化粧品中に存在するクマリン:安全性(毒性)に関する論争の解決
ユーロフィンバイオファーマサービスの「ニュースレター(2021年6月号)」が発行されました。
ユーロフィングループは、食品・環境・医薬品に関わる分析及び検査サービスをグローバルに展開しています。世界50カ国に800以上のグループラボがあり、200,000通りにも及ぶ分析項目・手法を取り扱っています。
医薬品分析は、ユーロフィンバイオファーマサービスが担当しています。日本国内においては、当社「ユーロフィン分析科学研究所(E-ASL)」が受託を行っています。
バイオファーマサービスでは、お客様に最新情報をお届けするため、年3回ニュースレターを発行しています。
2021年6月号では、以下6つの技術情報を紹介しています。
一部のサービスは、当社ラボが海外ラボとの仲介となり受託しています。
- バイオ医薬品の特性評価で注目の新技術ddPCRの2つのメリット
- 化粧品中に存在するクマリン:安全性(毒性)に関する論争の解決
- 製剤のバイオアベイラビリティを向上させるナノミリング技術と特性評価
- 神経変性疾患試験に必須なバイオマーカーアッセイに超高感度な試験法を活用
- バイオ医薬品の試験法開発におけるAQbD:ICH-Q14に向けた取り組み
- うつ病治療における抗うつ薬選択のためのABCB1ジェノタイピング検査とは
本技術コラムでは、「2.化粧品中に存在するクマリン:安全性(毒性)に関する論争の解決」を紹介します。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行時には、多くの人は手を洗う回数が増え、その結果として皮膚が乾燥したと感じている人が増えています。ローションを使うことが増え、この製品は安全なのだろうかと考えることがあるでしょう。
米国、欧州連合、アジア、そして世界的に、各化粧品メーカーは消費者に対して製品の安全性を保証する責任がありますが、安全性リスクを決定する方法は独自の判断に基づいています。
米国では、着色料を除き、食品医薬品局(FDA)が化粧品に対し承認権限を行使することはありませんが、香料やその他の成分を含め、安全性及び表示については化粧品を規制しています。しかし個々の化粧品成分の試験は、環境保護局(EPA)のToxCastプログラムに含まれるアクティブなプログラムです。
EUでは、化粧品試験に動物実験を禁止する規制が含まれています。
当社の調べでは、アジアでは毒性試験の要求が高まっています。
消費者の健康意識が高くなり、表示に対しての理解力が深まるにつれて、企業は試験と規制ガイドラインのバランスをとりながら製品に含まれる成分の安全性の評価を強化する必要があります。
クマリン論争を思い浮かべてください。
1950年代後半以降、食品中のクマリンは、動物モデルにおける発がん性と肝毒性に関連する安全性の閾値について精査されてきました。
クマリン(自然界では、トンカ豆、ラベンダー、シナニッケイ、及びスイートクローバに含まれる)は、芳香族ラクトンであり、化粧品業界では香水、バス及びシャワー製品、ローション、デオドラント製品(並びに電子タバコ業界ではベイピング製品)などの香料として使用されています。
2004年、科学者と規制当局は、1日の摂取量が閾値を下回る状態が維持されるのであれば遺伝毒性は関連する毒性の機序には当てはまらないと判断しましたが、クマリンに関する懸念は続きました。
2020年、Unilever Safety and Environmental Assurance Centre(ユニリーバ安全環境保証センター)のチームは、ユーロフィンディスカバリーネットワークの安全性分析のグローバルポートフォリオを利用した研究を発表し、パーソナルケア製品に含まれるクマリンは、1日2回塗布することを想定された顔用クリームやボディローションによる曝露量ではリスクが低いことを示しました。
このチームは、動物を使用しないアプローチをとり、Tier 1 SafetyScreen44™ PanelとBioMAP® Phenotypic Platform(全ヒトの初代培養セルベースアッセイ)を用いて、ヒトのリスク評価のために関連するクマリンの生物学的活性を評価しました。
Toxicological Sciencesに掲載され、米国EPAに提出された研究「化粧品中のクマリンに関する次世代リスク評価の事例研究」は、化粧品業界の主要企業が動物実験を行なうことなく安全性評価に成功したことを示唆しています。
原文(英語)は、Coumarin in cosmetics: Clarifying the safety controversyをご覧ください。
ニュースレター(2021年6月号)のその他の記事は、下記よりご覧ください。
- バイオ医薬品の特性評価で注目の新技術ddPCRの2つのメリット
- 製剤のバイオアベイラビリティを向上させるナノミリング技術と特性評価
- 神経変性疾患試験に必須なバイオマーカーアッセイに超高感度な試験法を活用
- バイオ医薬品の試験法開発におけるAQbD:ICH-Q14に向けた取り組み
- うつ病治療における抗うつ薬選択のためのABCB1ジェノタイピング検査とは