焼却灰分析
焼却灰分析は法令等で義務付けられているためだけでなく、焼却施設の運転管理、維持管理などにも重要です。
また、焼却灰を処分するにあたっての受け入れ基準などでも規定されている場合もあります。
焼却残渣、残灰、単に灰と呼ぶこともあります。
水封の有無により乾灰、湿灰と呼び分けたり、飛灰(フライアッシュ)なども分析します。
※飛灰とはごみなどを焼却炉で焼却処理する際、排ガスとともに飛散しバグフィルタなどの集塵装置で捕集された灰。微粒子でパウダー状のことが多い。
・基本的な方法については環整95号の別表に以下のように定められています。
環整95号(平成2年2月1日改定 衛環22号)
(各都道府県一般廃棄物処理担当部(局)長あて環境衛生局水道環境部環境整備課長通達)では、ごみ質 年四回以上、焼却残渣の熱しやく減量 月一回以上 測定する事となっています。
・”灼熱”とする分野もあるようですが、ごみ質分析では”熱灼”(ねっしゃく)が一般的のようです。また、”灼”の文字を使わず、”熱しゃく”と表記することも多い。
【参考】:環整95号の全文は環境省HPを
【参考】:大型不燃物に関する解説
ごみ焼却施設の焼却残渣の熱しやく減量の測定方法(環整95号別表から抜粋)
1 試料の採取 1回当り1~2kg、一日に4~5回、合計5~10kgの焼却残渣(水封後または散水後のもので可)を採取し、試料とする。 2 水分 試料を秤量したのち、これを乾燥器等を用いて105℃±5℃で恒量を得るまで乾燥し秤量する。水分は次式(1)により算出する。 水分(%)=((乾燥前の重量〔kg〕-乾燥後の重量〔kg〕)/乾燥前の重量〔kg〕)×100…(1) 3 大型不燃物の除去 乾燥後の試料の全量を孔眼寸法約10mmのふるいを用いてふるい、ふるい上に残った試料のうち、不燃物のみを秤量する。試料中の大型不燃物の割合(乾基準)Aは次式(2)により算出する。 A(%)=不燃物の重量〔kg〕/乾燥後の試料の重量〔kg〕×100…(2) 4 熱しやく減量の測定 ふるい上に残つた試料のうち、可燃性物質を破砕したのち、ふるい下の試料と混合し、四分法により縮分し、20~50gを精秤する。これを電気炉に入れて600℃±25℃で3時間強熱したのち、デシケータ中で放冷する。放冷後、試料を精秤する。大型不燃物の除去後の熱しやく減量I' は、次式(3)により算出する。 I′(%)=((強熱前の重量〔g〕-強熱後の重量〔g〕)/強熱前の重量〔g〕)×100…(3) 焼却残渣の熱しやく減量Iは、次式(4)により算出する。 I (%)=I′×((100-A)/100)…(4) |
【概要】
600℃で燃やしてみて、どれだけ減量するかを測定する。減った分は未燃分(燃え残り)と見なされるため、値が低いほど完全に燃えて燃え残りの少ない良い灰と言うことになる。そのため熱灼減量は一般には低いほうが良い。(厳密には600度ですべての未燃物が燃焼し減量するとは限らないが一般的には問題にならない)
熱灼減量が高いと言うことは、まだ充分に減量、減容されていない可能性があるということ、また有機成分(とは限らないが)が残っていることで、埋立した際などに分解して悪臭の原因になったり、有毒ガスの発生の原因になったりしうることを示唆する。また、まだ減量、減容しうるものを埋めてしまうことは処分場の寿命を不要に縮めてしまうことにもなる。
●試料採取 (合計5~10kg)
●乾燥、水分測定 (105℃±5℃)
●ふるい (孔眼寸法約10mm)
●大型不燃物測定、可燃性物質の処理
●強熱(600℃、3時間)
【参考】:参考図書の紹介
【解説】
- 採取量は少な過ぎても多過ぎてもよくない。合計で5~10kg。
少ないと代表性に問題が生じ、多過ぎると乾燥に時間が掛る、完全に乾燥しにくい、ふるうのに大変、
採取する工程は毎回、同じにしたほうがいい。工程や採取場所などにより、水分などは大きく異なることがある。 - ”恒量を得るまで”とは、
乾燥させていくと、水分が飛んで、だんだんと軽くなる。もう、それ以上、軽くならなくなった状態をいう。
ある時点で重量を測り、一定時間後に再度、重量を測り重量に差が無い事を確認する。 - ”大型不燃物の除去”とは
ルツボに入れて熱灼減量測定をするに当たり、適当でない大きさのものをあらかじめ処理する工程。不燃物を計量して後で補正する。
10mm以上の可燃物(未燃物)が残っている場合は細かく粉砕してふるい下の試料と混合する。(熱灼減量測定対象とする)
※大型不燃物には缶などの金属や、ガラス、セトモノ、石などや炉内で生成されたクリンカーなどがあります。
※未燃物は炉の燃焼においても燃えきらなかったもので、トウモロコシの芯、梅干の種など、さまざまなものが出てきます。缶の中に詰まって蒸し焼きになって炭状になっている場合もあります。
紙や木などもそのまま残っていることもあります。
【参考】:大型不燃物に関する解説
※偏りのない代表的な試料を得るために四分法を用いる。
【参考】:円すい四分法
※I' は”大型不燃物の除去後の熱灼減量”または”補正前の熱灼減量”などともいう。
※Iが最終的な測定値(報告値)になる。単に”熱灼減量”ということもあるが、補正前と区別するため”大型不燃物補正後の熱灼減量”ともいう。先にふるいでの上に残った不燃物の割合で補正したもの。
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