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PFAS(有機フッ素化合物)の汚染の実態は?アメリカや日本で発生した事例

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投稿日:2025年2月6日

日本国旗とアメリカ国旗

PFAS(有機フッ素化合物)は、撥水・撥油性等の優れた特性から、かつては多様な種類の製品に用いられてきました。

しかし、近年では一部のPFASに生物・人体への影響があると懸念されており、日本を含めた世界中で厳しく規制されています。

また、アメリカや日本を含めた世界各国でPFASによる汚染が報道され、社会問題となっているケースもあります。今回の記事では、PFASの汚染の実態について、アメリカや日本で最近発生した事例の一部を紹介します。

 

INDEX

 

PFAS(有機フッ素化合物)とは?

顕微鏡

PFAS(有機フッ素化合物)とは、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物を総称した化学物質群を指します。

OECD(経済協力開発機構)によれば「完全にフッ素化されたメチルまたはメチレン炭素原子を少なくとも一つ含むフッ素化合物」と定義されており、その数は1万種類以上にも及ぶと言われています。

PFASには持続性・難分解性・長距離移動性などの特性があり、一度環境中に放出されると分解されにくいことから「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」とも呼ばれています。

また、PFASの中には、人体や生物に影響を及ぼし得ると判断され、日本を含めた世界各国で製造・輸出等が禁止されている化学物質もあります。

日本の場合、以下の3つの物質については2024年11月現在、既に化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)により製造・輸出等が禁止されています。

 

  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

 

 

PFAS汚染は主に工業・産業分野で発生

工場

PFAS汚染は、主に工業・産業分野で発生しているという特徴があります。

PFASは優れた撥水性、撥油性、耐熱性を誇ることから、泡消火薬剤や洋服のコーティング剤、半導体の製造など多様な用途に使用されてきました。

製品自体にPFASが含まれるケースはもちろん、製造に伴って発生する排水・排気内にもPFASが含まれるため、適切な処理をしなかったことが原因で土壌や地下水が汚染される事例も見られます。

 

 

PFAS汚染による弊害

男性医師と女性医師

PFAS汚染による弊害として考えられるものは以下の通りです。

 

  • 周辺住民の曝露による健康被害
  • 自然環境への影響
  • 集団訴訟

 

PFASのうち、PFOAに関してはIARC(国際がん研究機関)により「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」物質に分類されています。また、PFOSに関しても「ヒトに対して発がん性がある可能性がある(グループ2B)」に分類されています。

なお、PFASの毒性については研究段階であるため、健康被害が確認された明確なデータはありません。日本でも、正式に被害が特定された実例がないというのが実情です。

 

  

アメリカにおけるPFASの汚染事例

アメリカ全土では、これまでに多数のPFAS汚染事例が報告されており、その一部は企業を相手取った裁判に発展するなど深刻な事態になりました。

ここでは、代表的なPFAS汚染の事例をいくつか紹介します。

 

製品製造による汚染事例

大手化学メーカーB社が製品製造の過程でPFASを放出し、飲料水および野生生物の生息地を汚染したという理由で、アメリカ中西部の州との訴訟に発展しました。

2018年に両者は和解していますが、B社は巨額の賠償金を支払うことに合意しています。

また、B社は2025年までにPFASの製造を全面的に終了させることを2022年12月の時点で明らかにしました。

  

飲料水の汚染事例

大手化学メーカーのC社・D社は、同社の工場から流出したPFOAが飲料水に混入したことを理由に、アメリカ東部の2州の住民から数千件にものぼる訴訟を起こされていました。こちらに関しても2017年2月に和解に至りましたが、多額の和解金の支払いを余儀なくされています。

 

軍事基地の汚染事例

軍事基地においても、主に消火訓練に使用する泡消火薬剤の影響によるPFAS汚染が多数報告されています。

代表例として挙げられるのが、ミシガン州にある旧ワーツスミス空軍基地です。この基地の消火訓練で使用した泡消火薬剤の流出が原因で、周辺の地下水に深刻な汚染がもたらされました。ミシガン州環境五大湖エネルギー省 (EGLE) によれば、2010年3月に同省スタッフが旧基地の消防訓練エリアでサンプル採取を行い、地下水中のPFAS濃度の異常が発覚したとのことです。
この事態を受け、2019年には同州のグレッチェン・ホイットマー知事は行政命令を行い、それに基づき、MPART(ミシガン州対応対策チーム)が設立されています。

MPARTは設立以後、飲料水のサンプル分析に基づく規制の制定や、地下水浄化基準の策定、消防署・空港からの泡消火器の撤去など、様々な施策を講じてきました。

これらの動きを受けて、アメリカ国防総省は2023年8月に浄化策の一環として、旧ワーツスミス空軍基地の施設内に地下水処理システムを設置することを明らかにしています。

 

農地の汚染事例

アメリカ北東部の州・メイン州は、ジャガイモやブルーベリーなどの農業が盛んな州として知られています。

2016年に州内で生産された牛乳からPFASが検出されたことで、州政府観光保護局が詳しく調べたところ、州内各地の水路や土壌がPFASに汚染されていたことが発覚しました。

飼料用の牧草やマメ科植物は土壌中のPFASを吸収する傾向があり、それを食べた牛やその牛から搾乳した牛乳も結果として汚染されていました。

この結果を受けて、メイン州では同州内の農家に対し、農地のPFAS汚染対策として、次のことを実践するよう呼びかけるなど、具体的な解決に向けて行動要請を出しています。

 

  • 畑、井戸のPFAS汚染レベルの検査
  • マメ科植物・牧草畑のトウモロコシ畑への転換
  • 芝刈り機のメンテナンス
  • 過放牧の回避

 

なお、メイン州は連邦法よりさらに厳しい規制であるPFAS類汚染防止法(Act To Stop Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl Substances Pollution)を制定していることでも知られています。

また、メイン州の動きを受けて、ミネソタ州なども同様に厳しい規制を設ける方針を打ち出しています。

 

 

日本で発生したPFASの汚染事例

実験風景 PFAS

最後に、日本で発生・報道されたPFASの汚染事例についても紹介します。なお、今回取り上げた事例はあくまでも一例であり、2024年12月時点で公表、報道されている情報に基づく点に留意してください。


<汚染事例1>
2022年10月に、岡山県中央部の吉備中央町にある円城浄水場の水質検査を行ったところ、PFOSおよびPFOAが約1,400 ng/Lの濃度で検出されました。

有志による血液検査を受けた住民からは、米国科学・工学・医学アカデミーが「健康影響のリスクが高まる」と結論付けている20 ng/mL(血清/血漿濃度)を超えるPFOAが検出されたという報道もあります。

 

<汚染事例2>
2024年9月に、広島県東広島市で、同市内の瀬野川水系から高い濃度のPFOS・PFOAが検出されたことが報告されました。こちらの事例に関しては、同市内のアメリカ軍川上弾薬庫で、旧式の泡消火薬剤を使用した消防車の点検および訓練が行われていたことが報道されていました。

 

 

PFASの汚染事例と国の対策に注視しましょう

 PFAS 水

日本でも海外の事例のように地域住民が独自で調査を行い、水道水や土壌のPFAS汚染が明らかになる事例が少しずつ増えています。

しかし、PFASに関してはまだ明らかになっていない事実も多く、人体にどの程度の量や濃度で影響を及ぼすかについては確定的な知見が得られていないのが実情です。

なお、国内では水道水中のPFOSおよびPFOAの暫定目標値を50 ng/Lと定めています。これは水道水を1日2 L生涯にわたって摂取しても、健康への影響が現れない濃度として想定されている数値です。

仮に水道水中のPFOSおよびPFOAの濃度がこの数値を上回っていた場合、国や自治体が住民に対して注意を呼びかける可能性が高いでしょう。

「国や自治体からのアナウンスに注視する」「水道水を飲むときは浄水器を通す」「出所の不明な水は飲まない」など、まずは自分たちにできる範囲からPFAS対策を意識していきましょう。

 

 

 

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記事の監修者

品質保証グループ

ユーロフィン日本環境株式会社 品質保証グループ

第三者分析機関としての信頼性や適合性を担保するために、品質システムの整備や監視活動に従事。特に、当社では分析実施項目の大部分でISO/IEC 17025の認定を取得し、PFASについてもISO/IEC 17025認定を取得しており、それら認定の維持管理を主要業務としている。また、国内外のグループ会社と連携した相互監査や技能試験評価、品質会議など、世界中に展開しているEurofinsグループの強みを活かした取り組みも実施。

 

 

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