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ユーロフィン分析科学研究所株式会社 >> 技術コラム >> 2024年「元素不純物試験の取扱いに関する質疑応答集(Q&A)について」の概要を解説

2024年「元素不純物試験の取扱いに関する質疑応答集(Q&A)について」の概要を解説

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第十八改正日本薬局方において、一般試験法「2.66 元素不純物」に ICH-Q3D ガイドラインの管理規定を示した参考情報「G1. 製剤中の元素不純物管理」が統合されICH-Q3Dガイドラインを踏まえた元素不純物管理が日本薬局方の製剤に適用されることになりました。

令和6年(2024年)7月1日以降は経過措置期間の終了に伴い、これらの記載に即した管理が必須となりました。

これまで、元素不純物の取扱いについては、「医療用医薬品に係る元素不純物の取扱いについて」(令和2年12月28日)、及び「要指導・一般用医薬品に係る元素不純物の取扱いについて」(令和4年12月12日)により示されていました。

 

今回新たに、厚生労働省より令和6年6月25日事務連絡「元素不純物の取扱いに関する質疑応答集(Q&A)について」が発出されました。

また、同日に「第十八改正日本薬局方第一追補の制定に伴う医薬品等の承認申請等に関する質疑応答集(Q&A)について」も発出されており、こちらの通知でも元素不純物試験について言及されている箇所があります。

 

これらに伴い、「医療用医薬品に係る元素不純物の取扱いに関する質疑応答集(Q&A)について」、及び「要指導・一般用医薬品に係る元素不純物の取扱いに関する質疑応答集(Q&A)について」は廃止されました。

 

本技術コラムでは、元素不純物試験に関わる「元素不純物試験の取扱いに関する質疑応答集(Q&A)について」、及び「第十八改正日本薬局方第一追補の制定に伴う医薬品等の承認申請等に関する質疑応答集(Q&A)について」の概要をまとめています

 

 

「元素不純物試験の取扱いに関する質疑応答集(Q&A)について」の概要

本Q&Aは、以下4項でよくある質問がまとめられています。

  1. 適用範囲等
  2. 承認申請(申請書類関係、規格及び試験方法関係、承認申請書及び原薬等登録原簿(MF)の記載、変更手続き)
  3. リスクアセスメント(大枠、規格等を設定しない妥当性に関すること、リスクアセスメントの対象範囲、企業間の情報共有に用いられる文書等、データの活用)
  4. その他(元素不純物管理の対応が完了しない品目、元素不純物管理が求められない製剤等)

 

1項「適用範囲等」では、以下の質問に対する回答がまとめられています。

回答を簡易的に理解したい方のため、主に「○」又は「×」で記載しています。

質問

回答概要

Q1:

どのような製剤が元素不純物による管理を求められるか。

平成27 年9 月30 日付け薬食審査発0930 第4号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「医薬品の元素不純物ガイドラインについて」の別添の2.ガイドラインの適用範囲や日本薬局方の一般試験法「2.66元素不純物」2.適用の記載範囲の医薬品製剤。

Q2:

日局の一般試験法「2.66元素不純物」の適用対象となる製剤として、「精製されたタンパク質及びペプチド」を含有する製剤や、「合成されたペプチド、ポリヌクレオチド及びオリゴ糖類」を含有する製剤が挙げられているが、クラシカル発酵やバイオテクノロジーにより製造されるタンパク質及びペプチド以外の精製された高分子化合物を含有する製剤についても適用対象となるという理解でよいか。

Q3:

日局の通則4 にあたる製剤は対象外と考えてよいか。

通則4では、「生薬及びこれらを有効成分として含むエキス剤,散剤,チンキ剤,シロップ剤,酒精剤,流エキス剤,坐剤などの製剤」と記載。

Q4:

ガイドライン通知又は日局の一般試験法「2.66元素不純物」に基づく管理を重金属試験やヒ素などの試験に置き換えることは可能か。

×

 

 

2項「承認申請」では、以下の質問に対する回答がまとめられています。

質問

回答概要

Q5:

承認申請時の添付資料に関する要求事項や留意事項を確認したい。

リスクアセスメントの結果、元素不純物を制御するための工程設計、操作及び管理項目に関する説明を承認申請時の添付資料に含める必要がある。

Q6:

元素不純物の規格試験について、ICH Q6Aに記載されている原則に従って、定期的試験を適用してよいか。

Q7:

リスクアセスメントにより、一貫して管理閾値以下で製造可能と判断できた場合、原薬、添加剤、容器施栓系等の供給業者又はそれら業者での製造方法に変更がないかぎり、更なる管理は不要と考えてよいか。

Q8:

元素不純物の管理において、日局の一般試験法「2.66元素不純物」の分析方法を規格及び試験方法として準用する場合、承認申請書又はMF の規格及び試験方法欄には、「日本薬局方○○○による」という簡略記載のみでよいか。

×

Q9:

製造所又は製造方法の変更・追加に伴って元素不純物の管理を変更又は新たに設定する場合の薬事手続きは、製造方法等の変更手続きに係る一部変更申請に含めてよいか。

 

 

3項「リスクアセスメント」では、以下の質問に対する回答がまとめられています。

質問

回答概要

Q10:

医薬品の安全性確保と医療への円滑な医薬品供給に資するため、元素不純物のリスクアセスメントにおいて、医薬品製造販売業者(製販業者)と医薬品(製剤)の製造業者、並びに原薬、添加剤及び容器施栓等の供給業者それぞれに望まれることは何か。

製販業者と製販以外の業者が歩み寄ることによって元素不純物を管理する上で必要な情報が相互に得やすくなり、その質及び実効性が高まることが望まれる。

Q11:

製剤の製造に使用される原薬、添加剤及び容器施栓系等の製造過程で触媒のように意図的に添加され、結果的に元素不純物として原薬、添加剤及び容器施栓系等に残留する場合、これらを供給する業者に対して日常的な管理が期待される場合はあるか。

Q12:

元素不純物の管理値を評価するための基準は、オプション1 に限定されるのか。

×

Q13:

製販以外の業者が、供給する原薬、添加剤及び容器施栓系等の元素不純物プロファイルを十分に理解した上で、リスクアセスメントを実施し、そのリスクアセスメント結果を製販業者に適切に情報提供し、日局の通則34を踏まえた適切な管理を行う場合、医薬品各条で規定された重金属、ヒ素などの元素不純物の試験を省略してもよいか。

 

通則34では、「日本薬局方の製剤は,原則として一般試験法の元素不純物に係る規定に従って適切に管理を行う.また,製剤,原薬及 び添加剤などにおいて,当該管理を行った場合には,医薬品各条などで規定された重金属,ヒ素など元素不純物の管理は 要しない.」と記載。

Q14:

製剤の規格及び試験方法又は工程内試験により各元素不純物の濃度を測定する場合には、価数ごとの分析は不要という理解でよいか。

Q15:

注射剤には、他剤の希釈に用いられるなど、投与量が定まらないものがある。このようなケースでは、ガイドライン通知や日局の一般試験法「2.66元素不純物」の趣旨を踏まえて申請者がアセスメント方法を設定してもよいか。

Q16:

製造用に、日局規格に適合する精製水及び注射用水を用いる場合は、元素不純物の測定は不要と考えてよいか。

Q17:

ガイドライン通知に「元素不純物の総量が一貫して設定PDE 値の30%を超えないと予想される場合において、データを適切に評価し、元素不純物の適切な管理を実証したときには、更なる管理を必要としない」とあるが、ある程度ばらつきの見られる製品でも実生産ロットで3 ロットを確認すればよいか。

×

Q18:

日局の一般試験法「2.66元素不純物」のⅠ.製剤中の元素不純物の管理の4.5.リスクアセスメントプロセスの概要における「固有のばらつきがある構成成分(例えば、鉱物由来の添加剤)に関しては、管理閾値を適用するために更なるデータが必要とされることがある。」について、更なるデータが必要とは具体的にどのようなデータのことか。

・分析法に係るばらつき

・特定の起源中の元素不純物量のばらつき

・製剤中の元素不純物量のばらつき

など

Q19:

医薬品に混入する元素不純物は複数の起源に由来する。申請者が製剤の製造に使われる原材料についてどこまで遡って、意図的に添加した元素不純物を管理するべきか。

製剤への混入リスクの大きさに応じて、リスクアセスメントを要する範囲を検討する必要がある。

Q20:

製造工程で使用される溶媒について、リスクアセスメントの対象とする必要があるか。

Q21:

医薬品に用途を限定しない広範囲の産業用に使用される試薬などは、リスクアセスメントの対象となるか。

Q22:

製剤中の配合割合が0.1%以下となる添加剤についても、リスクアセスメントの対象とする必要があるか。

 

※その実施を不要と判断した理由を例えば含有量から説明することは可能。

Q23:

原薬の製造所を変更した場合、再度製造工程で使用する設備や市水からの元素不純物混入リスクの再評価のために、再度実測値が必要になるか。

Q24:

日局の一般試験法「2.66元素不純物」のⅠ.製剤中の元素不純物の管理4.3. 潜在的な元素不純物の特定における「固形製剤では元素が溶出する確率が非常に低いため、更なるアセスメントの実施は不要である」との記載について、固形製剤の場合は、液剤や半固形製剤と異なり、容器施栓系を構成

する資材類の評価において特段の懸念が認められない場合、容器から製剤への元素不純物の移行を実測値で評価する必要はないという理解でよいか。

Q25:

ガイドライン通知又は日局の一般試験法「2.66元素不純物」に基づく管理を適用する場合、「7.01注射剤用ガラス容器試験法」に規定される鉄溶出試験、「7.02プラスチック製医薬品容器試験法」又は「7.03輸液用ゴム栓試験法」の重金属、鉛、カドミウム等に関する試験を実施しなくてもよいか。

Q26:

植物由来の添加剤はガイドライン通知や日局の一般試験法「2.66元素不純物」に基づく対応は不要と考えてよいか。

×

Q27:

製販以外の業者が発行する元素不純物管理に関する文書の記載内容の要件としてはどのようなものがあるか。

鉱物由来原料が使用されているか、原材料、容器施栓系、製造設備・器具、ユーティリティーから元素不純物の混入リスクが評価されているか等。

Q28:

元素不純物の管理を検討する上で、医薬品(成分)中の元素不純物の情報について、該当する情報の文書等が製販以外の業者により発行されている場合、その情報を利用することは可能か。

Q29:

国内外の添加剤コンソーシアムのデータをリスクアセスメントに使用してよいか。

 

 

4項「その他」では、以下の質問に対する回答がまとめられています。

質問

回答概要

Q30:

令和4年12 月12 日付け薬生薬審発1212 第5号医薬品審査課長通知「要指導・一般用医薬品に係る元素不純物の取扱いについて」別添1(1)①で示す日局品製剤のうち別添2による対応が令和6年6月30 日までに完了しない品目の対応はどのようにすればよいか。

日局の通則33に基づく管理が必要である。

 

通則33では、「純度試験は、医薬品中の混在物を試験するために行うもので,医薬品各条のほかの試験項目と共に,医薬品の純度を規定する試験でもあり,通例,その混在物の種類及びその量の限度を規定する.この試験の対象となる混在物は,その医薬品を製造する過程又は保存の間に混在を予想されるもの又は有害な混在物例えば重金属,ヒ素などである。また,異物を用い又は加えることが予想される場合については、その試験を行う.」と記載。

Q31:

元素不純物による管理が求められない製剤で、医薬品各条の原薬及び添加剤を使用する場合は、製剤製造所で当該原薬や添加剤に対する重金属試験や個別金属不純物試験を実施する必要はあるか。

日局の通則33に基づく管理が必要である。

Q32:医薬部外品で、医薬品各条の原薬及び添加剤を使用する場合は、その原薬及び添加剤について通則33 に基づく管理(日局の医薬品各条に基づく重金属規格及び個別金属規格試験の実施)は不要と考えてよいか。

×

Q33:

令和4年12 月12 日付け薬生薬審発1212 第5号医薬品審査課長通知「要指導・一般用医薬品に係る元素不純物の取扱いについて」別添1(1)②について、元素不純物管理を適用する場合、申請書にはどのように記載して申請すればよいのか。

製造方法や規格及び試験方法を医療用医薬品製剤と同一の記載とし(MF に関する記載を除く。)、【製造方法】欄、【規格及び試験方法】欄のそれぞれの備考欄に「本品は、医療用医薬品である「販売名」(承認番号)と同一の製剤であり、令和4年12 月12 日付け薬生薬審発1212 第5号により、元素不純物管理を適用する」旨を記載し軽微変更届出を行うこと。

Q34:

令和2年12 月28 日付け薬生薬審発1228 第7号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知「医療用医薬品に係る元素不純物の取扱いについて」及び令和4年12 月12 日付け薬生薬審発1212 第5号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知「要指導・一般用医薬品に係る元素不純物の取扱いについて」において、「判断に迷う場合は審査当局に相談の上で対応すること。」とあるが、相談を希望する場合、どの相談区分で申し込むことが可能か。

要指導・一般用医薬品については、相談内容によるため、まずは機構に事前面談を申し込むこと。

Q35:

令和2 年12 月28 日薬生薬審発1228 第7 号「医療用医薬品に係る元素不純物の取扱いについて」の1(5)に記載されていない規格集(医薬部外品原料規格等)であっても、同様に1(3)及び(4)の取扱いを適用することは可能か。

 

詳しい回答内容は「元素不純物の取扱いに関する質疑応答集(Q&A)について」をご確認ください。

 

 

「第十八改正日本薬局方第一追補の制定に伴う医薬品等の承認申請等に関する質疑応答集(Q&A)について」の概要

本Q&Aは15個の質問・回答で構成されていますが、元素不純物試験について言及されている箇所は、以下の通りです。

質問

回答概要

Q1:

第十八改正日本薬局方第一追補(以下「第一追補」という。)において、医薬品各

条(化学薬品等)の純度試験中の重金属試験やヒ素試験等の個別金属不純物試験が削除となったが、通則34 に従って適切な元素不純物管理を行うまでは重金属試験やヒ素試験等の個別金属不純物試験等の実施は必要か。

 

通則34では、「日本薬局方の製剤は,原則として一般試験法の元素不純物に係る規定に従って適切に管理を行う.また,製剤,原薬及 び添加剤などにおいて,当該管理を行った場合には,医薬品各条などで規定された重金属,ヒ素など元素不純物の管理は 要しない.」と記載。

Q2:

第一追補において、医薬品各条より重金属試験及び個別金属不純物試験が削除されたが、その代わりにロット毎又は定期の元素不純物に関する分析が必要となるのか。

×

 

Q3:

通則34に基づき、原薬製造所において元素不純物管理を行った場合には、製剤製造所における受入試験から医薬品各条で規定された重金属試験やヒ素試験等を削除してもよいか。

Q5:

第一追補において、通則34 による元素不純物管理の適用対象となる製剤で使用される原薬や添加剤の医薬品各条でも、重金属試験やヒ素試験等の個別金属不純物試験が規定されているものがある。一般試験法「2.66元素不純物」に基づく管理を適切に実施できる場合は、第一追補の通則34 の規定に従い、これらの試験の実施は要さないという理解でよいか。

Q6:

第一追補において、重金属試験や個別金属不純物試験が削除されなかった医薬品各条について、今後削除される可能性はあるのか。

 

詳しい回答内容は「第十八改正日本薬局方第一追補の制定に伴う医薬品等の承認申請等に関する質疑応答集(Q&A)について」をご確認ください。

 

本技術コラムは、2024年6月25日時点の情報に基づいて、記載しています。

 

 

まとめ

今後、従来の重金属試験や個別金属不純物試験から、元素不純物試験が主流になってきます。

今回とりあげたQ&Aを踏まえて、医薬品の適切な元素不純物管理を進めていだたければ幸いです。

 

 

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