医薬品工場で用いられる消毒剤の有効性評価の受託
医薬品工場で用いられることを目的とした消毒剤メーカー、医薬品工場で消毒剤を用いることを検討している医薬品メーカーで、各種ガイドラインに基づいた消毒剤の有効性評価を実施したいとお考えではないでしょうか。
ユーロフィン分析科学研究所では、GMP省令準拠管理下で、各種ガイドラインに準拠し、試験法確立から、バリデーション、消毒剤の有効性評価が実施可能です。
消毒剤の有効性評価に関するガイドライン
消毒剤の有効性評価に関するガイドラインとして、主に以下3つがあります。
- 無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針
- 日本薬局方(JP18)参考情報「消毒法及び除染法〈G4-9-170〉」
- USP<1072>DISINFECTANTS AND ANTISEPTICS
それぞれについて簡単に説明します。
無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針
本指針は、無菌医薬品に係る製品の製造業者及び薬事監視員に無菌性保証に関する基本的な考え方及び製造管理のあり方を示し、無菌医薬品に係る製品の品質の確保に役立てることを目的としています。
以下20章と参考情報で構成されています。
- 序論
- 用語の定義又は説明
- 品質システム
- 職員
- 職員による汚染防止
- 構造設備
- 無菌医薬品に係る製品の作業所
- 無菌医薬品に係る製品の作業所の清浄化及び消毒
- 原料並びに容器及び栓の管理
- 無菌中間製品の保管及び輸送の管理
- 環境モニタリング
- 製造設備及びユーティリティの適格性評価
- 滅菌工程
- 無菌製造設備の定置清浄化(CIP)
- 無菌製造設備の定置蒸気滅菌(SIP)
- 無菌充てん工程
- ろ過滅菌工程
- 凍結乾燥工程
- アイソレータ/バリアシステム/ブローフィルシール
- プロセスシミュレーション
これらのうち、8章「無菌医薬品に係る製品の作業所の清浄化及び消毒」は、消毒剤及び洗浄剤、消毒手順のバリデーション、清浄化及び消毒の実効性のモニタリングの項で構成されています。
消毒剤について以下の要求事項が記載されています。
- 消毒手順に係る効果及び頻度は、環境モニタリングプログラムを通して確立すること
- 使用する消毒剤については、製造所毎に微生物学的評価を行い、適切な管理手順を定めること
- 消毒剤の有効性は、環境モニタリングプログラムの中で表面から採取される微生物数を規格値の範囲内で管理する観点から評価を行うこと
消毒剤は、その有効性評価を行う必要があるとされています。
日本薬局方(JP18)参考情報「消毒法及び除染法〈G4-9-170〉」
本参考情報は、医薬品の製造所において清浄度の管理が必要な清浄区域又は無菌操作区域における構造設備、及び同区域での製造管理及び製造作業に従事する職員(作業者)の衛生管理のうち、化学薬剤を用いて生存する微生物の数をあらかじめ設定したレベルまで減少させる処置法が示されています。
消毒法では、対象物又は局所的な部位に生存する微生物を全て死滅させたり、除去したりするものではないが、適用に当たっては有効性が確認された消毒剤を採用することとされています。
消毒剤の例として、以下が挙げられています。(表1)
表1:消毒剤の種類、使用濃度例、作用機作
清浄区域及び無菌操作区域等に消毒法を適用する場合は、消毒剤の濃度、作用時間、消毒対象となる表面の材質、その消毒剤で減少させたい微生物の種類等を考慮し、その条件の有効性を確認することとされています。
消毒剤の有効性評価として、試験菌懸濁法と硬質表面キャリア法の2種類が例示されています。科学的に正しいことが立証できれば、例示した評価法以外の方法を採用しても良いとされています。
試験菌懸濁法の概要は、以下の通りです。
実際に使用する希釈液を用いて、実際に使用する濃度の消毒剤を調製します。
調製した消毒剤1 mL当たり105~106CFUの試験菌を接種します。
規定時間、通例は5~15分作用させた後に、消毒剤を希釈又は除去します。
必要に応じて不活化剤を含有する液を用いて消毒剤を中和します。
生菌数試験を実施し、消毒剤作用前後の試験菌数から対数減少値(LRV)を算出します。
判定基準について、細菌・真菌はLRV3以上、芽胞形成菌はLRV2以上で適合です。
硬質表面キャリア法の概要は、以下の通りです。
各種表面材質のキャリアを適切な制度が得られる数量準備します。
試験菌を1キャリア当たり105~106CFUになるように広範囲に接種します。
接種菌が乾燥する前に、実使用濃度の消毒剤を滴下します。
規定時間、通例は5~15分作用させた後に、回収液でキャリア上の試験菌を回収します。
回収液は、必要に応じて不活化剤(レシチン、ポリソルベート80、チオ硫酸ナトリウム等)を含有する液を用いて消毒剤を中和します。
回収方法は、JIS T11737-1を参考にストマック法、振とう法、スワブ法等を採用します(補足)。
生菌数試験を実施し、消毒剤作用前後の試験菌数から対数減少値(LRV)を算出します。
判定基準については、先ほどの試験菌懸濁法と同様です。
(補足)各回収方法の手順と特徴
上記の有効性評価に使用する試験菌は、表2を参照し、必要な菌種を選定する他、環境モニタリングで検出頻度の高い菌を1~2株追加することが望ましいとされています。
表2:試験菌
また、清浄区域又は無菌操作区域で使用される各種表面の材質の例が表3のように挙げられていますが、評価においては実際に使用する状況を考慮の上、適宜追加することとされています。
表3:消毒対象となる材質例
USP<1072>DISINFECTANTS AND ANTISEPTICS
USPでは、消毒剤(chemical disinfectants)の選定、消毒剤の有効性(細菌、真菌、芽胞形成菌)の評価方法、無菌医薬品製造区域での消毒剤の適用、レギュレーションと安全配慮事項について述べられています。
当社の消毒剤の有効性評価のサービス概要
まず、消毒剤メーカー、消毒剤のユーザーである医薬品製造工場の方が、実際にどのようなパラメータを考慮して、消毒剤の有効性評価をする必要があるか表4にまとめました。
表4:消毒剤の評価方法のパラメータ
パラメータ |
評価方法(評価者) |
備考 |
消毒剤の種類・濃度 |
試験菌懸濁法(消毒剤メーカー) |
使用場面、使用方法を想定し、消毒剤メーカーが基本的な消毒剤の有効性を検証する |
消毒剤の作用時間 |
試験菌懸濁法(消毒剤メーカー)
|
|
消毒対象となる表面の材質 |
硬質表面キャリア法 (ユーザー=医薬品製造工場) |
ユーザーが、製造エリアの消毒対象となる表面材質に対してデータを取得する |
消毒剤で減少させたい微生物の種類 |
試験菌懸濁法(消毒剤メーカー) 硬質表面キャリア法 (ユーザー=医薬品製造工場) |
薬局方記載の試験菌(細菌、真菌、芽胞形成菌) 製造エリアでの環境検出菌 |
消毒剤の種類・濃度と消毒剤の作用時間には、消毒剤メーカーが試験菌懸濁法を用いて、使用場面、使用方法を想定し、基本的な消毒剤の有効性を検証します。
消毒対象となる表面の材質は、ユーザーである医薬品製造工場の方が硬質表面キャリア法を用いて、製造エリアの消毒対象となる表面材質に対してデータを取得します。
消毒剤で減少させたい微生物の種類は、消毒剤メーカー及びユーザーが、どの種類の菌を想定すべきかを決めます。
当社の消毒剤の有効性評価のアプローチは、以下の通りです。
まず、お客様には、試験仕様の決定をしていただきます。
具体的には、試験菌懸濁法か硬質表面キャリア法か、消毒剤の選定(種類・濃度)、適用方法の決定(噴霧又は塗抹、適用時間)、適用材質の決定、対象菌株の決定、計画書及び報告書の作成言語、ご希望納期などです。
いただいた情報をもとに、それ以降は、当社が実施します。
まず必要に応じて、消毒剤の中和方法の検討などの予備検討を実施します。
試験仕様に基づき、試験計画書を作成します。
続いて、試験実施前に、生菌数試験のバリデーションを実施します。
その後、消毒剤の有効性評価を実施します。
最後に、報告書を作成して終了です。
生菌数試験の検討・バリデーションは、JP 4.05の微生物限度試験法に準拠して実施します。
試験方法は、カンテン平板混釈法、カンテン平板表面塗抹法・スパイラルオートプレート法、メンブランフィルター法があります。
それぞれの試験方法の手順と特徴を表5にまとめています。
表5:試験方法の手順と特徴
以下に示した条件で、適合性試験を実施して、適切な試験方法を選択します。
- 消毒剤存在下:回収液 10 mL+消毒剤 X mL+試験菌液1 mL
- 接種菌数計測用:回収液 10 mL+試験菌液1 mL
→試験法に従い平板作成… 消毒剤存在下(n=2)、接種菌数計測用(n=2)
試料溶液:混釈法=1 mL,塗抹法=0.1 mL,MF法=10 mL - 培地:細菌=SCDA、真菌=SDA(必要に応じて中和剤添加)
- 培養:細菌=30~35℃・3日間以下、真菌=20~25℃・5日間以下
- 回収率計算:(消毒剤存在下/接種菌数計測用)×100(%)
- 判定基準:回収率 50~200%
消毒剤の有効性評価について、硬質表面キャリア法の実施例を簡単に説明します。
まず、試験菌液を、1キャリア当たり105~106 CFUになるように6枚に添加し、菌液を塗り広げます。
(上の図)うち4枚は、実使用濃度の消毒剤を添加し、規定時間、ここでは10分後2枚、15分後2枚、作用させます。それぞれについて振とう法で回収します。
(下の図)また、うち2枚は、陽性対照(PC:Positive Control)として振とう法で回収します。
その後、回収液を希釈し、PC×100、15分後×1,×10,×100を試料溶液とします。
カンテン平板混釈法を用いて、生菌数試験を実施します。
陽性対照と15分後の菌数からLRVを算出します。
結果報告例を表6に示しました。
表6:消毒剤の有効性評価(報告例:評価素材ステンレス、作用時間15分)
使用した試験菌に対して、それぞれ、接種菌数、消毒剤15分後の菌数、それらから算出したLRVを記載しています。
判定基準は、細菌、真菌がLRV 3以上、芽胞形成菌がLRV 2以上なので、本消毒剤の有効性評価は適合となります。
消毒剤の有効性評価を当社に依頼するメリット
- 消毒剤の有効性評価を試験法確立から任せられる
- 微生物学的試験に長年の実績があります
- BSL-2に対応した実験室を完備
試験だけでなく、試験法確立から一気通貫で任せられます。
硬質表面キャリア法における消毒対象となる材質では、ステンレス、ガラス、化粧ケイ酸カルシウム、塩化ビニル等の実績があります。
また、当社は13年間アステラス製薬株式会社のグループ会社として、多くの医薬品事業に携わってきました。その中で、微生物学的試験についてノウハウや経験を積み重ねてきました。
消毒剤の有効性評価を含め、様々な微生物学的試験を実施するための、BSL-2に対応した実験室を完備しています。
医薬品工場を用いられる消毒剤の有効性評価をお考えであれば、当社をご活用ください。
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