地中ガス調査
・目的
昨今、人口集中に伴う地価高騰や景観の観点から電柱や線路などのインフラ設備を地下に敷設する事例が増加しています。また、人口の移動に伴う再開発や老朽化問題を抱える水道管などのインフラ設備の更新を目的とした地下工事も増加しています。こうした建設工事や地下構造物建設工事に伴い、掘削した地下やシールド部分の作業に携わる際に地中ガスが工事の障害になる可能性があります。こうした原因となる危険なガスには、可燃性ガス(メタン等)、酸素欠乏ガス、硫化水素、一酸化炭素などがあります。
このような危険有害ガスのリスクを把握し、災害を未然に防止するために、シールド工事、地下工事の設計、施工に先立って、計画地層の地中ガス調査を行い、ガスの危険性・ガス溜まり等について適切に評価・判断する必要があります。
当社では、地中ガス調査の経験豊富なスタッフが、採取~報告書作成まで一貫して対応いたします。
・【参考】可燃性ガスについて
千葉県を中心に茨城、埼玉、東京、神奈川に及ぶ南関東地域一帯には、日本有数のガス田である「南関東ガス田」が広がっており、可燃性天然ガス(メタン)が地下水に溶け込んだ状態で存在し、ガス層を形成しています。この可燃性天然ガス(メタン)は、外洋性堆積物に含まれる有機物が嫌気性バクテリアによって分解される過程で生成されたものです。
このほか、湿地や沼沢等の嫌気性の環境で、有機物が嫌気性バクテリアによって分解される過程でも生成されます。
・調査方法
主に建設工事や地下構造物建設工事の、地下工事深度区間の砂層・砂礫層の滞水層を調査対象としボーリング工事で調査孔を設置して頂きます。
・孔口(遊離)ガス調査
調査孔が調査深度に到達した後に、掘削業者様にて調査孔内を清水にて置換しバルブを用いて密栓して頂きます。地下水にて被圧された状態で遊離するガスが存在するかを調査します。
前日から密閉されていた調査孔の中に溜まっている遊離したガスについて調査を行います。
・溶存ガス調査 (①、②のいずれかを実施します)
①地下水位保持法(同圧法)
地中ガスは地上にくみ上げると地下水圧から解放されガスが遊離する場合があります。そこで、地下水圧を維持したまま地下水の採取・分析調査を行うことによって、より正確な地中ガス調査を実現しています。
ヘリウムを用いて地下水圧を維持したまま地下水を採取し分析を行います。
②地下水位保持法(気液分離法)
調査孔から電動ポンプを用いて、地下水を地上に汲み上げ地下水の採取を行います。また、地上に汲み上げた際に地下水圧から解放された遊離ガスについても採取・分析調査を行います。
調査孔より地下水を汲み上げ採水を行います。この方法で採取を行う場合には加圧せずに地上まで
地下水をくみ上げるため、分離ガスが遊離してしまいます。そこで、この時遊離してくるガスについても
写真中の分離槽を用いて別途採取を行い、地下水に含まれるガスを総合的に評価致します。
・コアガス調査
粘土層等不透水層で地下水の採取が難しい地層の場合には、不攪乱試料採取器等を使用して地層中に含まれるガス(コアガス)をそのままの状態で採取・分析調査を行います。
ボーリング調査時に採取したボーリングコアを、ガスが遊離することを防ぐために密閉して頂き、弊社のラボにて分析を行います。
・調査の流れ
・打ち合わせ
使用機材の確認や調整を行います。
・調査前日
調査深度まで掘削・洗浄等を行った後、お客様の方で調査孔にバルブを設置して頂きます。
・調査当日
弊社作業員が安全に配慮しながら試料採取を行います。
・報告書作成
地中ガス調査の経験が豊富なスタッフが採取を行い、分析・評価に関して空気補正等の計算を実施後、正確なデータをご提示致します。
また、得られたデータを用いて地中ガス災害の危険性を評価しお客様に迅速にご報告いたします。
・納期
・速報 採取日より10~14日程度でお出しすることが可能です。
・調査実績
東京都発注案件ほか多数調査実施。関東圏調査実績トップクラス
・Q&A
・Q1:調査当日までに行う必要な作業はどんなことがありますか?
調査深度まで掘削、ストレーナを設置してください。その後、清水洗浄、地下水汲み上げを実施し地下水置換を行った後、お客様の方で調査孔にバルブを設置し密閉して頂きます。
全ての作業が順調に行えた場合、2時間程度で調査は終了致します。但し、砂泥が多く採取をやり直すことで時間がかかってしまう事や、地下水量不足で気液分離法が実施できず予定よりも早く終了する事もございます。
・Q3:安全バルブは必要ですか?
地中ガスを採取する際、地下水を汲み上げます。その際、地下水圧の低下により溶存している地中ガスが一気に遊離し噴出の危険性があります。また、仕様によって使用が義務付けられている場合もあります。安全バルブをお持ちでない場合には当社にてお貸しすることも可能ですのでご相談ください。
調査孔の径に応じた安全バルブをご用意しておりますのでお気軽にご相談ください。
・Q4:同圧法と気液分離法は何が違うの?
調査対象層、深度の湧水量によっては十分な水量が確保できない場合や、砂や泥によって汲み上げ作業が困難な場合などがあります。そういった場合では同圧法にて調査を行っています。
・Q5:既存の観測井戸でも調査可能ですか?
地下ガス調査で用いる調査孔は調査深度までケーシングパイプが挿入されており、調査対象深度の地下水のみを採取できるようになっています。しかし、観測井戸では調査対象深度以外の範囲についてケーシングパイプが挿入されていないことが多く、調査対象深度以外の地下水も混入してしまい正確な測定を行うことが出来ません。その為、観測井戸としてのリスクを調査することは可能ですが、特定の地層について調査を行うことはできません。
・関連リンク
・国土交通省 施設整備・管理のための天然ガス対策ガイドブック
・その他の情報