ミネラルウォーターにPFASが含まれる可能性は?製品選びの注意点
投稿日:2024年11月28日
ミネラルウォーターとは、天然の水源から採取した飲料水のことを指します。殺菌や消毒を実施しているとはいえ、環境中の水をほぼそのまま使用しているため、ミネラルウォーターに含まれるPFAS(有機フッ素化合物)の有無について気になる方も多いでしょう。
この記事では、ミネラルウォーターにPFASが含まれる可能性や、製品を選ぶ際の注意点について解説します。
ミネラルウォーターとは?
ミネラルウォーターとは、地下水や山岳地帯の天然水源から採取された水で、ミネラル分を豊富に含む飲料水です。
一口にミネラルウォーターといっても大きく4つの種類があり、それぞれ原水や処理方法が異なります。ここでは、ミネラルウォーターの定義と種類について詳しく解説します。
ミネラルウォーターの定義
ミネラルウォーターの品質は、採水した地域の気候や地形などの環境条件に大きく関係しています。そのため、定義や製造方法、品名表示のルールなどは、世界各国の条件によって異なります。
日本の場合は、1995(平成7)年に改正された農林水産省の「ミネラルウォーターの品質表示ガイドライン」において、ミネラルウォーターの定義を以下のように記載しています。
地下水等のうち、カルシウムやマグネシウム等(硬度)およびpH値の項目を除いた水道法(昭和32年法律第177号)第4条に適合する、飲用適の水を容器に詰めたもの 上記のうち、炭酸飲料の日本農林規格(昭和49年農林省告示第567号)に規定する炭酸飲料を除いたもの |
日本では、以上の要件に該当するものをミネラルウォーター類として定義し、その品質表示についてガイドラインが規定されています。
ミネラルウォーターの種類
日本の場合、ミネラルウォーター類は、原水や処理方法によって大きく4つの種類に分類されています。ミネラルウォーター類の種類と特徴については、以下の表をご覧ください。
ミネラルウォーターの水質基準
日本の水道水とミネラルウォーターは、どちらも飲用に適した水ですが、それぞれ水質基準を定める法律に違いがあります。水道水の水質基準には水道法が適用されますが、ミネラルウォーターの水質基準を規定するのは食品衛生法です。
食品衛生法におけるミネラルウォーター類の規定には、製造基準と成分基準があり、水質分析項目は、除菌・殺菌工程の有無によって異なります。ミネラルウォーターの成分基準については、以下の表をご覧ください。
ミネラルウォーターにPFASが含まれる可能性はある
市販されているミネラルウォーターについて、PFASの成分基準や含有量の規制が存在するのか気になる方も多いでしょう。
実際、過去には国内で製造されたミネラルウォーターにPFASが含まれていた事例も発生しています。
ここでは、実際の事例を取り上げて紹介しながら、市販されているミネラルウォーターにPFASが含まれる可能性について解説します。
ミネラルウォーターのPFAS検査は企業次第
水道水に含まれるPFASについては、水道法によって「水道水に含まれるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の合算値で50 ng/L以下」という暫定目標値が設定されています。
PFOSとPFOAは、1万種類以上あるとされるPFASの中で特に人体への悪影響が懸念される化学物質で、日本では化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で製造や使用が原則禁止されています。
しかし、ミネラルウォーターに含まれるPFASの濃度については、日本の食品衛生法で規定された成分基準にPFASの項目はありません。
そのため、国内で販売されているミネラルウォーターにPFASが含まれていたとしても、法律違反にはなりません。
ミネラルウォーターに対するPFASの検査は、各企業の判断に委ねられているのが現状です。
PFASが含まれていた事例も
過去には、神戸市内で製造されたミネラルウォーターの中から、水道水に含まれるPFASの暫定目標値の2倍にあたるPFASが検出された事例が発生しました。
現状の国内の法律では、ミネラルウォーターにおけるPFASの検査は義務化されていないため、発覚した事例以外にもPFASが含まれている製品がある可能性は考えられます。
消費者がミネラルウォーターを購入する際には、企業の取り組みや検査体制を調べておくなど、慎重に商品を選ぶことが重要になるかもしれません。
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ミネラルウォーターからのPFAS曝露を避ける方法は?
消費者がミネラルウォーターからのPFAS曝露を防ぐには、原水の水質調査結果を調べることや、製造している企業の情報を確認することが大切です。ここでは、消費者がミネラルウォーターからのPFAS曝露を避ける具体的な方法について解説します。
原水の水質調査結果を調べる
ミネラルウォーターには、「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」で、必ず採水地を記載するように決められています。製品を選ぶ際には、原水の採水地を確認することで、PFAS曝露の可能性を幾分か下げられる可能性があります。
また環境省は、2019年から2020年にかけて、全国で「有機フッ素化合物全国存在状況把握調査」を実施しており、調査結果を公式サイトで公開しています。
購入前に採水地について知っておきたい方は、事前に環境省のデータを確認するのも選択肢の一つです。
PFAS検査を実施している企業の商品を選ぶ
世界的にPFASへの関心が高まっていることから、自主的にPFASの検査を実施する企業が増えています。
ミネラルウォーターの製造企業においても独自の基準で検査を行っているケースがあるため、製品を選ぶ際の参考にするとPFASの曝露を防げる可能性があります。
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PFASに注意してミネラルウォーターを選びましょう
日本においてミネラルウォーターとは、水のみを原料とした清涼飲料水を指します。
ミネラルウォーターの成分基準は食品衛生法で規定されていますが、PFASの基準値についてはまだ規定されていません。
消費者がミネラルウォーターによるPFASの曝露を防ぐには、採水地や企業の検査の有無を確認しながら製品を選ぶことが大切です。
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記事の監修者
ユーロフィン日本環境株式会社 品質保証グループ 第三者分析機関としての信頼性や適合性を担保するために、品質システムの整備や監視活動に従事。特に、当社では分析実施項目の大部分でISO/IEC 17025の認定を取得し、PFASについてもISO/IEC 17025認定を取得しており、それら認定の維持管理を主要業務としている。また、国内外のグループ会社と連携した相互監査や技能試験評価、品質会議など、世界中に展開しているEurofinsグループの強みを活かした取り組みも実施。 |
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【参考資料】
- ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン(平成7年改正)|農林水産省
- 清涼飲料水1 清涼飲料水の成分規格|厚生労働省
- ミネラルウォーター類|東京都水道局
- PFOS、PFOA に関するQ&A集2024 年8月時点|環境省
- ミネラルウォーター類の安全性について/衛研ニュースNo.172|神奈川県衛生研究所