EFSA(欧州食品安全機関)とは?役割やPFASとの関連性

投稿日:2025年3月日
日本に食品安全委員会があるように、欧州にもEFSA(欧州食品安全機関)と呼ばれる食品の安全性を評価する機関が存在します。
食品の生産から消費まで幅広い過程の情報収集と評価を行うため、近年環境や人体への影響か懸念されるPFAS(有機フッ素化合物)の取り組みや対策も行われています。
本記事では、EFSAがどのような機関であるのか、歴史や役割、戦略目標、PFASへの取り組みなどを具体的に紹介します。
INDEX
EFSA(欧州食品安全機関)とは?
EFSA(European Food Safety Authority 通称:エフサ )は、欧州において食品安全に対して科学的な根拠を元にリスクを評価し、助言を与える役割を持つ機関です。日本では別名「欧州食品安全機関」と呼ばれています。
EFSAがリスク評価を行う範囲は幅広く、欧州で流通している食品全般はもちろん、飼料、植物・動物保護に関する権限も持ち合わせています。
EFSAの歴史
EFSAは、1990年代のBSE(狂牛病)などの食品に関連した危機を受け、食品安全に関する科学的助言の重要性が高まったことから設立されました。
このような食の安全に関わる問題がきっかけとなり、2002年にEU全体で独立したリスク評価機関としてEFSAが発足されました。本拠地はイタリアのパルマにあります。
日本の食品安全委員会は2003年に設置されており、歴史・役割とも似たような存在であるといえます。
EFSAの役割
EFSAは、EC(欧州委員会)などの欧州の機関や一般市民から与えられた食品に関する疑問に対して、科学的根拠に基づく情報収集・評価を行います。
食品・飼育・植物・動物など、フードチェーン(生産から消費に至る過程)全体の情報収集を行い、的確なアドバイスを提供することで、消費者や食品の安全を守っています。
その他の欧州機関から独立しているEFSAは、様々な情報を公平な立場で判断することが可能です。
食品に関する科学的な知見の提供は透明性が重視され、EFSAの資料には収集した情報のソースが公開されています。
EFSAの3つの戦略目標
EFSAは組織の重要ミッションとして、「2027年戦略目標」という3つの目標を掲げています。
- フードチェーン全体において、信頼できる科学的知見とリスクを伝える
- リスク分析が必要な事案に対して迅速に行動・措置を行う
- 食品安全管理の知見を持つ人材を育成し、信頼性の高い組織を構築する
EFSAは公平な立場から信頼性・透明性のある助言を与えることで、欧州および加盟国における食品関係の法的な取り組みに強い影響を与えています。
また、リスク分析に必要な知識や技術、データを収集するノウハウを身につけることで、将来的に想定される新しいリスクにも備えています。
円滑な情報収集と共有を行うために、ECHA(欧州化学機関)や、WHO(世界保健機関)等の国際的なリスク評価機関と長期的に連携を取ることもEFSAの重要な役割の一つです。
EFSAが取り組むPFASへの対策
EFSAでは、永遠の化学物質として危険視されているPFASのリスク評価も行っています。
PFASの中でも一部の化学物質は、発がん性や免疫力低下作用など人体への影響があるとされており、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)によって世界的に規制強化が進んでいます。
また、海外の規制を受けて、日本でも化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)により、下記の3種類のPFASの製造・輸出入が原則禁止されています。
- PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
- PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
- PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)
ここからは、EFSAが取り組んでいるPFASの対策について、代表的なものを紹介します。
食品に含まれるPFASの公衆衛生リスクを評価
EFSAは、食品に含まれるPFASの毒性や人体への影響などの公衆衛生リスクの評価を行っています。
EFSA の健康リスク評価によると、PFASは魚介類、卵、乳製品、果物、飲料水などの食品を通じて摂取される可能性が高いことが報告されています。
EFSAは食品中に含まれるPFASについて、生涯にわたって摂取しても悪影響を及ぼさないTWI(耐容週間摂取量)を設定しており、PFOA・PFOS・PFHxS・PFNA(ペルフルオロノナン酸)の4種類の合計で4.4 ng/kg/wを設定しています。
また、欧州委員会の勧告により、食品中のPFASに関するデータを収集・分析し、政策立案者や関係機関に向けた提言を行うなど、欧州の食品の安全を守る働きも担っています。
農薬活性物・プラスチック食品接触材料の安全性の評価
EFSAは食品だけではなく、PFASを含む農薬活性物・プラスチック食品接触材料の評価も行っています。
EFSAは食品に含まれる農薬量(最大残留基準値)を設定し、経口摂取によるPFAS曝露のリスクを抑えています。この最大残留基準値を参照し、EU加盟国は公的検査を行うことを義務付けられています。
また、PFASを含むプラスチック食品接触材料から食品にPFASが移行するリスクに対して情報提供を行い、市民にPFAS汚染ルートを共有する等の対策を行っています。
PFASへの新しいアプローチ方法の開発
PFASが人の免疫系に影響を与える可能性が示唆されていますが、具体的にどのようなメカニズムでどういった影響があるのかについては分かっていません。
EFSAはPFASへの新しいアプローチ方法を開発することで、それらのプロセスを明らかにする取り組みを行っています。
近年の研究では、標的免疫ヒト細胞ベースのin vitroモデルを使用して調査を行い、生体内での働きを予想するために生理学的動態モデルを考案しました。このアプローチ方法を開発することで、PFASに関するより具体的な情報を提供することが可能になります。
EFSAはEU内の食品に関する安全性を評価する組織
EFSAはEU域内の食品・農薬などのフードチェーン全体を調査し、安全性やリスクを評価する機関です。
EU内外の様々な国際機関と連携しており、PFASに関する最新の研究や情報収集、発信も積極的に行っています。
EU域内の食品に関する情報機関として大きな信頼を得ているため、今後はEFSAが提供するPFASの情報についても注視しましょう。
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【参考資料】
- About us|EFSA
- European Food Safety Authority (EFSA)|EU
- EFSA戦略2027|EFSA
- Per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS)|EFSA
- EFSA Project on the use of NAMs to explore the immunotoxicity of PFAS|EFSA
- PFAS in food: EFSA assesses risks and sets tolerable intake|EFSA
- Risk to human health related to the presence of perfluoroalkyl substances in food|EFSA