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日本のPFAS規制の現状は?国内の動向や各省庁の取り組みについて解説

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投稿日:2024年5月21日

2人の男性調査員の採取

PFAS(有機フッ素化合物)は、世界的に規制が強化されている化学物質の一つです。日本でも輸入や製造を規制する動きが強まっており、各省庁で様々な議論が交わされています。

そのため、日本の企業は、規制に関する最新情報や今後の方向性などを把握しておくことが大切です。

この記事では、日本におけるPFAS規制の動向や各省庁の取り組みについて詳しく解説します。

 

INDEX

 

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは

バクテリアの採取

PFAS(有機フッ素化合物)とは、炭素とフッ素が強力に結合することで生まれる化合物です。通称「ピーファス」と呼ばれ、約1万種類以上の物質があるとされています。

PFASの中には、撥水性や撥油性、熱・化学的安定性等の物性を示すものがあり、それらの特性を活かして、界面活性剤や半導体用反射防止剤等の幅広い用途で活用されてきました。

一方、自然環境で分解されず半永久的に蓄積され続ける特徴もあり、一部地域では地下水から高濃度のPFASが検知された事例も発生しています。

一部の研究報告では、人や動物の健康へ影響を及ぼすことが指摘されており、世界中で規制強化に向けた動きが強まっています。

 

PFASが健康に与える影響

世界中でPFASが健康に及ぼす影響について研究が進められています。

動物実験では、肝臓の機能や体重減少等に影響を及ぼす可能性が指摘されており、人に対してはコレステロール値の上昇や免疫系等との関連が報告されてきました。

ただし、人の健康に影響を及ぼす摂取量などの確定的な知見はまだ報告されていません。

 

PFASが使用されているもの

PFASの中でも、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、幅広い用途で使用されてきた化学物質です。各物質が使用された代表的な製品については、以下の表をご参照ください。

 

PFOS、PFOAが使われていた製品
PFOS 半導体反射防止剤・レジスト、金属メッキ処理剤、泡消火薬剤など
PFOA フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤、カーペット等の繊維製品など

参考:環境省「PFOS、PFOAに関するQ&A集」

 

上記の製品以外で、フッ素コート剤を使用したフライパンや撥水スプレー等があります。しかし、これらの製品に使用されているフッ素樹脂は、PFOS・PFOAとは別の物質です。

過去にフッ素コート剤の製造過程でPFOAが使用されていたこともありますが、2013年末に企業の自主的な取り組みとしてその使用が全廃されました。

 

 

日本におけるPFAS汚染の状況

2人の男性技術員

日本でもPFAS汚染による問題が発生しています。ここでは、日本で発生したPFAS汚染問題のうち代表的な事例を2件紹介します。

1件目は、沖縄で発生した事例です。2010年に国内でPFOSの製造・使用・輸入が禁止されたことを受けて、2014年から沖縄県企業局が調査を実施。その結果、比謝川流域で高濃度のPFOS等が検出され、2016年にその実態を公表しました。

2件目は、東京都で発生した事例です。2020年に多摩地区の地下水から暫定目標値を超えるPFASが検出されました。その原因に関しては、現在も調査が進められています。

今回紹介した2件の事例以外にも、複数の場所で国が定める暫定目標値を超えるPFOSとPFOAが地下水から検出される事例が発生しています。

 

 

日本のPFAS規制

日本では、法律によってPFOSとPFOAの輸入・製造等が規制されています。また、水道水や公共用水域における暫定目標値も定められています。ここでは、日本で行われているPFAS規制の現状について詳しく解説します。

 

水質管理における規制

厚生労働省は、2020年にPFOSとPFOAを水質管理目標設定項目に位置付け、合算値で50 ng/L以下とする暫定目標値を定めています。

この決定に基づいて、飲料水中のPFOS・PFOA濃度が暫定目標値を超えることがないように、全国の水道事業者等にお願いをしています。

また、環境省でも厚生労働省の暫定目標値と同様に、公共用水域や地下水におけるPFOS・PFOA濃度を合算値で50 ng/L以下とする暫定目標値を定めています。

 

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輸入と製造に関する規制

日本では、PFASの輸入・製造等について「科学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」に基づいた規制を進めてきました。

PFOSは、2010年に第一種特定化学物質に指定され、2018年には全ての用途で製造・輸入等を原則禁止しました。PFOAについては、2021年に第一種特定化学物質に指定し、製造・輸入等を原則禁止としています。

さらに、2024年2月にPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)も第一種特定科学物質に指定され、6月以降は輸入が原則禁止となる予定です。

 

 

日本のPFAS規制における各省庁の取り組み

厚生労働省

国内でのPFAS規制に関しては、現在も様々な角度から議論が継続されています。ここでは、各省庁で実施している取り組みについて紹介します。

環境庁では、学識経験者等からなる「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」を環境省水・大気環境局に設置して議論を進めています。

2023年7月に実施された会議では、今後の方向性として、PFOSとPFOAの管理方法やばく露した地域の詳細な調査、科学的知見に関する情報の充実などが挙げられていました。

厚生労働省では、水質逐次検討会を定期的に開催しています。2023年度に実施された検討会では、水質基準等の改正案や鉛及びその化合物の採水方法について議論が行われました。

農林水産省では、優先的にリスク管理を行う有害物質としてPFASを位置付け、食品安全に関するリスクプロファイルシートを公開しています。

 

 

日本企業もPFASへの対策が求められる

日本では、2010年に化審法でPFOSの輸入や製造などが原則禁止となり、PFASが規制され始めました。また、2020年には水道水や地下水の暫定目標値が決められ、全国の水道局等で対応が求められています。

実際に全国各地で高濃度のPFOSやPFOAが検出された事例も発生しており、今後もPFASを規制する動きが強まっていく可能性は高いでしょう。

今後は法的な規制だけでなく、社会の風潮として日本企業全体がPFASへの対策を求められることが予測されます。

 

 

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記事の監修者

ユーロフィン日本環境株式会社 高藤 晋さん

ユーロフィン日本環境株式会社

横浜PFAS事業部 PFASグループ
セールス・マーケティングチーム

Manager 高藤 晋

<経歴>

2012年 University of Otago 微生物免疫学部卒
2015年 東海大学大学院 博士前期 修了
2019年 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム研究科博士後期課程修了
2019年 株式会社ベリタスに入社し、オルガノイド関連商材の展開に携わる。2024年より現所属。

オタゴ大学では、食品微生物など、東海大学ではトランスジェニック植物を使用したホルモン作用の解析、横浜市立大学では植物ホルモン化合物の定量分析などを行っていた。

 

 

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