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第十八改正日本薬局方(JP18)第二追補のポイントを解説

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令和3年6月7日から、第十八改正日本薬局方(JP18)が施行されました。(参考「第十八改正日本薬局方(JP18)の一般試験法の新設・改正のポイント」。)

JP18第一追補は、令和4年12月12日に公布され、同日からが施行されました。(参考「第十八改正日本薬局方(JP18)第一追補のポイントを解説」)

今回、JP18第二追補(厚生労働省告示第238号)が、令和6年6月28日に公布され、同日からが施行されました。

 

JP18第二追補の施行に伴い、令和7年12月31日までに承認事項一部変更承認申請等の必要な措置を行うとともに、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35 年法律第145号)に抵触することがないよう、遅滞なく改正後の基準に改める必要があります。

 

本技術コラムでは、製薬企業等でJPに従った試験に従事する方のため、第二追補のポイントについて、一般試験法、医薬品各条及び参考情報の概要を解説します。

 

第二追補の一般試験法の新規収載・改正のポイント

一般試験法の新規収載は、以下1点です。

  • 3.07 動的光散乱法による液体中の粒子径測定法

 

動的光散乱法による液体中の粒子径測定法は、JP18参考情報<G2-4-161>より一般試験法に移行され、また、日米欧三薬局方検討会議(PDG : Pharmacopoeial Discussion Group)で、調和合意された内容が反映されました。

動的光散乱(DLS:Dynamic Light Scattering)法は、液体中に分散されたサブミクロンサイズの粒子を計測するもので、ISO 22412:2017 にも記載された簡便な方法です。

本章では、以下6セクションの内容で記載されています。

  1. 原理
  2. 装置
  3. 装置の性能の管理/適格性確認
  4. 手順
  5. 結果の記録
  6. 用語

 

 

一般試験法の改正は、以下10点です。

項目

改正概要

2.03 薄層クロマトグラフィー

2.00 クロマトグラフィー総論の収載に伴う用語の整備に合わせ、全体的に内容を拡充。

これまで「1. 薄層板の調製、2.操作法」のセクション構成でしたが、「1. 器具及び装置、2. 操作方法、3. 確認及び純度の試験、4. 確認試験の試験条件変更に関する留意事項、5.用語」に改正。

2.46 残留溶媒

ICH-Q3Cガイドラインの改正を反映。

2.66 元素不純物

ICH-Q3Dガイドラインの改正を反映。

条Ⅰ. 製剤中の元素不純物の管理の「3. 経口製剤、注射剤及び吸入剤における元素不純物の PDE とリスクによる分類、4. 元素不純物のリスクアセスメント及び管理並びに 5. PDE 値と濃度限度値との間の換算」の項が改正。

3.01 かさ密度測定法

PDGの調和合意内容を反映。また、これまで「3.01 かさ密度及びタップ密度測定法」でしたが、「3.01 かさ密度測定法」に名称改正。

4.02 抗生物質の微生物学的力価試験法

「1.10. 操作法、2.1. 穿孔カンテン平板の調製、2.2. 操作法」の内容を改正。

発育阻止円の直径を面積から算出する方 法を追加。

5.01 生薬試験法

「3. 鏡検」の内容を改正。鏡検用の試験検体の記載を詳細に変更。

9.01 標準品

項の追加及び削除。

9.41 試薬・試液

項の追加及び改正。

9.42 クロマトグラフィー用担体/充填剤

項の追加。

9.62 計量器・用器

はかり(天秤)及び分銅の要件等を規定。

 

 

第二追補の医薬品各条のポイント

新規追加が13品目、改正が95品目、削除が7品目ありました。

新規品目は、アリピプラゾール、オキサリプラチン、オキサリプラチン注射液、ゲフィチニブ錠、ゴセレリン酢酸塩、炭酸リチウム錠、トルバプタン、トルバプタン錠、フェブキソスタット、フェブキソスタット錠、ロルノキシカム、ロルノキシカム錠、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)エキスです。

 

 

第二追補の参考情報の新規収載・改正のポイント

参考情報の新規収載は、以下6点です。

  • 原子間力顕微鏡によるナノ粒子のサイズ及び形態解析法<G1-9-182>
  • 日本薬局方における秤量の考え方<G1-6-182>
  • はかり(天秤)の校正、点検と分銅<G1-7-182>
  • はかり(天秤)の配置環境、基本的な取扱い方法と秤量時の留意点<G1-8-182>
  • フローサイトメトリー<G3-16-182>
  • フローイメージング法によるバイオテクノロジー応用医薬品(バイオ医薬品)原薬/製剤中の不溶性微粒子の評価法<G3-17-182>

 

「原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscopy)によるナノ粒子のサイズ及び形態解析法」は、ナノ医薬品の分析手法の一つとして新規収載されました。

本章では、以下4セクションの内容で記載されています。

  1. 装置及び動作原理
  2. 測定
  3. 画像解析とナノ粒子のサイズ(高さ)計測
  4. AFMの性能確認

 

現時点ではナノ医薬品の明確な定義はありませんが、一般的にはナノテクノロジーを製剤技術に応用し、ナノメートルサイズの構成要素を有する医薬品とされています。

ナノテクノロジー製剤技術には、「有効成分の結晶をナノメートルサイズに調製することによる溶解性、生物学的利用能の向上」や「ナノメートルサイズのキャリアに有効成分を内包することによる生体内安定性や生体内分布の改善」といった特性があります。これらを利用することで、医薬品の有効性の向上や副作用の軽減に寄与することが期待されています。

ナノ医薬品の例は、国立医薬品食品衛生研究所「日本で認可された主なナノ医薬品」によると、リポソーム製剤(ビスダイン®、アムビゾーム®、ドキシル®)、鉄ナノ粒子製剤(リゾビスト®、フェジン®)、ナノ結晶製剤(イメンド®、ゼプリオン®)などがあります。

 

「日本薬局方における秤量の考え方」は、一般試験法「9.62 計量器・用器」にはかり(天秤)及び分銅の要件されたことを踏まえ、秤量の考え方を具体的に示すために新規収載されました。

「はかり(天秤)の校正、点検と分銅」は、はかり(天秤)の校正、点検と分銅に関する留

意点を示すために新規収載されました。

「はかり(天秤)の配置環境、基本的な取扱い方法と秤量時の留意点」は、はかり(天秤)の基本的な取扱いと留意点を示すために新規収載されました。

本章では、以下4セクションの内容で記載されています。

  1. はかり(天秤)の設置環境
  2. はかり(天秤)の使用前の動作確認
  3. 清掃
  4. 計量結果に影響する外的要因の排除

 

「フローサイトメトリー」は、生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の特性解析や規格及び試験方法において、目的物質の標的細胞への結合活性の評価や、細胞応答の評価、生物活性試験に用いる培養細胞の適格性評価等に用いられるため新規収載されました。

本章では、以下4セクションの内容で記載されています。

  1. 装置と測定の原理
  2. データ解析
  3. 測定時の留意事項
  4. 生物薬品の試験における使用例

 

「フローイメージング法によるバイオテクノロジー応用医薬品(バイオ医薬品)原薬/製剤中の不溶性微粒子の評価法」は、フローイメージング法がバイオ医薬品の不溶性微粒子の評価方法として有用と考えられるため新規収載されました。

バイオ医薬品には、外来性の物質、製造工程に由来する物質及び処方成分や一次容器からの溶出物に加えて、タンパク質それ自身が凝集してできたタンパク質凝集体などの不溶性微粒子が含まれる可能性があります。注射剤に含まれる微粒子を評価・管理することは、最終製品の品質を確保する上で重要とされていますが、タンパク質凝集体については,タンパク質製剤の免疫原性に影響する可能性が懸念されており,より厳密な評価・管理が求められています。

本章では、以下5セクションの内容で記載されています。

  1. 測定の原理
  2. 測定
  3. 画像解析
  4. 分析法バリデーション
  5. 装置性能の管理

 

 

参考情報の改正は、以下5点です。

項目

改正概要

固体又は粉体の密度<G2-1-182>

かさ密度の用語の定義が改正されたことを踏まえ、用語を改正。

粉体の流動性<G2-3-182>

PDGの調和合意内容を反映。

ペプチドマップ法<G3-3-182>

PDGの調和合意内容を反映。

日本薬局方収載生薬の学名表記に

ついて<G5-1-182>

新エングラーとAPG*の分類体系における科名の関係を併記するように改正。

*:Angiosperm Phylogeny Group

生薬及び生薬製剤の薄層クロマト

グラフィー<G5-3-182>

「2.03 薄層クロマトグラフィー」の改正に併せて、生薬及び生薬製剤に特有の事項の解説に特化した内容に改正。

 

 

本技術コラムは、2024年6月28日時点の情報に基づいています。

これらJP18に準ずる試験は当社でも受託可能です(一部試験を除く)。

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