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製剤のバイオアベイラビリティを向上させるナノミリング技術と特性評価

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ユーロフィンバイオファーマサービスの「ニュースレター(20216月号)」が発行されました。

ユーロフィングループは、食品・環境・医薬品に関わる分析及び検査サービスをグローバルに展開しています。世界50カ国に800以上のグループラボがあり、200,000通りにも及ぶ分析項目・手法を取り扱っています。

医薬品分析は、ユーロフィンバイオファーマサービスが担当しています。日本国内においては、当社「ユーロフィン分析科学研究所(E-ASL)」が受託を行っています。

バイオファーマサービスでは、お客様に最新情報をお届けするため、年3回ニュースレターを発行しています。

 

2021年6月号では、以下6つの技術情報を紹介しています。

一部のサービスは、当社ラボが海外ラボとの仲介となり受託しています。

  1. バイオ医薬品の特性評価で注目の新技術ddPCR2つのメリット
  2. 化粧品中に存在するクマリン:安全性(毒性)に関する論争の解決
  3. 製剤のバイオアベイラビリティを向上させるナノミリング技術と特性評価
  4. 神経変性疾患試験に必須なバイオマーカーアッセイに超高感度な試験法を活用
  5. バイオ医薬品の試験法開発におけるAQbDICH-Q14に向けた取り組み
  6. うつ病治療における抗うつ薬選択のためのABCB1ジェノタイピング検査とは

 

本技術コラムでは、「3.製剤のバイオアベイラビリティを向上させるナノミリング技術と特性評価」を紹介します。

 

世界中の創薬プログラムでは、困難な課題である水溶性に対する有力候補を模索する動きが増えつつあります。

創薬パイプラインにおける新規化学物質(NCE:New Chemical Entity)の90%以上は難水溶性であることが広く報告されています。

アジテータービーズミルを用いたナノミリングはバイオアベイラビリティ(*)向上のための多用途の製剤技術であり、製剤設計者や加工技術者に複数の利点を提供します。

このプロセスは、重要なプロセスパラメータを決定した後、比較的容易にスケールアップすることができます。ナノミリングの利点として、高活性のペイロードを取り込む能力(**)、ミリング時の連続プロセスの確立、及びバッチ間の粒子サイズ分布の再現性などが挙げられます。

 

ナノミリングは、粒子径をサブミクロンの範囲未満まで縮小させるためのトップダウンのアプローチです。ナノミリングによる粒子径の縮小は、封入したチャンバー内で懸濁させた原薬とミリング媒体が衝突する際に生じる力により達成されます。

このプロセスで湿式ミリング媒体を使用すると粒子の表面面積が数千倍になるため、in vivoでの溶解速度が向上し、不溶性である原薬のバイオアベイラビリティが高くなります。

 

Eurofins CDMO Alphora Inc.は、ナノミリング技術と共に、サブミクロン粒子径並びに表面電荷の測定を可能にするZetasizerアナライザーを導入しました。

この新技術より、北米のCDMO施設でサブミクロン懸濁液と他のコロイド分散システムの開発及び特性評価を行なうことが可能となりました。

これらの新たな技術に加えて、ジェットミリングによる微粉化と噴霧乾燥による非晶質固体分散体(ASD)など、既存のバイオアベイラビリティ向上技術があります。この一連の高度な技術により、難溶性化合物の製剤化を可能にするサービスをクライアントに提供することができます。

 

補足解説

*:生物学的利用能と呼ばれ、服用した薬物(製剤)が、どれだけ全身に循環するのかを示す指標です。

**:ペイロードとは、抗体薬物複合体(ADCAntibody Drug Conjugate)のドラッグの部分を指します。

ADCとは、抗体の一部に低分子薬が結合しているもので、一般に抗がん剤で見られます。低分子薬のみだけでは、がん細胞だけでなく正常細胞まで殺してしまうため、抗体部分でがん細胞のみを探し出し、がん細胞に特異的に低分子薬を作用させる作用機序です。

高活性のペイロードとは、低分子薬が多くくっついているため、分子としての疎水性が高い、すなわち、生体内にも取り込まれにくいと考えられます。ナノミリングは、溶解性を向上させることで、生体内に取り込まれやすくする利点があると考えられています。

 

原文(英語)は、Nanomilling for bioavailability enhancement: New capabilities at Eurofins CDMO in North Americaをご覧ください。

 

ニュースレター(20216月号)のその他の記事は、下記よりご覧ください。