FIB加工による断面観察・解析
FIB加工による断面観察・解析
FIB(Focused Ion Beam:集束イオンビーム)は、イオンビームによって試料を精密に加工し、狙った場所の断面を観察できる装置です。
画像を観測しながら、目的の場所の断面を正確に露出することができるほか、イオンビームによって発生した二次電子により金属などの結晶粒の観察が可能です。
動作原理
試料に電子線を照射した際に発生する二次電子や反射電子を検出することで像観察を行います。また、同時に発生する特性X線は元素によって固有のエネルギーを持つため、特性X線の分光スペクトルのピーク位置・強度から元素の種類・量を調査することができます。
特にこんな場合、FIBを用いた断面観察が最適です
- 観察対象が微小で、通常の研磨では追いこめない
- 研磨作業によるキズやダレで、不具合箇所が消えてしまう
- 研磨作業で観察対象(異物など)が飛んでしまう
不具合箇所が特定できない/場所による状況変化を見たい
- ショートは判明しているが、配線のどの場所か判らない
- 配線やバンプの形状変化を見たい
- 接合部の状態を3次元的に見たい
不具合の真因をつきとめたい
- ワイヤーボンドの高抵抗原因を調べたい
- めっきの層数と厚さを調べたい
- 腐食の 状況を見たい
至急、不具合原因を知りたい
- 短期間で複数個所を確認したい
FIBで広い範囲を見たい
- ワイヤーボンドの接合状態を全幅見たい
- はんだボールの断面全体を見たい
- VCSELの断面を両側トレンチまで含めて見たい
観察範囲最大200μmです
観察事例
観察事例 | FIB加工
断面の連続観察(スライス&ビュー)
従来、FIB加工・観察といえば、指定した場所をピンポイントに観察することでしたが、前後の状態を連続観察できる様になりました。
観察ポイントがあいまいな場合でも、不具合箇所を探しながら観察することが可能です。また、3次元的な状況も把握でき、観察面の奥に潜んでいる真因も見逃しません。
画像は、ワイヤーボンドのスライス&ビューです。これまで(2)の画像だけで安心していましたが、さらにその奥に故障の種が潜んでいました。
(1) 加工前
異常なし
(2) 中央まで加工
異常なし
(3) 中央から少し奥まで加工
ボールとパッドの隙間が拡大
(4) 更に奥まで加工
腐食とみられる異物を確認
SEM像・SIM像を用いた統合解析
微小形状の観察に適した SEM-二次電子像、結晶粒の観察に適した SIM像をまとめて取得し、統合的に解析します。
下の画像は、ワイヤーボンドの高抵抗原因が腐食による金属間化合物中の酸化物であることを示しています。
二つの像から、腐食による酸化物と推定できます。
(1)SEM-二次電子像
金属間化合物相がスポンジ状のように見える
(2)SIM像
実際にはスポンジ状部分に空隙は少ない
多数箇所自動加工
従来の手法では、1日1~2箇所しか観察できませんでしたが、5~10箇所の加工・観察が可能となりました。
FIB加工箇所の全体像(左)とパッド断面の拡大観察像(60°傾斜)(右)
写真の例のような解析のご要望でも、分析開始後1日程度※で結果報告が可能です。
※繁忙時やご依頼内容によりお時間をいただく場合がございます。
FIBによる観察事例
電極パッドの断面
不揮発性メモリの断面
FIB加工により、メモリセルの観測したい場所の断面を狙い通りに作製できます。
多層薄膜とはんだの接合部断面
SIM(走査イオン顕微鏡)像は、ニッケルと銅のように、SEM(二次電子顕微鏡)像観察では区別が難しい、原子番号が近い金属で構成された多層膜の構造が鮮明に観測できます。
FIB装置仕様
型格 |
項目 |
SPEC |
---|---|---|
JIB-4501 |
ビーム電流 |
0.5 pA~60 nA |
分解能 |
最高 5 nm |
|
サンプルサイズ |
おおよそ 50 mm× 50 mm×15 mmH |