
WHOは、第二次世界大戦後の1948年に国際連合(UN)の専門機関として設立されました。設立の目的は「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」です。
WHOはこれまでに様々な疾病や健康課題に取り組んできました。1950年代には、結核やマラリアの撲滅キャンペーンを展開し、世界中での感染拡大を抑制。近年においては、2015年に流行したエボラ出血熱、2020年にパンデミックとなったCOVID-19においても疾病を抑えるための活動を行ってきました。
WHOと日本の関係性について
日本は1951年にWHOに加盟して以来、厚生労働省を中心にWHOとの密接な協力関係を築いています。
日本はWHO西太平洋地域に所属し、地域事務局と連携して保健医療分野の課題解決に取り組んでいます。
具体的には、世界禁煙デーなどのWHO主導のイベントやキャンペーンに積極的に参加しており、全国規模での啓発活動を実施しています。
また、パンデミック対策や健康増進プログラムなど、様々な国際保健課題においても日本は重要な役割を果たしています。国際保健政策の策定にも関与し、WHO総会などの場で意見交換を行い、世界の健康課題への貢献を続けています。
WHOとPFASの関連性は?
PFASはフッ素と炭素が強く結合した化学物質の総称で、その化学的安定性の高さから多くの産業製品に使用されています。
その中でもPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)は、環境への懸念からPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)で原則的な製造と使用が禁止(制限)されています。
PFASの特徴は、環境中や人体に半永久的に残り続ける残留性の高さです。自然界に排出されたPFASの一部は河川などで分解されずに残り続けます。そのため、土壌や地下水などの経路を通じて人が摂取する可能性があり、人体への影響が懸念されています。
飲料水におけるPFOS・PFOAの暫定ガイドライン値を規定
WHOは飲料水質のガイドラインを規定しています。現在の最新版は2018年に発行された第4版であり、飲料水におけるPFASの目標値は記載されていません。
しかし、2022年には暫定ガイドライン値が公表され、その値はPFOS・PFOAそれぞれの目標値で100 ng/L、複数のPFASの合算値として500 ng/Lとなっています。
2023年には、飲料水中のPFOS・PFOAに関するWHO飲料水水質ガイドライン策定の背景文書が公表されました。現在は正式なガイドライン策定のために、国際的な調査や調整を行っている状況です。
また、PFASのガイドライン策定に関して、WHOは加盟国に以下の方針を打ち出しています。
- 飲料水中のPFAS濃度を可能な限り低く抑えるように努めるべき
- 水源の汚染を最小限に抑え、新たな汚染源の発生を防ぐことが重要
- PFASの不必要な使用はやめるべき
- PFASのリスクは水供給の安全性などを考慮に入れてバランスを取るべき
一部のPFASが人体に及ぼす影響を研究
WHOの傘下にはIARC(国際がん研究機関)という組織があり、化学物質などが人体に及ぼす発がん性の可能性についての研究を行っています。
人体への影響が懸念されている特定のPFASに関しては研究が進められており、PFOAはグループ1(ヒトに対して発がん性がある)、PFOSはグループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)に分類されています。
IARCの研究・調査結果も考慮に入れた上で、WHOはPFASのガイドラインを策定しています。
WHOは疫病対策から健康まで幅広く携わる国際組織
国際保健の分野で中心的な役割を果たすWHOは、その活動範囲が多岐にわたります。PFASに関しては、傘下機関であるIARCによる発がん性の研究や、飲料水の水質ガイドライン策定など、重要な取り組みを行っています。
WHOが定める基準や指針は、世界各国の政策に大きな影響を与えます。特にPFASの飲料水における目標値が確立されれば、日本を含む多くの国々のPFAS規制動向に影響を及ぼす可能性があります。
WHOの多様な役割と重要性を理解し、今後の動向に注目することが重要です。
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【参考資料】
- Coronavirus disease (COVID-19)|WHO
- PFOS and PFOA in Drinking-water - Background document for development of WHO
- 天然痘(痘そう)とは|国立感染研究所
- 世界保健機関(WHO)、JECFAによる特定の食品添加物の安全性評価(WHO食品添加物シリーズ80)を公表|内閣府 食品安全委員会
- Massive efforts needed to reduce salt intake and protect lives|WHO
- 政策レポート(世界保健機関(WHO)と日本の関係について~第128回WHO執行理事会の動向から~)|厚生労働省
- 飲料水水質ガイドライン第4版 日本語版 (niph.go.jp) | 国立保健医療科学院
- PFOS、PFOA に関するQ&A集 2024 年8月時点|PFASに対する総合戦略検討専門家会議|環境省